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きっかけは編集部にかかってきた一本の電話だった。
「この間、手コキ店に行ったんですけど、そのコが●●●●っていう元AKBのコだったんですよ。これって裏モノのネタにならないですかね?」
さほど興奮した様子もなく、電話口の男性は経緯を説明してくれた。
││手コキ店でフリーのコを指名したところ、かなりかわいい女の子が現れた。プレイ後、彼女がシャワーを浴びている隙に、彼女のスマホをなにげなく触ったところ、ケースにはさまっていた何かの会員証に氏名が書かれていた。帰りにその名前をネット検索してみたところ、先ほどプレイしたばかりの子の顔が、元AKBのメンバーとしてヒットした││。
 この報告を聞いた俺はかなり動揺していた。なぜなら、俺は過去5年ほどAKB48のオタクだった時期があり、さらに●●●●(以降、Xとする)は紛れもなく当時の
「推しメン」だったからだ。Xは20××年、●期生としてAKB48に入った。
 当時の俺は月に3回は秋葉原の専用劇場に足を運ぶほどのヲタで、握手会では彼女の券を数十枚買って何度もループ(並び直し)したこともある。Xは、運営からもファンからも高い支持を集める存在だった。劇場公演後のハイタッチで振りまく笑顔や握手会でのファンを大切にする姿勢はまさに「神対応」と言われていたし、俺自身彼女の笑顔に何度癒されてきたかわからない。このころはアイドルにハマりきりだったのでずっと恋人はいなかったが、そんなことが気にならないくらいに俺はXに夢中だった。だが、彼女はとある事情からAKB48を去ることになる。
 そして現在││。俺にとって紛れもないアイドルだった彼女が、マイクをチンコに持ちかえて奮闘しているというこの情報は、手放しで喜べるものではなかった。これまで元AKBのメンバーでAVデビ
ューしたコは何人かいるが、今回の件はそれとはまったく異なる。なんせ、画面の向こうでただ喘ぐ演技をしているAV女優と違い、風俗嬢は目の前でチンコをしっかり凝視して射精へと誘ってくれるのだから。ましてや、それがあのXだというのだ。ケバい雰囲気など一切なく、処女性をまとっていたあどけない彼女が、いま風俗嬢に堕していると知ればヲタは震撼することだろう。
 さっそく店のホームページを開き、該当の嬢を見てみる。モザイク写真のためX本人であるかどうかはわからない。やや茶色がかった長い髪にも、現役時代の面影はまったくない。当時の彼女はナチュラルな黒髪だったのだから。やはり真相を確かめたい。居ても立ってもいられず、店に電話をかけたところ、すんなり90分コースの予約が取れた。本来は30分程度でサクッと抜いてもらう
のが手コキ風俗だが、もし本人だった場合、久々に推しメンと話したい、というオタクならではの事情が俺にはあった。
 平日の昼下がり、某繁華街。
「お待ちしておりました! すぐにご案内できます!」
 店員が事務的に「彼女」の写真パネルを差し出し、確認を促してくる。モザイクがかかっていない姿を見てほぼ確信した。これはXだ!
「では、ご案内します。近くのレンタルルームでお待ちくださいませ」
 部屋で彼女を待つ間、身震いがした。最初の一言で何を話せばよいだろうか。ビッグサイトで握手をしていたあの手が、これからチンコを握ってくれるだなんて、どんな気分になるのだろうか。
 トントン、とノックが鳴った。
「あ〜めっちゃ寒い! はじめまして〜!」
特徴的な口元と目。当時よりも少しだけ眉毛が太くなっているものの、X本人で間違いない。グレーのニットにショートパンツの姿も、握手会にいるアイドルの風貌となんら変わりがないではないか。
「若いですね!」
ニコッとXが微笑んだ。過去に握手会や公演後のハイタッチなどで彼女とは何度も目が合っているはずだったが、彼女はファンだったころの俺に気づいていないらしい。少し悲しい気分だ。Xは事務的に店への連絡を済ませている。本当にこれから俺のチンコを握ってくれるのか? いまだに信じられない。少しだけAKBに関連する話題を口にしてみた。
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「好きな芸能人とかいる?」
 彼女は即答する。
「そういうの全然なんですよね」
「三次元とか興味ないってこと?」
「そうかもしれないですね〜」
「それ、よくアイドルがオタクを安心させるために言うじゃん?まゆゆ(現役AKBメンバー)とか」
「あ〜そういうのありますけど、私はホントに興味ないんですよね」
 揺さぶりをかけてみたが、うまく交わされてしまった。
「他に仕事やってるの?」
「××ですね。あとはこれだけ」
聞けば、Xは高校卒業後ずっとフリーター生活を続けているのだという。なんで元AKBがそんな安い仕事をしなければならないのだろう。妙な理不尽さ、不満を覚えた。俺は君に価値があると思ってこれまでたくさん足を運んできたのに。君と話すためだけに10秒千円の握手会に何度も何度も足を運んだのに。
「可愛いんだからモデルとかそういうのになればいいのに」
「ほんとですか? あはは、褒められた!」
「なんか夢はないの? 芸能界とか」
「ないですね〜」
「AKBとか興味ないの?」
「好きでしたよ、昔ですけどね」
「…昔?」
「好きだったんですけど、人気出ちゃうと興味なくなっちゃうんですよね」
 俺のオタク知識をフル動員し、さらに本人確認を進めた。
「高校のときは部活入ってた?」
「●●●やってましたね」
 AKBには加入前に●●●をしていたメンバーが少なくない。そして、Xもまたその一人であることは有名な話だ。ここまで来たら、彼女が在籍していたころのプライベートの話も聞いてしまおう。
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「初体験は?」
「最初の彼氏です。●●のころかな」
「●●のいつ?」
「すぐですね」
 待て! …ってことは、それってAKBに入る前のころだ。つまり、AKBに入った時点ですでに処女じゃなかったのか。
「どれくらい付き合ったの?」
「1年くらいですね」
さらに絶望的な気持ちになった。それってAKBにいたころとモロにかぶってるじゃないか。 恋愛禁止が掟じゃなかったのか!
「経験人数は?」
「4人ですかね」
あまりにもリアルな数値に目がくらみそうになる。俺が好きなAKB48の歌に『アイドルなんて呼ばないで』という曲がある。AKB48のメンバーが自らの立場を自己言及している歌だ。歌詞がたいへん特徴的で「アイドルなんて呼ばないで」「私も普通の女の子」「そのうちエッチもしてみたい」という刺激的なフレーズがファンの間で当時話題となった。オナネタに使うファンも多かった。Xはまさにこの時期、秋葉原の劇場でアイドルを務めていた一方で、彼氏をつくりセックスをしていたのだ。あのとき、俺たちに向けてくれた劇場での笑顔やハイタッチを独占するたった一人の男が実在したのである。
「エッチはけっこう好きなの?」
「うーん、好きじゃないですね。あ、でもいちゃつくのは好きですよ」
「そっか。じゃあ手コキも好きじゃないの?」
「好きじゃないですね」
 時計をチラリと見て、Xは黙って服を着替えはじめた。指定した制服コスプレはAKB48、13枚目のシングル『言い訳maybe』のPV衣装によく似た、白ワイシャツの首元にリボンがあしらわれたものだ。着替え終わった姿を見ると、憎らしいほどに似合っている。今でも十分メンバーとして通用するスタイルだ。
「制服、似合うね」
「えー! ホントですか? めっちゃ嬉しい! まだまだいけますかね?」
 もし、彼女が卒業していなければこの制服を着てテレビに出ていた可能性が高いだろう。年末の紅白歌合戦にも出てマイクを握っていたかもしれない。だが、いま目の前の彼女が握っているのは俺のチンコだ。
「ちょっと手が冷たかったらごめんなさい!」
少しだけヒヤッとした感触を覚える。握手に舞い上がっていたころからウン年、まさかこんな日が来ようとは。
「あ、おっきくなってきましたね。ローションつけまーす!」
 慣れた手つきでローションのボトルをあけ、それをチンコに垂らす。一つ一つの動きが手コキ嬢にとってあたりまえの仕草ではあるのだが、俺にはそのすべてがアイドルの挙動に見えた。スコスコと動かす小さな手と、ピンクがかった亀頭をじっくりと見つめる大きな目。秋葉原の劇場最前列の席でもアイドルまで1メートルは離れているのに、今たった数十センチの距離で視線を独占している。こ
れを知った他のXヲタはいまの俺を羨むだろうか、それとも目を背けるだろうか。手を動かしてもらっている間、会話はほとんどできなかった。きっと、普通の手コキならば「もっと玉の方」とか「両手で強めに」などの要求をするのだろう。だが、俺は推しメンにそんな無理な思いはさせたくない、という一心で彼女の姿を見つめていた。
「あ、いきそう」
 すぐにXは両手でチンコを覆った。
「あ、出ましたね! 間に合ってよかった〜!」
彼女は、すぐにティッシュを数枚取り出して手を拭くと、さっとシャワー室へと消えていった。それから一週間後、またXに会いに行った。今度は上半身ヌードオプションを追加だ。これまで想像上でしか存在しなかったXの乳房と乳首をこの目で確かめるのだ。
「あ、また来てくれたんですね!」
その話し方は、握手会でループしたときにXが笑いながら発する言葉とまったく同じだった。ファンが自分の存在をメンバーに覚えてもらうことを「認知」と呼ぶのだが、俺はまさに今「認知」してもらえたのだ。
「ヌードオプションついてましたよね?」
そう言うと、Xはあっけなくブラを外した。ぷくりとした乳房ときれいなピンク色の乳首が目の前に現れる。 
「……恥ずかしい?」
「やめてくださいよ〜! そういうこと言われると恥ずかしくなるんですって!」
 直視できなかったが、チンコは正直すぎるほどに勃起していた。ファンの誠実さが性欲に負けた瞬間だ。
「すごいおっきくなってますね〜!」
慣れた手つきでチンコにローションをたっぷりと絡ませながら、Xがチンコを見つめる。至福の時間だ。前回よりもあっという間に射精に達してしまった。
「すっごい早かったですね!」
 手を洗い終えたXが戻ってきたところで、軽い雑談が再開された。
「そういえば、好きなタイプってほんとにいないの? 彼氏いたことあるのに?」「うーん、ほんとにいないんですけど…」
 そう言いながら彼女はスマホのブラウザを開いて、なにかを検索しはじめた。
「強いて言うなら……」
 やっぱり、誰かタイプの男がいるってことか。
「あった! これこれ!」
彼女が見せた画面には、筋肉質の黒人俳優が映っていた。なんだよ、こんなの現実的じゃないよ。と、次の瞬間、スマホ画面にプッシュでメッセージが届いた。
〈●●●●さま 特別キャンペーンのお知らせ〉
 なにかのメルマガだろう。そこにはバッチリ彼女の本名、つまりAKB時代の名前が表示されていた。すべてが裏付けられた瞬間だ。
「こういうゴツいかんじの人が好きなんですよね〜! なかなかいないんですけど!あはは!」
 彼女は何事もなかったかのようにスマホを閉じた。本当にもうXがAKBに戻ることはないのだろうか。AKBには出戻りをしたメンバーも何人か存在するのに。今日の一連のXの「神対応」を見ても、
現在でも彼女は十分アイドルとして通用する。ただネックは、不特定多数のチンコを何本も握ってきたことだ。その手で握手会、となると複雑な気分にならなくもない。
「将来の夢とかないの?」
「うーん、早く結婚したいですね」
「結婚か。キャリアウーマンになりたいとかビッグになりたいとか、そういうのはないの?」
「ないですね」
 実にアッサリとした回答に俺は食い下がった。
「だってまだ若いじゃん? アイドルとか向いてると思うよ」
 ほぼ口元まで「たとえば、AKBとか」
という言葉が出かかっていたが、それを遮るようにして彼女は言った。
「ぜんぜん興味ないです。私は普通が一番なんです」