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地元イオンへ買い物に出かけたその日、どこからともなく私の名を呼ぶ大きな声が聞こえた。「鍋島くん!?」
 振り返った先には初老の女性が手を挙げている。あ〜、荒井さんか!
 荒井清美は中学時代の同級生だ。特に親しかったわけでもなく、数年前の同窓会で再会していなければ、まず彼女だとは気づかなかったはずだ。まあ、それは向こうも同じだろうが。それはさておき、先ほどから彼女の隣に佇んでいる若い女は誰だろう。少しギャルっぽい雰囲気ではあるものの、なかなかの美人だ。娘にしては若すぎる。なにせ二十歳そこそこにしか見えないのだから。「ああ、この子。私の孫なの、うふふ」
 え、こんな大きな孫が?
「そうなのよ。ちょっとびっくりでしょ?」
 荒井さんは19の時に娘を産み、その娘さんもまたハタチで結婚し、すぐにこの子を出産したんだそうな。へえ。ウチのドラ息子はまだ結婚もしてないというのに、えらい差だ。孫娘がいかにも愛想よく挨拶する。
「アカリって言います。ここのイオンのマッサージ店で働いているんです」
そう言って紙切れを取り出す彼女。
「これ、割引き券です。気が向いたらぜひお店に来てください」
 (マッサージか…)
 後日、ふと彼女の店に顔を出そうと考えたのは、同級生の孫娘に体をほぐしてもらうのも一興だと思ったからに過ぎない。せっかくチケットももらったことだし。
 店に着くと、アカリちゃんは私の来店をことのほか喜んでくれた。カーテンで仕切られた半個室に通され、さっそく施術が始まった。ほどよい力加減で彼女の手が体のコリをほぐしていく。いやぁ意外と上手い。極楽極楽。あれこれと雑談を交わすうち、やがて話題はアカリちゃんの仕事に及んだ。
「そんな華奢な体で力仕事は大変でしょ」
「ホントですよ! 毎日くたくたです」
 急に声をひそめて彼女が続ける。
「給料だって激安なんです。好きなものもぜんぜん買えないし、正直、転職を考えてるんですよね」
 聞けば手取りは13万。確かに薄給だ。すでにマッサージが終盤に差しかかるなか、目を閉じて熟考した。彼女にエンコーを持ちかけるってのはどうだろうか?
 同時に、昔の荒井さんの姿を思い出してみる。決して美人ではなく憧れてもいなかった彼女だが、なかなかの人気者だった記憶はある。その彼女と血のつながった孫と一戦を交えるなんて、何だか欲望をくすぐられるものがあるではないか。幸運なことにアカリちゃんは荒井さんの「娘の娘」である。「息子の娘」だと全然しっくりこないが、女系でストレートにつながっているとなれば、アカリちゃんには荒井清美の「女」の遺伝子が濃厚に受け継がれているとは言えないか。
 意を決し、わざと軽い口調で言ってみた。
「アカリちゃん、そんなにお金に困ってるならお小遣いあげよっか」「え?」
「一緒にホテルに行ってくれたら3万払うけど、どうかな?」
キモいおっさんだったと荒井さんに告げ口されたところでどうってことはない。どうせもう、会う機会もないだろうし。その思い切りが良かったのか、アカリちゃんはニンマリと笑った。
「じゃあ、お店が終わるまでどこかで時間潰しててもらえます?」
 アカリちゃんとの淡々としたセックスで、かつて同級生だった女の痕跡を必死に探ってはみた。
 しかし、必死のクンニにも関わらず、さほど変化を見せないその表情にも、おざなりのフェラでお茶をにごそうとしたり、挿入時にシラけた態度を見せるその非協調的な性格にも、私の頭の中にある荒井清美的なものはいっさい見当たらなかった。やはり孫は孫にすぎないってことか。3万は払い過ぎだったかも。