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午前7時。目覚まし時計と一緒に起きて洗顔。化粧して9時前には会社に飛び込む。女子更衣室で制服に着替え、コンピュータ前に座ると、ちょうど始業の時間だ。
この建築会社で働き始め今年で5年目に入った。同僚の女子社員とランチを食べ、アフター5を過ごし、たまには旅行に出かける。その生活スタイルからすれば、ご平均的なOLと言って差し支えないだろう。
だが、私には誰にも言えない秘密がある。実は私、男なのだ。
物心ついたころから私の中には女の子の洋服を着たいという願望があった。母親や姉のスカートがうらやましく、学校に上がると女子のブルマーが履きたくてたまらない。
体操着入れから汗っぽいブルマーと上着を拝借。下着の上に身につけたときの興奮といったら…。
大学を卒大学卒業後、大手の建設会社に就職した。毎日、Yシャシにネクタイを締め、満員電車で通勤。ユミとも自然に付き合いが2年目になった。
ストレスで満タンになった私は、いても立ってもいられず寮を飛び出した。駆け込んだのは新宿の某
デパート。気が付くと女モノの服を買い漁っていた。
自室に戻り、その服を身につける。と、言いようのない恍惚感が体を襲った。
〈どうせ一度切りの人生だ、自分の好きなように生きなきゃな〉
開き直った私は女装に心血を注ぎ始める。通信販売で下着やカツラ、化粧品などを買いそろえ部屋にこもっては鏡の前でファッションショーの真似事をする。さすがにその姿で外にでる勇気はなかったけれど。
まもなく、女装者向けの雑誌が出ていることを知った。多くの同好者がいると心強くなる一方で、毎月、グラビアに掲載される女たちの写真を見て思った。
〈絶対、自分の方がキレイだ〉
さっそく撮影機材を買い込み、女の自分をせっせと投稿し始める。その写真が誌面に載ると嬉しくなる。
〈女装が好きだから女のカッコはするけど、別にオレはゲイってワケじゃない〉
その確信がガラガラと崩れたのは4才年上のサラリーマン、山下さんに恋をしてからだ。
女装交際誌の文通欄で知りあった彼は、女装男が好きなゲイだった。が、好きになってしまえば男も女も関係ない。
なんて偉そうに言っても、デート前の姿は誰にも見せられない。風呂に浸かって毛穴を開き、手、足、眉に脇、そして青々としたヒゲを毛抜きで1本1本抜いていく。そして真っ赤に腫れ上がったに
塗り込めるようファンデーションをはたく。いったい何時間かかっただろう。
つきあい始めて1カ月、旅先のホテルで初めて山下さんに抱かれた。もちろん、挿入するのはお尻の穴だ。
「力を抜いて」
彼が勃起した私のペニスをしごきつつ、アヌスに乳液をつけ周辺をもみほぐす。
「いくよ」
「ぎゃ」
男と男のセックスは知識として知ってたが、こんなに痛いものと陸早くイってくれと祈ってるうちに終了した。
しかし、慣れとは不思議なもので、2〜3カ月経つころには病みつきになるほどの快感に変わった。お尻でイき、同時にペニスから射精する瞬間は、男だったときの帥倍は気持ちいい。外見だけでなく、身も心も女になりたいと願うようになったのは、それからだ。
営業マンでは、自分せの時間が持てないと、会社を辞め、建築専門学校の講師に卜ラバーユした。
当時の私は、女性ホルモンを打ち始めたばかりで、胸もなけりやと顔形も男。女装姿で教壇に立てば
変態呼ばわりされるのは目に見えっている。あくまで男としての就職だった。
がが、週に2度のホルモン注射は、2年のうちに劇的な変化をもたらす。体のラインが丸みを帯びてぺチャンコだった胸が別のBカップになり、固い肌がボロボロ剥がれた。
〈最初から女として会社に入ればいいんだ〉
履歴書は「池田じゅんし」と平仮名表記し、性別を問う欄はノーチェック。これなら嘘をついたことにはならない。万一、性別を聞かれたら正直に「男です」と答えるまでだ。
前の勤務先に確認の電話を入れられてはやっかいだから、それなりのこじんまりした建設会社を選んで応募。果たして面接で性別のチェックはなく、私は見事に女子設計部に採用される。
「こんどこちらで働くことになった池田です」
「どうぞよろしく」
女子トイレや更衣室を案内してくれる課長さんは、私が男だなんて露ほども疑ってない。
それより最初のうちは、女の子と一緒に更衣室で着替えることに私の方があわてふためいた。女性ホルモンのおかげで睾丸は縮み、めったに勃起もしないが、下着姿の女性にソソられドキドキしっ放しだった。
やってみれば仕事をする上で、特に支障はない。まさか同僚に女装した男がいるなどと誰も考えるワケがなく、与えられた仕事さえきっちりこなせば、ノープロブレムだ。
「珍しい名前だね。誰が付けたの?」
時々こう聞かれることもあったが、
「父が男の子ほしかったみたいで」
と一言えばいい。誰もそれ以上、突っ込んで来ない。
ただ、社員旅行のときは困った。女のコたちと一緒にお風呂に入るわけにいかないのだ。そこでとりあえず今日は体調が悪いと伏線を張り、みんなで入るときはパス。こっそり隙を見て1人で女湯に行った。女性特有の会話も、しだいに慣れた。
「池田さん、急に来ちゃって。ナプキン持ってない?」
最初に声をかけられたときには、相当あせったが、今では「ごめん、今日は持ってないや」と、自然に口から出てくる。一度、「どうして、いっつも生理ないの」と突っ込まれたこともあったが、それもこう言えばOK。
「なんか、昔から不順であんまりないんだ」
もっとも、そんな言い逃れも場所が場所だと通用しない。側えば病院だ。保険証には男と記されているのに、病室に入ってきたのは髪の長いスカート。困った医者は聞く。
「ええと、あなたが池田潤史さん、ご本人ですか」「はい、私です」
会社の同僚は私が男だってこと誰も気づいてません
「--」これまで何人の医者を絶句させたことか。
いずれこうなると思っていた…
去年の秋、山手線で初体験の相手、ユミを見かけた。ちょっと老けたが、美形は相変わらず。座席に座る彼女の前に立ちじつと見つめたら、不審げな顔つきで見返してきた。
「オレだよ」「…え、もしかしてジュン」「どう?」「やっぱりね」
電車を降り、大学のころ2人でよく行った居酒屋に入った。
「いずれ、こうなると思ってたんだ。だってよく私にヒラヒラのミニスカートとか買ってくれたじゃない。自分で着たいんだろうなって思ってた」「そうなんだ」
話しているうち、急に男だったころが懐かしくなり帰りがけにホテルに誘った。
「よしとく。私、女と寝る趣味ないもん」
そのときは少しヘコんだが、ユミに振られたことで、やっと女としての自分に自信が持てた気がする★女性としての体を保つには、1本3千円以上もする女性ホルモン注射を週に2-3度(体質によって異なる)打った上、脱毛やエステにも通わなければならず、さらに性転換手術には百万単位の金が必要だ。昔はそれだけの費用を稼ぐには夜の仕事しかなかったのだろうが、いまは違う。私のように専門職を得て、それなりの収入を確保する道があるのだ。
例えば日曜日に人でごったがえす新宿に出かけると、あちらこちらに私と同種の女たちがいるのに気づく。ごく普通の髪型をした、どこにでもいそうな女の子たちは街中に溶け込んで、微塵の違和感も抱かせない。そう、女として生きる男たちは皆さんが思う以上に存在するのだ。だって私は、あなたの同僚かもしれないのだから。