0190_20190426155526ae3.jpg 0191_2019042615552861c.jpg 0192_20190426155529ff4.jpg 0193_20190426155530177.jpg 0194_20190426155532ffd.jpg 0195_20190426155534161.jpgマスコミによって叩かれ始めた商工ローン業者。ニュース番組の強力スポンサーになることで圧力を回避してきたとも言われる業者の実態がここにきてようやく明るみに出始めている。
ダーティな印象を持たれていたサラ金業界がそのイメージを一新しつつある現在、今なお借金地獄を生み出し続ける商工ローンとはいかなるものなのか。以下は、地方都市で1年間に渡り某大手商工ローン業者に勤めた青年の報告である。
中小企業に融資をする。それがS社の業務内容だ。貸し倒れの恐れから、潤沢な資金力を誇る銀行ですら貸し渋っているこのご時世、ノンバンクのくせに簡単に、しかも中小企業に金を貸すなんてずい
ぶん危険な商売に思えるが、いったいどういう仕組みになっているのだろうか。
入社初日はまず電話のアポ取りをレクチャーされた。S社はサラ金と違って先方から金を借りに来るケースがほとんどないため、すべてこちらから営業をかけなければならないのだ。
各人の机上に置かれたコンピュータ上に、帝国データバンクから買い取った中小企業一覧が現れ、パートのおばちゃんを含む別人ほどの社員が片っ端から電話をかけまくる。
まだ若い店長は言う。
「とにかく社長を出すことが目的だから、どんな手を使ってでも社長につなげろ」
先ほど、中小企業に融資する、と書いたがこれは正確じゃない。
厳密には「中小企業の経営者に融資する」というのが正しい。銀行が法人に対して貸しつけるのとは違い、商工ローンの貸し付け対象は個人。たとえその金が事業へ目的で使われようとも、回収の矛先はあくまでも経営者とその保証人に向かうため、審査の対象も彼ら自身となるのだ。
電話の際にはこちらの社名を名乗ってはいけないことになっていた。S社です、と言うだけで切られてしまうことも多いからだ。さらに、「社長さんいらっしゃいますか」という言葉もNG。他人行儀では営業だと感づかれてしまう。
友人のように「社長いる?」だとか「上田いるかな」といった具合に、まるで知り合いのようなフリ
をしてかけるのが原則だ。
ノルマは1人あたり1日200件。朝から晩まで電話をかけ続ける。これはとんでもないところに入ってしまったと、初日にして後悔の念が沸き上がってきた。ひと月ほど毎日200件の電話をかけ続けた僕だったが、なかなか融資に結びつくことはなく、徐々に居心地の悪さを感じ始めていた。
しかも会社は、「社員は皆ライバル、味方は家族だけ」をモットーとしていたため、隣に座っている者同士であっても滅多に口をきくことがなく、陰湿でピリピリしたムードの中で毎日を送らなければならなかった。
新規顧客を開拓できない僕は、他の者が取った感触のいいアポを受け継ぐことが多くなった。これを代理実行という。
僕が初めて代理実行を担当した相手は、県内のとある造園会社の社長だった。5人しか社員のいない零細企業だが、そのうちの1人を保証人につけるということで200万の融資が決まったのだ。
ちなみに審査や貸し出し額の決定はすべて上の者がやっていた。融資額が決まれば僕たちはその指示に従い、契約のため現金を持って先方の会社へ向かう。
攻撃対象の造園業者は、実際に表の看板が傾いていて、本当に業務がなされているのかすらわからない状況だった。それでも貸す。個人に対して貸すのだから会社の業績などいっさい関係ないのだ。
年利は利息制限法の基準を優にオーバーしている。しかしそんな肝心なことすら、聞かれない限り一切説明しない。
「200万なら月々の利息はわずか6万円ほどです」と巧みな言葉でゴマかしてしまうだけだ。毎月利息を返済する優良な経営者は別として、返済不能に陥った者に対しては当然のことながら督促をしなければならない。
その段階ではS社であることをはっきり告げて会社に電話するのが鉄則だった。従業員に対して決まりの悪い思いをさせることが目的だからだ。さらに、あるときなど僕は店長からこんなことを言われた。
「お前、ネクタイを替えろ」
「頭もオールバックになでつけてこい」
つまりは、いかにも貸金業者らしい格好をしろということだ。普通のネクタイにセンター分けの頭でも、作業着姿の人間だらけの工場や事業所では目立つのだがそれでは銀行の営業マンと変わりない。従業員だけでなく出入りの業者に対しても、物騒な男が来ていると思わせるためにはそれなりの格好が必要なのだ。この辺りからも、会社の成長を応援していこうという気持ちなど微塵もないことがわかるだろう。当然ながら、督促は自宅にも向かった。奥さんや子供のいる前で
「返せ、返せ」と言われ、当人のプライドはズタズタにされてしまうが、さんざん追い込んだ挙げ句、僕たちはこう畷きかけるのだ。
「もう1人保証人をつけてもらえれば300万でも貸しますよ。それで利息分は返せますよね」
これ以上、恥をかきたくない経営者はこうしてまた借金を上乗せしていく。犠牲者が1人増えた現実に目を背けながら。