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基本的にねぶたは、自衛隊や大学、企業といった団体単位でグループが形成されており、特別使用の浴衣を着用している団体に、貸し衣装を着た観光客が違和感なく潜り込むわけにはいかない。私は、若い女性の多いグループに入り込むべく、まずは先頭の子供ねぶたを当然のように見送り、市役所ねぶたもパスし、何のグループかはよくわからないが、貸し衣装と同じ、白い浴衣に赤と黄色の帯を付
けたハネトがわんさか跳ねている集団に紛れ込んだ。
「ラッセーラー、ラッセーラー」
やはり外から見ているのとでは熱気が違う。常に押しくら鰻頭のような状態のため、なるほど仲良くなるのは簡単そうだ。いや、乳房や尻が触れるこの環境だけで十分に楽しいとも言える。汗だくになりながら、とりあえず私はすぐそばにいた小柄な女性に声をかけた。
「1人で来たの?」
「は?」
「1人なの?」
「はい?」
「一緒に跳ね……」「キャー、ギャー」
うるさすぎる。しかも彼女自身も周りに合わせてラッセーラーと声を張り上げて飛び跳ねるものだから、とてもまともな会話にならない。あんまり盛り上がり過ぎているグループも考えものかと、私はすぐ後ろに続く集団へと移動した。が、そこも同じような状況で、しかも混沌とした中では1人きりのように見える女性も、よくよく様子をうかがうと必ず仲間連れであることがわかる。2人組3人組に向かって一緒に跳ねようと提案するのも辛いものだ。仲良くなるべき対象が見つからないまま後ろへ後ろへと流れるうちに、いつのまにか私は最後尾のグループにまぎれていた。「カラス」の集団だ。花火を口にくわえる者、奇声を発する者、警備貝と喧嘩する者。黒いハッピを着た彼らは、オレたちやこんなに悪いんだぜといった様子で悪行の限りを尽くしている。また、その女版である「白烏」たちは白いサラシを胸に巻いてキッッイ目で辺りを晩みつける。いったいこの小さな町のどこにこれだけのヤンキーが隠れているというのだ。まるで族の集会だ。怖くなって別のグループに逃げ帰ろうとした私だったが、ほどなくスピーカーから聞こえてきたのは運行終了のアナウンス。最後まで的を絞りきれなかった私の周りには誰もいなくなっていた。地下足袋に莫腹という慣れないスタイルに足を痛め、よろよろとホテルに戻る道中、上気した表情をしたハネトスタイル女を発見。すでに結構飲んでいるのか、足元もおぼつかない様子だ。聞くと、案の定、たった今まで仲間内で飲んでいたとのこと。今から家に帰るということは、性宴へ流れる展開ではなかったようだ。
「それじゃあ、もう1杯だけ付き合ってよ」
「ええ、そうですね」
というわけで、2人は浴衣のまま裏通りのショットバーヘ。ハネトとゆっくり話すのは2日目にして初めてである。幼いころからねぷたに染まり今や運営の中心的人物でもあるという彼女は、よくしゃべりよく飲む典型的な祭り女で、ねぶたの道ぶりについては次のような見解を示した。
ねぶたの解散地点は海沿いの広場で、跳ね終えたハネトたちはその場に残って酒を酌み交わしては乱痴気騒ぎをしていたらしい。が、現在の解散地点は、道路の真ん中。すぐに交通規制が解除されるため、その場で騒ぐわけにもいかず、みんなてんでばらばらになってしまうのだという。要するに、場がないから乱れようもないのだ。携帯で連絡を取り合って居酒屋で飲んでいるようでは、コンパのノリとさして変わらない。祭りならではの、見知らぬ人間を交えた大騒ぎはもう消滅してしまったのだ。お祭り大好きでいなせな彼女はその状況がちょっと寂しいとも言う。ところで、その、君はこの後どういう予定で……。
「あ、明日も準備があるので帰らないと」
私は1人でホテルへの道を歩いた。腰の鈴がチリンチリンとうるさい。わずか二晩の体験でねぷたを語るのは、盲人が象を撫でているようなものなのかも知れない。最も盛り上がる最終日にはまた違う展開も考えられたろう。ただ、現段階では私はこう結論付けるしかない。ねぶたもただの祭りに過ぎない、と。むしろ気になったのは、祭りがあろうとなかろうと、青森の女性は並尻唾から結椛はじけ
た部分があるのではないかという喜ぱしい実態だ。即アポに至るテレクラ主婦。アルコールが入るでもなくホテルの部屋に付いてくるお嬢さん。本文には登場しなかったがボーリング場の前で声をかけると、あっさりとラブホテルまで付いてきたコギャル風。ねぶた祭りの期間中はじけたがっていたの
は、ハネトたちではなく祭りに参加する意志のないはぐれ者たちだったとは、皮肉であると同時にこの町の一面を現しているようで、また面白い現象であった。