201507216.jpg 201507217.jpg 201507218.jpg 201507219.jpg 201507220.jpg 201507221.jpg 201507222.jpg 201507223.jpg 201507224.jpg 201507225.jpg 201507216.jpg 201507217.jpg 201507218.jpg 201507219.jpg 201507220.jpg 201507221.jpg 201507222.jpg 201507223.jpg 201507224.jpg 201507225.jpg常習的に発せられる怒鳴り声、意味不明な叫び、あるいは不快なノイズ。こんなものをしょっちゅう聞かされちゃたまったもんじゃないが、一方で好奇心をくすぐられるのも事実だったりする。
近所迷惑もかえりみず、ナゼ彼らは奇声をあげ続けるのか? いざ本人たちを直撃してみよう。
まず最初にやって来たのは、神奈川県某市の住宅街だ。古い民家の建ちならぶ細い路地をてくてく歩くうち、目的のアパートが姿を現した。築30年は軽くいってそうなレトロ感バリバリの物件だ。情報提供者はアパートに隣接する民家の住人で、彼によるとその一室からもれ聞こえる奇声は以下のようだ。
×ほぼ毎日、深夜に怒鳴り声がする。
×場合によっては歌ってる風にも聞こえるが、とにかく何を言ってるかわからない。
×声と同時にドスンドスンと床を踏みならす音も。
なるほど、こりゃひどい。周辺住人が困ってるのも納得だ。問題の部屋の前に立った。ドアには「が
いきっちゃん(キチガイのことか?)」と書かれたポスターが貼ってあり、そばには謎の手形色紙が無造作に転がっている。何だか、とっても不穏なんですけど。
ややビビりつつノックすると、10センチほど開いたドアの向こうで、ボサボサ髪の男が顔を覗かせた。歳は20代後半くらい。こちらを警戒してる様子だ。
「…なんでシュか?」
「私、近くの住人なんですけど、こちらの部屋からよく大きな声が聞こえてくるので、どうされたのかと思いまして」いきなり男が吠えた。
「また文句か?いい加減シロ、馬鹿ヤロ!」
口ぶりからして、しょっちゅう近所から苦情が入っているようだ。にしても、先ほどからどうも日本語がヘンだな。外国人か?
「韓国人だよ!あなた文句いいに来たか! ?」
「いや、そうじゃないんです。なんで大きな声を出してるのか知りたいだけで」
途端に男が笑顔になる。
「あ、そう。私、ヒップホップがシュキ(好き)で歌ってるの」
現在は韓国料理店で働いているものの、来日前は歌手志望だったとかで、いまも自分で作曲した曲を歌うのが趣味なのだと彼はいう。はあ、そうですか。とりあえず奇声の正体が、韓国語ヒップホップと判明し、少しホッとする。あんなポスター貼ってることだし、最初はてっきり本物のキチガイかと思ったが、どうやらまともに話のできる相手のようだ。なので、気軽に尋ねてみる。
「カラオケは行かないんですか」
「行きません。なんで?」
「大きな声で歌いたいならカラオケの方が良いかなと思って。近所迷惑にもなりませんし」
間髪入れず、銃弾のようなツバのしぶきともに罵声が飛んできた。
「だからおまえバカ! ?カラオケに私の曲じぇんじぇんないでしょ!ほらどうです、文句いった、このウソちゅきぃぃ!♀※×♪△♯〃♂! !」
最後に韓国語で悪態をついたところでドアがバタンと閉まり、なおも男は室内で何事かわめき散らしていた。キーンと、耳が痛くなるほどの声量だ。やっぱり、マトモな人じゃありませんでした。続いての訪問地は、都内某駅から少し歩いた場所にあるボロアパートだ。ここへ来る前、情報提供者から聞いたのはこんな内容だ。
「僕がよく聞くのは『くっさー』っていう叫び声とか『おえー』っていうえづきとかですね。あと笑い声もすごいんです。1回はじまると20分くらいずっと笑いっぱなしなんですよ」
よくわからん話だ。何かトンでもなく臭いものを嗅いで七転八倒したあげく気分がハイに、てなことなんだろうか?ぼんやり考えつつアパートの階段を上がろうとすると、集合ポストが目に留まった。おそらくその奇声主のポストであろう部分に張り紙が貼ってある。
「夜中に大声を出すのはやめて下さい。迷惑しています!」
ゾッとしたのは、張り紙の劣化と変色具合だ。つまり奇声の主は、相当前に貼られた紙を撤去せず、そのまま放置していることになる。怖いんだけど…。緊張気味に部屋をノックしたところ、か
なり間があって、ドアの向こうで男のかすかな声がした。
「…はい」
「あの、すいません。私、近くの住人なんですけど、こちらからよく大きな声が聞こえるので、どうしたのかと思いまして」
返事の代わりに甲高い笑い声が届いた。
「んふっ」
「あの〜、ドアを開けていただくことはできないでしょうか?」
「ひひひっ、フガガ!」
今度は鼻も鳴ったらしい。
「あの、すいません。ちょっとだけ出てきてもらえませんか」
「くくく、くくくくく〜」
どうしようどうしよう。これマジでヤバい人じゃん…。得体の知れぬ恐怖にぷるぷる震えていると、同じ階の住人らしき人物が階段を上がってきた。すがるように駆けよる。
「すいません、あの部屋の方のことなんですけど…」「ああ、○○さんでしょ。関わらない方がいいよ」「どういう方なんですか?」
「いや、俺も不動産屋に聞いた話しか知らないんだけど…」
彼の話はこうだ。以前までの奇声主はごく普通の勤め人だったのだが、うつ病が原因で仕事を辞めたあたりから様子がおかしくなり、以後、滅多に外出をしなくなった。生活保護などは受けておらず、時折、部屋を訪ねてくる両親が生活の面倒を見ているそうで、現在の年齢はおそらく40前後ではないかとのことだ。住人が笑って続ける。
「たまに俺も顔を見ることあるけど、普通に挨拶もするし、悪い人じゃないと思うね。でも1週間に3回くらいは発狂するんだよなぁ。昨日も朝方までワキが臭いだ、尻が臭いだ叫んでたし」
帰り際、もう一度外から部屋の窓を見上げると、男の影がせわしなく動くのが見えた。ワキの臭いでも嗅いで動揺してるんだろうか。都内のとある閑静な住宅街に、ファミリー層向けの白塗りアパートがある。その一室の住人がなかなか騒がしい人物らしく、夜中に「ウォォォ」と雄叫びが聞こえたり、ガチャンとモノの割れる音が聞こえたりといったことがたびたび起きるそうな。ファミリー用住宅、雄叫び、モノの割れる音。素直に考えると、単なる夫婦げんかのような気もするが、さてどうなんでしょうか。目的の部屋のインタホーンを鳴らすと、
「はい、どちら様?」
スピーカー越しに女性の声が届いた。奥さんのようだ。
「あの、何だかこちらの部屋で夜、よく大きな声が聞こえてくるんですがどうかしましたか?」
「ああ、すいません…。うちの主人です」
心底、恐縮している様子が手に取るようにわかる。
「ご主人はご在宅でしょうか」「はい、お待ちください」
まもなくおっさんのガラガラ声がスピーカーに響いた。
「いやぁ、すいません。以後、気をつけますんで」
「なぜ大声を?」
「いや、ちょっとその、お酒が入ると私、えへへ。本当に申し訳ございません。じゃそういうわけで失礼します、はい」
そこで会話は一方的に途切れた。もう一度インターホンを鳴らしても応答はない。うぬ。このオッサン、腰は低いくせになかなか図太いキャラのようだ。仕方なく近所の家を何軒か訪ねてみたところ、アパート真裏に住むオバサンが色々と教えてくれた。
「酒乱なんですよ、あの人。普段はヘラヘラしてるんだけど、アルコールが入るとめちゃくちゃなの。ずっと大声出して騒ぐんだから」
あまりの迷惑っぷりに、彼女も自分の夫を連れ、一度、抗議しに行ったことがあるらしい。
「奥さんがいい方で平謝りしてくるの。だからその時はおとなしく引き上げようとしたんだけど…」
苦々しい顔でオバサンが言う。
「帰り際、ダンナさんがいきなり窓から顔を出して『ションベンかけてやろうか!』って、そんな失礼なことを叫ぶのよ。呆れちゃうでしょ? もう私、あの奥さんが本当にかわいそうで」
まったくだ。続いてやって来たのは、埼玉県郊外の住宅街だ。その一角にかなり年季の入った戸建てがあり、騒々しい物音が聞こえてくると言う。早朝4時ごろ、家の住人がアルミ製の雨戸をガンガン叩き、「やかましい!」と金切り声を上げるらしいのだ。意味不明だ。自分が雨戸を叩くからやかましいんじゃないの?
さっそく奇声主の自宅を訪問すると、60過ぎのおとなしそうな男性がドアから顔を出した。表情に、ややうつろな印象がある。「なんでしょう?」
「あの、お宅からよく騒音がすると聞いたので、どうされたのかと思いまして」
「騒音?知りませんけど」
さらっと否定された。あるいは、騒いでいるのが彼自身ではなく、家族の誰かなのかもしれんが、それにしてもまったく知らんことはないだろうに。
「けっこう大きな音が出てるようなんですがご存じないんですか」
「ええ、わかりませんね」
ドアが閉まり、カチャっとカギのかかる音がした。うーむ、とりつくシマがない感じだ。隣の民家の軒先で、オバサンが鉢植えに水をやっている。あの人に聞いてみよう。
「あの家からたびたび騒音がするって聞いたんですけど、何かご存じです?」
言うと、オバサンが申し訳なさそうに頷く。
「迷惑かけちゃってゴメンね。あの人、うちの犬に怒ってるのよ」
「犬?」
以前、先ほどの男性が、庭先で飼っている彼女の犬がうるさいと文句を言いに来たことが一度あるらしい。
「朝方にキャンキャン吠えるから黙らせろって。でもうちの犬って朝どころか滅多に吠えないのね。だから勘違いだと思って放っておいたのよ。そしたらああやって窓を叩くようになって」
つまり男性の完全な被害妄想だと彼女は言っているわけだ。
「でも、だったら男性の家族がやめさせるんじゃないですか?」
「あの人、あの家で1人暮らしなの。前は奥さんがいたんだけど、亡くなってね。それからちょっとおかしくなったみたいなのよね」
念のため、近隣の家々にも話を伺ってみたが、たしかに彼女の家から犬の鳴き声がするとの証言は得られなかった。お次の奇声ハウスはなかなかハイテンションだ。「殺すぞコラ!」「てめー刺すぞ」
「かかってこいや!」など、物騒なわめき声がほぼ毎晩、深夜から朝方にかけてえんえんと続くそうな。目指す家は、都内の庶民的な住宅街の中でひときわ不気味な存在感を放っていた。パッと見は白塗りのシャレた一軒家なのに、家中のガラスが残らず割れており、ガムテープで修繕されているのだ。奇声主が破壊したのだろうか。迫力がハンパない。しかし、どうにもインタホーンを押す気になれないのは、それだけが理由じゃない。
「文句あんなら言ってみろぉやぁコゥラァ!」
「オイオイ、来ねえならこっちから行くぞ、コゥラァ!」
今まさに奇声がバンバン上がってるのだ。…うわ、えらい巻き舌ですよ。勇気を振りしぼりインターホンを押す。と、奇声がピタリとやんだ。そう思った次の瞬間、
「やんのかコゥラァ! !」
玄関トビラが吹っ飛びそうな勢いで開き、坊主頭でカミソリの目つき、黒のスエット上下に身を包んだ、簡潔にいえばヤクザにしか見えない男が転がり出てきた。のみならず、拳を握りしめ、ずんずんこちらへ近づいてくる。こりゃまずい。逃げろ!しばらく後、ふたたび現場へ。すでに奇声ハウスは静まりかえっており、何の怒声も聞こえないが、またあの狂人を呼びだす勇気も気力も残されていない。そのまま素通りし、隣人宅を訪ねる。
「すいません、お隣のことでお話を伺いたいのですが」
切り出すや、応対してくれたおばさんが深いタメ息をこぼす。
「もう10年近くあんな状況なのよ。本当に困ったものよねぇ」
 彼女いわく、男(40代前半)は若いころ暴走族をしており、そのころから覚せい剤に手を出していたという。精神に変調を来たし、幻聴や幻覚にさいなまれるようになったのもそのためらしい。
「何度か入院もしてるみたいだけど、いっこうに治らなくてね。それにあの子、暴力を振るうもんだから、とうとう両親もサジを投げてどこかに逃げちゃったのよ」
被害者は男の家族だけではない。このおばさんを含む周辺住人たちも、男に恫喝されたことは数限りなく、中には実際に暴行を受けた人まで複数いるのだとか。挙げ句、家の前を通りかかった少女にヒ
ワイな言葉を投げかけることもあり、とにかくここ最近は、月に数回パトカーがやってくる有様だという。ツワモノすぎだろ。
「本当に、ウチも引っ越せるなら引っ越したいわ」
そう言っておばさんは何度もタメ息を繰りかえした。最後に訪れたのは、東京郊外にある古びたアパートだ。鉄筋部分と木造部分が混在する変わった造りの建物で、よくその一室の窓から大音量のお
経や祭りのお囃子、そして言語不明瞭な叫び声が聞こえてくるとの話だ。が、どうやらすでにソレは始まってるらしい。アパートの敷地に入る前から、陽気な祭り囃子が鳴っているのだ。
テンテテンテン、ぴーひゃらぴーひゃら、テンテテンテン。
おそらく音源はCDか何かだろうが、日中からこんな調子とは、ハタ迷惑もいいところだ。さらに玄関トビラの前には雑に破られた段ボール片が貼ってあり、「防犯カメラ作動中」の文字が。しかしカメラらしきものはどこにも見当たらない。首をかしげつつ呼び鈴を押す。と、思わずのけぞりそうになった。阪神の野球帽にマスク姿の男が、急にドアを開けたのだ。
「あ、あの、少し伺いたいことがあってお邪魔したんですけど…」
「あ、そうですか。じゃちょっと待ってください」
いったん奥に消えた男が制汗スプレーのようなものを持って現れ、おれの体にかざした。上半身から下半身へスプレーを走らせる動作は、まるで空港の金属チェックのようだ。スキャンの真似事か?
「あの、これは…?」
「うん、大丈夫みたいだ。よし、入ってもいいですよ」
よくわからんが、室内に招いてくれるらしい。気が進まんなあ。いやまあ、入るけどさ。部屋はキッチンと8畳一間の造りで、モノが溢れてごちゃごちゃしている。男はキッチンで湯を沸かしながら口を開いた。
「何を聞きたいの?」
そう言われても聞きたいことがありすぎて迷ってしまう。とりあえず、このうるさい祭り囃子のことを尋ねるか。
「いま鳴ってるこれって、何のためなんですか」
「敵を威嚇してるんだよ。大きな音を出せば近寄りにくいでしょ」「失礼ですが敵って何です?」
「ちょっとやっかいなヤツらに目を付けられててね。詳しいことは知らないほうがいいよ。君も巻き込まれちゃいやでしょ」
「はあ。ところで普段から家の中でも帽子やマスクを付けてるんですか?」
「寝るときもね。ほら、気体兵器は窓を閉めても入ってくるから用心しないと」
この人、完全な電波系だ。ならばもはや彼の行動の意味について尋ねても不毛なだけだろう。質問を変えるか。
「でも、これだけ大きな音を出してると、苦情が来ませんか?」
「たまにあるね。それは申し訳ないと思ってる。でも、こっちも自分の身を守らないといけないから事情をよく話して理解してもらってるよ」
そんな事情を理解してくれる人なんて誰もいないと思うんだけど。お茶を一杯いただいた後、部屋を後にした。その際、出くわした住人に話を聞いてみる。
「ああ、あの人ね。けっこう前から色んな住人が管理会社に文句言ってるみたいだよ」
にもかかわらず男が退居扱いにならないため、他の住人たちも不思議がっているという。
「あくまで噂だけど、あの人の親、かなり偉い人で、大家にがっぽり金払っているらしいよ。まあ、俺はあんまりあの人が嫌だとは思わないけどね。なんかやってることや言うことが笑えるし」
気楽な人だな。深刻な問題がそのうち起こらなければいいのだが。