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事件記者を始めて早2年。平日は取材に走り、週末はスカウトマンとして現場に立つ毎日を送っている。仕事&ハメの日常にもようやく慣れてきた今日この頃だ。そんなオレが最近、柄にもなく、恋をした。相手は放火事件の被告人。それも、ミスコン準グランプリの美人女子大生だ。
桜が舞う昨年の春先、4月15日のこと。いつものように編集部に出向くと、席に座る間もなく、デスクがオレの肩を叩いた。
「おい、金森。事件が発生したぞ。日〇女子大のミスコン準クランプリをとったこともある美人女子大生が、彼氏の家に火を投げたってことだ。加害者を当たってくれ」
鬼デスクには珍しく、完全なエロオヤジの目をしてやがる。とにかく、共同通信の速報に目を通してみっか。〈現住建造物放火の疑いで逮捕されたのは、日〇女子大学理学部4年の宮下メグミ容疑者(仮名、当時22才)。宮下容疑者は4月13日午後6時半頃、中野区にある交際相手の男性の自宅に行き、ライターで火を付けた紙袋を風呂場の窓から投げ込んだ疑い。出火当時、男性は不在で怪我人はいなかった〉
読み終えるや、オレは即座に現場に出向き、取材を開始した。が、浮かび上がるのは、交際相手への愛情と憎悪の入り混じった犯行、というよくある構図。結果、ありふれた事件として、記事になることもなかった。ところが、それから約2力月後の6月27日、東京地裁へ別件で出向いた際、とある法廷の傍聴人入り口に、偶然、彼女の名を見つけた。〈宮下メグミ、初公判〉むくむくと興味がわきあがる。彼氏に捨てられた挙げ句に放火した鉄板女が、どんな顔してるのか。この目でシ力と見届けてやろうではないか。傍聴席の最前列を陣取り、そのときを待っていると、ほどなく両手錠の女が入廷してきた。白線の入った赤いジャージに上はピンクのトレーナー。細身ながら推定F-G力ップのバストが浮き出ている・不安そうな顔で傍聴席を眺める表情は、なんと、伊東美咲似ーとてもすっびんとは思えない上玉だ。オレは彼女の一挙一動に注目した。下心だけではなく、そのすべてを知りたい。これが、一目惚れといつことか。
公判が始まりー時間半、被告人質問で、彼女が突然、こんなことを言いだした。
「ワタシ、市ノ瀬(H被害者名)との間に子供ができたとき、本当に嬉しかったんです。彼と会う前に、2回ほど中絶したことがあって、これが最後のチャンスだなって。それなのにグスン、ヒック。あの人はワタシに毎晩のように子供を捨てろとお腹を蹴ってきてグス、グスン」
なんて不幸なオナゴなんだ。鳴呼、守ってやりたい。
その日、自宅で焼酎を飲みながら、彼女のことを想った。
〈今頃、暗い部屋でまた泣いてるんじゃないか。拘置所の床は冷たいっていうじゃないか。まだ春先だし、毛布に包まっていないと風邪でも引くんじゃないか〉
相手と話すこともできないジレンマが、オレを奮え立たせた。
〈今回の事件で、検察側は実刑5、6年を求刑するだろうが、初公判を見る限り、情状酌量で大幅に減刑されるはず。いまから手紙の交換をしておいて、出所した暁に彼女とパンパンできないものか〉
職業柄、被告人へ出した手紙に、かなりの確率で返事があるのは知っている。さほどに、塀の中は孤独で寂しいところなのだ。ならば、愛情のこもった手紙一枚で、簡単になびいてくれるんじゃないか。オレはペンを激しく走らせた。
〈あの日、僕は初めてあなたに会いました。あなたは決して悪いことをするような人じゃないと思った。(中略)ふらっと立ち寄ったことに感謝しつつ、また手紙を書かせていただきます/金森遊〉
翌日「東京地裁、留置管理係宛に封筒を投函し、返事を待った。が、ー力月経てども、一向にレスは無い。もしかしたら下心を出しすぎたのろうか。そこで、今度は、記者という肩書き(もちろん、名前も変えた)で、まったく違った内容の手紙を送ってみた。
〈拘置所内の慣れない生活で、こ苦労も多いかと思います。あの事件が発生してからというもの、私はあらゆる取材を進めてきました。友人関係や交際相手のこと(中略)。公判を通じていま思うことは、これまでの報道はあまりに一方的すぎないかということです。私はあなたを心底応援しております/報道記者Y>
暇な拘置所生活に対する同情的な文面に、達筆な文字。どれをとっても、彼女の味方の味方である。今度こそ
★しかし、またも返事は来なかった。
オレ以外のマスコミが彼女を追いかけてるとも思えないのに、なぜっ
知り合いの記者からー本の電話を受け取ったのは、悶々とする日々を続けていた今年3月のことだ。「あ、金森ちゃんっこの前さあ、拘置所内から届いた宮下メグミの手紙を入手したんだ。昔の友達やら元力レやらワケわかんない男に、片っ端から自己弁護の手紙を送ってるらしいよ。今度、見るっ」
「しかも、最近の裁判では完全に形勢不利になっちゃって。一審で3年6カ月の実刑が確定したんだよね。女は控訴しを今までひとりで浮かれてたてるみたいだけどちょっとんだっ先行きはわからないね」