0076_2018110116385150e.jpg 0077_20181101163852047.jpg 0078_20181101163853de6.jpg 0079_20181101163855912.jpg幸い彼の元には、自分たちの新しい会社に回してもらうはずだった前の会社からの市場調査などの下請け仕事が入ってきた。家賃を払うだけの収入は確保できる。その合間にできる商売は…と考えた結果、便利屋にたどりついたのだ。
「市場調査っていうのは交通量や来客数をカウントすることから始まって、他店のメニューや値段、接客態度を調べたりする何でも屋。その延長に便利屋があるんじゃないかと思ったわけ」
便利屋に関する本や資料を取り寄せる一方、インターネットにアクセスして同業他社の仕事方法や料金などをチエックしてみた。すると、既存の便利屋は大きく2つに分かれることがわかった。水回りや修理、税務対策、翻訳、ホームベージの立ち上げなど、専門の仕事を引き受ける便利屋と、浮気調査をメインに、その他あらゆる相談ごとを引き受ける何でも業者だ。自分の仕事を請け負った方が効率がいいのは当たり前。専門である市場調査をウリにやってみるかとも考えた。が、経験上、フリーの業者への依頼が多くないことは知っている。となれば、浮気調査だ。店に潜入して第三者を調べた経験はあったし、何より金になりそうな気がした。探偵に憧れていた時期もあったという桜井氏は、そう方針を決め準備にとりかかった。インターネットでの初仕事は浮気調査だった。OLからの依頼である。前金で2万もらい、下見のつもりで彼氏の家を見に行ったら、早くもその場で女連れの当人に遭遇。慌ててカメラを取りに戻り張り込みを続行するが、深夜を過ぎても彼女が帰る気配はない。
そこで、その日はいったん帰宅。翌朝、改めて出かけて一緒に出勤する2人を撮影、そのまま彼女の
勤務先まで行き、退社後は家まで尾行した。実は浮気してるんじゃなくて、彼氏は依頼人と別れて新しい彼女とつきあってた。彼女がオレに言いにくくて浮気を持ち出したのか。本気でそう信じてるのかわからないけど、写真と報告書を渡してそれで5万円もらったから最初と併せて7万。興信所に客
のフリして問い合わせたら最低で10万って言うから、安目に抑えてアピールしようと思ったんだ。いくら市場調査は慣れてるとはいえ、浮気調査の経験などなかった桜井氏。本を読んで勉強したというが、ズブの素人に尾行や証拠など撮れるのだろうか。「人は尾行されてるなんて思ってないから意外と簡単なの。写真だって考えなくても、家庭用ビデオを持ってって撮影しちゃえばシャッターチャンスを逃すこともないし。それより大変なのは依頼人に本当のことをしゃべらせることなんだ。最初に全部話してくださいって頼んでも、見栄張って自分の都合のいいように事実と違うことを言う。で、よくよく聞くと、実は…ってなる。本当のことかどうか見極めないと、手間ばっかり食っちゃうから」初めのうちは依頼人の言葉を真に受け、あっちこつちとムダな仕事も多かったが、徐々に相手の話のウソを見抜けるようにもなってきた。
ただし毎月コンスタントに入ってくるわけではなく、大きな仕事が入って100を越すときもあれ
ば、持ち出しの月もある。
「どの商売も同じだけど、最初から稼げると思わない方がいい。最低でも3カ月や半年は暮らせる貯
蓄がないと。それにこの仕事は浮き沈みがあるから、一定の収入が得られる常連や定期的な仕事を取
るのも必要だね。オレの場合はたまたま市場調査の下請けってのがあるけど、これだっていつなくなるかわからないから、常に新しい展開を考えてる」