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基本的には俺たちも代行業者なわけよ。ただ、いろんなオプションを無理矢理付けて引っ張れるだけ金を引っ張るうって方針だけどね。希望条件だけじゃなく住所、氏名、電話番号はもちろん家族構成や、いま住んでる家とか貯蓄額さらにローンや借金の額も聞き出すね。あと、いざとなったら金を借りられそうな親戚はいるのかとかもさ。
そこまで突き止めたら、後は仲間に連絡して、希望に合いそうな物件を用意する。あのね、家を担保
に金を借りてた人間が、返せなくなったから売りに出されるわけ。金を貸してた金融会社が、もうこ
の人は返済の見込みが立たないから家を売って少しでも債権を回収したいって裁判所に訴えるんだ。
例えばこれ見て・春ごろに出された2LDKのマンションの明細なんだけど、見ると住宅金融公庫から1900万、信用組合から2千万借りて、その上でまたマンションを担保にして3千万借りてる。
申し立てをするのはだいたい第一抵当権者の金融公庫で、これなんか3千万だった物件なのに、裁判所がつけた最低売却価格は1300万だ。ってことは、1500万で落札されても、第二抵当権を持ってる信用金庫には全然金が回らないかもしれない。まして3番目、4番目の金融会社には一銭も入らないことになる。もちろん、3番目の抵当権を持ってる金融屋は、すでに3900万も借金があるのに3千万も貸し付けてるんだから、まともなとこじゃないよ。おまけに9年も経ってるから、そこそこ利子も取ってる。だけどさ、一銭にもならずに3千万の貸しがチャラになったんじゃ損した気になるだる。俺のグループにはさ、そういうまともじゃない金融屋もいるんだ。いわゆる十一とかの高利貸しがね。
金融屋グループは、不動産を担保に金を借りている債務者が家を売りに出したら要チェック、占有屋に誘いをかける。今の世の中、いざ買い手がついてもローンが返せるほどの値段では売れないのが当たり前。家は人手に渡り、その上、ローンも残るのではたまらないと、自己破産宣告の道を選ぶ人が増えている。破産すれば家は差し押さえ、競売にかけられ、金融業者の出番はなくなる。よってそうならないうちに先手を打つのである。
「お互い、このまま家を取られたのでは元も子もなくなる。せめて引っ越し代ぐらいは作るから、任
せてみないか」と。ウンと言ったら、ソク、所有者に日にちを偽った賃貸借契約書を作らせ、占有屋を送り込む。占有屋がいる物件をカモにプッシュする。実際にその家に住むのは誰でもいいんだよ。いざ立ち退いてほしいってなったときにゴネてくれれば、その辺のホームレスだってかまわないし、他の借金取りに追われてる債務者でもいい。賃貸契約を交わした誰かが住んでることが重要なわけだからさ。裁判所が正式な賃借人かどうか認定するとき、公共料金がその人名義でいつから支払われているかってのを重要視する。だから金融屋グループは、いかに早く競売にかけられそうな物件を探せるかってのが勝負なんだ。よくさ、新聞にかけられた物件に暴力団が居座り、埜妨害した疑いで逮捕したなんて出てるでしよ。競売にかけられてから占有したんじゃ遅いの。昔はそれで金が取れたけど、いまは暴力団がからむと普察が厳しいからね。金融屋の占有話が、俺の仕事とどうつながるかというと仲間の金融屋が占有した物件が競売にかけられたら、俺はそれをカモにプッシュするんだよ。もちろん、他の物件の情報も流すよ。けど「ここは立地条件がいいから予算は軽くオーバーしちゃ
いますよ」とか「書いてありませんが行ってみたら柄の悪い人たちが出入りしてましたから占有屋の疑いがありますね」なんて具合いに言っとくんだ。なかなか思うような物件がなくて客があきらめかけたときに「借人がいるから多少の立ち退き料がかかりますが」ってその物件をぶつけるわけ。
でこれだけの条件は見たことないとか、これ以上の物件は出ないかも知れないとか、カモをその気にさせる。だけど俺は「これがいいですよ」とは言わない。最終的に決めるのは客なんだよ。いろいろな物件の中から自分で選んだ、って意識させるのが大事。そうしないと、占有者がゴネたときに、こっちのせいだってなっちゃうでしよ。言ってることわかる?つまりさ俺たちのグループは、物件を買うヤツと、かけられたヤツの両方から金を取るわけよ。
お客さんが「この物件を買いたい」って言ってきたら、第一段階クリア。入札期日までに保証金(裁判所が決めた最低売却価格の2割)を振り込ませ、入札価格を決めるんだ。狙う物件には怪しげな借人がいるんだから、まともな連中は入札しないよね。カモが落札するのは目に見えてる。けど、開札ってのは、入札した人が一同に集まったところで裁判官が1つずつ書類を開封して、いちばん高い金額をつけた人の名前を呼んで「落札しました」って宣言するわけ。そんなところでさ、1人しか入札してなかったら落札しても有難みがないでしよ。だから仲間たちが適当に入札して雰囲気を盛り上げるんだよ。どうせ、保証金は落札しないと返ってくるんだしさ。俺は客と並んで開札を待つんだけど、入札者が何人もいると客は緊張するよ。おまけにさ、サクラの中にはガラの悪いヤツも混じってるわけだから。で、落札者として自分の名前が呼ばれると、もう大感激。「ありがとうございました」って俺の手を握って泣き出す人もいる。
落札したら1カ月以内に代金(入札価格から保証金を引いた額)を全額現金で納入。それを確認した裁判所が物件の名義を書き換え、晴れて落札者の所有物となるのである。が、裁判所から物件を引き渡されたからといって、すぐに落札人が住めるわけではない。前の持ち主や賃貸人が居座り、不当に居住する権利を主張したり示談にも応じてくれないなどの場合があるからだ。市価の3割安程度でマイホームを手に入れた﹇お客さん﹈はもう俺を全面的に信用しちゃってる。だから「別料金になりますが、住んでいる方への立ち退き交渉も担当しましょうか」って聞けば、例外なく頼んでくるんだ。
金が取れるかどうかは、ここからが腕のみせどころ。いろいろやり方はあるんだけど、基本は賃貸人がゴネて立ち退き料を要求してる、ってパターンで口説く。まず手始めに、客の自宅に「オレを追い出してみろ。仲間が黙ってねえぞ」なんて電話をかけさせたり、家の回りをガラの悪いヤシにウロウロさせたりしてさ。その一方で俺はこまめに連絡を入れて、あくまで親身になって交渉に当たる善人を演じるわけ。で、客がどんな事態なのか身にしみてわかったころに金の話を切り出す。「住んでる人のバックにはヤクザがいるらしい」って。もちろん、正式に認められた賃貸人だから、それなりの立ち退き料はもらえるわけ。それにいくらプラスアルファを加えるかはカモの懐具合をみて決める。最低でも200万はもらわないとねえ。一応、裁判所に申し立てて引き渡し命令を出してもらい、最終的には強制執行という手もあるってことは言っておいた上で「相手は何をしてくるかわかりませんね。強制執行の費用は自分持ちになるから、どうせなら立ち退き料を払って穏便に示談って形に収めるのがいちばんでしょう」って話をまとめるんだ。これでカモが金を出してきたら、もうひと頑張り。場合が場合でしたので顧問弁護士に図りまして、なんて弁護士料だとか交渉特別割増とか口実を設けて手数料を取る。コツはさ、俺はあくまで客の立場で精いっぱい頑張りましたって態度なのよ。4,500万取っても感謝されるぐらいじゃなくちゃ。いや、実際にいるんだよ。いまだにお中元とお歳暮送ってくるおめでたい人がさ。でも、そんな客ばかりじゃない。中には立ち退き料など払えないから強制執行してくれっていう客もいる。そういうときは、引き渡し命令が出てから執行日までの間に賃借人に「執行抗告」ってのを出させる。これは、強制執行に異義ありって申し立てなんだけど、裁判所は要件さえ揃ってれば執行を引き延ばすから、それなりに効果は出る。何度もやれば落札者はジレて、仕舞には金を払うって寸法だよ。いつだったかな、半年ぐらい粘っても、どうしても立ち退き料を払いたくないって客がいてさ。もちろん手数料は取ったんだけど、強制執行かけられちゃって。後で話を聞いたら、怒った金融屋はその家を明け渡すときに全部の配水管にセメントを流し込んだって。おまけに、床を抜くわ壁を壊すわ、メチャクチャにしてさ。住まわせてたのがホームレスだったから、どうせ足がつきっこないって無茶やったらしい。確かマンションの4階か5階だったから、排水管を直すだけで相当かかったんじゃないかな。大人しく立ち退き料を払ってればよかったのにねえ。しかし一般人の客がそこまでうまくハマるのは、そうたびたびあることではない。安く手に入れた物件をリフォームし、相場で売ればそれなりの利益が出る。そのため、競売物件専門も存在するのだ。ところが、プロの不動産屋に立ち退き料の請求は通用しない。誰が住んでいようとビジネスと割り切り、まったなしで引き渡し命令を立て、強制執行をかけてくる。