0202_20190507192606fc2.jpg 0203_20190507192608eec.jpg 0204_20190507192609bce.jpg 0205_201905071926115cd.jpg 0206_20190507192612faa.jpg 0207_20190507192616c8e.jpg 0208_2019050719262027d.jpg 0209_2019050719262336e.jpg私の本音としては、その全ての手助けをしたい。が、当事者以外で司法の現場に立てるのは弁護士
だけ。どうすればいいのか。考えた末、私は、自己破産に必要な書類の作成のみを業務にすることにした。これならば手続き代行という言い訳が立つので、弁護士法違反の罪に問われたりはしまい。実際の現場での動き方は、電話などで指示すればいいだろう。もちろん、私設の破産屋が弁護士並の料金を取るわけにはいかない。通常、自己破産の弁護料は20万円以上。その5分の1以下の4万円ならば飛びつく依頼人も多いはずだ。
問い合わせの電話は翌日からかかってきた。その数なんと1日約30件。想像以上の反響である。
しかも、ほとんどの者が個人情報の入手の仕方を聞いた後も電話を切らず、借金の相談を持ちかけてくる。みな誰にも相談できなくて困っていたらしい。
お客の男女比は、7対3ので女性の方が多く、その3分の2はパチンコが借金の原因だ。以前、パチンコにハマッて子供を死なせた主婦の事件があったが、彼女らの話を聞いていると、それがごくありふれた事件のような気すらしてきてしまう。
一方、男性は、競輪・競艇による借金が全体の約3分の2を占める。みな週末のJRAだけでは飽きたらず、毎日開催される公営ギャンブルに手を出してしまうようだ。
そんな中、最初の自己破産志願者は開業3日目にして現れた。梅田で塗装業を営んでいるという30代の男性である。
「1年前、請負先の工務店が潰れて、入るはずの金が入らないようになったんですわ。けど、職人には給料を渡さなアカンでしよ。それでサラ金から金を借りたんですけど、もうよう返すことができまへんのや」
当時、サラ金から借りた金は合計600万。それが現在では利子を含めて700万以上になっ
ている。
「失礼ですけど、年収はナンボになります?」
「だいたい400万ぐらいでつしゃろか」
負債が年収を上回っているのが自己破産の第一条件。その基準は十分過ぎるほどクリアしている。
これなら自己破産は可能だろう。サラ金側からすれば、数十万程度の借金で裁判を長引かせると、その費用の方がかえって高くつくので異議申し立てなどしない。つまり、調査はまず入らないというわけだ。
2人目の自己破産希望者は27才の風俗嬢である。負債額は800万。数種のキャッチセールスに引っかかったのが原因らしい。
キャッチの勧誘員は大抵ローンで商品を購入するよう勧めてくる。が、彼女は仕事柄、カード類を作れないし、ローンも組むことができない(風俗店では在籍確認の電話は応対してくれない)。そんな
自分がイヤで、ムリをして現金で商品を買ってしまったのだという。
要するに一種の見栄なのだ。そんな彼女の借入先は、当然のごとく風俗嬢専門の闇金業者である。その利子も年利130%と、法定金利を遥かに超えている。正当な手続きさえ踏めば簡単に免責が下りるだろう。例によってまずは財産の確認に彼女のマンションへ行ってみると、あるわあるわ。英会話セット、エステのチケット、某有名海外アーティストの絵画、浄水器…まるでキャッチ商品の博物館のようだ。こんなに生活が裕福だと自己破産させるのも一苦労だ。とりあえず部屋にあった商品は
リサイクルショップに売却。足下を見られたのか全部で10万にしかならなかったが、大切なのはあく
まで貧乏な状態を作り出しておくことだ。彼女が乗っていた800万のセルシオは父親の名義に変更。これは裁判が終わるまで実家で預かってもらえばまずバレる心配はない。
キャッチセールスに引っかかってばかりという借金理由もこのままではマズイ。性格破綻者だと思
われ、自己破産が認められないケースがあるのだ。
そこで私はこんなストーリーを考えた。商品の購入先の社員は古くからの知人。友人がノルマに苦しんでいるのを見かねてついつい買ってしまった。つまり、気の弱い優しい女の子という人格をデッチ上げるのである。問題は彼女の稼ぎだった。なんと1ヵ月の給料が150万以上もあるというのだ。
「でも100万は病気の親に仕送りしてるから、自分で使えるのは20万だけやねん。何とかなりませんか」
こういう健気な話に弱い私はリスク覚悟で書類にある工作を施した。その方法を誌面で後悔するわけにはいかないが、2カ月後、彼女の自己破産はまんまと成立。