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今回の舞台は栃木県・宇都宮だ。実は、栃木や群馬を中心とした北関東のテレクラはメール全盛期のこの時代でも、じゃんじゃんコールが鳴っているらしい。まあ、いくらコールの鳴りがよくとも、まともな女と出会えなければたいして意味はないのだけど。
「ソフトバンクですけど」
「…やらしい」
宇都宮駅東口にあるテレクラに入り、案内された部屋のドアを開けて驚いた。派手に貼られた2ショットダイヤルのポスターと共に、この連載記事のコピーが貼られていたのだ。酷い化物しか紹介していないというのに、なぜ店側がまたこんなことを。はっきり言って客が逃げていくとしか思えないのだが。すぐにコールが鳴った。
「43才です。お兄さん、こんなところに電話してくるって、やらしいんでしょ?」
 最初の第一声が年齢とは。テレクラ慣れにもほどがある。
「はい、けっこうやらしいと思います。ボクは29才なんですけど、これから会える方を探してまして」
「29才なの? …やらしい」
なんだ、何がやらしいんだ?
「もしかして、お姉さんはワリキリで会える方を探してたんですか?」
「そう。私、年上で太ってるけど。大丈夫?」
そんなものは朝メシ前だ。
「大丈夫ですよ。それより車ないんですけど大丈夫ですかね」
「じゃあどこかで待ち合わせしてホテル行こうか。あ、ケータイ番号教えてくれる?」
話が早い。ワリキリの手段が多様化したと言えど、スピーディさは今でもテレクラが一番だろう。
「はい、メモった。ちなみに、どこの会社?」
「会社っていうのは?」
「ケータイ会社よ」
「ソフトバンクですけど」
「…やらしい」
この人、「やらしい」と言うのがクセなのか?
「伊地知(仮名)」と名乗る彼女とは、10分ほどタクシーで飛ばした地元スーパーの駐車場で待ち合わせとなった。ワリキリ額はホテル代別の1万円だ。
「車はシルバーの○○で来るからね。たぶんお兄さんのほうが早く着くかな」
「オイ! 左見てろって言っただろ!」
タクシーで小さなスーパーの駐車場に入る。見渡すと、運転席に人が乗っているのは一台しかない。あのシルバーの車で間違いなさそうだ。けど、どう見ても中に入ってるのは50代くらいの中年おっさんなんだけどな。白髪交じりのメガネ。近づいて見ると、黒いトレーナーに黒いパンツ。この人、絶対オトコだよな…。だが、運転席からこちらに気づいたおっさんは、ドアを開けるようにオレを促してくる。うっ…これが伊地知さんか。
「はじめまして」
次の瞬間、ムワァッと強烈な刺激臭が鼻を突いた。ワキガとタバコの臭いが入り混じったような悪臭だ。
「よく来たね」
一言口にし、オレが助手席に座るのを待つオッサン。腰を落ち着け、その横顔を再度確認しようとした瞬間だった。おっさんの左手がすっと伸び、俺の股間をムギュっと握った。
「あっ!」
そのままチンコをぎゅ〜と掴み、こちらを見てニヤリと笑う。
「あなた、ちゃんとした人ね」
「え?」
「今すぐにシートベルト締めたでしょ?」
「あ、ありがとうございます」ていうか、チンコを握るのやめてほしいんだけど。
「すみません、その手なんですけど」
「…早く2発ヤりたいね」
おっさんがぼそっとつぶやき、車は出発した。勝手に2発と決められてるし。今日の相手からはとんでもない破壊力を感じるぞ。
「テレクラはよくかけるんですか」
「かけるわよ」
「2〜3日に一度とか?」
「そんなもんかな」
「このへんに住んでるんでしたっけ」
「そう。あ、そっち左見といて」
「ここらへんのラブホに…」
「オイ! 左見てろって言っただろ!」
急にオッサンが怒鳴り口調になり、ものすごい形相で睨んできた。こ、怖っ。
「左から車来てない?」
「はい」
「じゃあいいよ」
車は赤信号で止まった。再度おっさんが股間に手を伸ばしてくる。
「好きなんでしょ? セックス。…やらしい」
「すみません、車内では危ないので…」
「…ふん!」
機嫌を損ねたようだ。こいつは予測不能の怪物だ。絶対に精神になんらかの障害がある人だ入ったのは古びた郊外型のラブホテルだった。ホコリ臭い階段をのぼり部屋に入る。
「ここはね、私が10才のころからあるの」
少し寒い。エアコンのリモコンを探して部屋を見渡していると、後ろからおっさんが近づいてきた。財布から運転免許を取り出している。ん?
「どうしたんですか」
「ほら、これ」
「免許ですよね」
無言で俺の目の前につき出してくる。なに? 身分を証明してくれてんのか?
「無事故! すごいでしょ!」
「あ、ああ…。すごいですね」
手ごわすぎる。絶対に精神になんらかの障害がある人だ。コートを脱ぎソファに座ったところで今度は手に持ったガラケーを見せてきた。
「見て見て、猫ちゃんコレクション」
 画質の悪い猫の写真が並ぶ。
「どれがかわいい?」
「どれもかわいいんじゃないですか」
 次の瞬間、おっさんはまたむぎゅりとキンタマを握ってきた。
「…一匹ちゃんと選べ!」
 ほんっとにヤバイよ、この人。
「じゃあ、この三枚目の茶色いコですかね」
適当に答えると、おっさんはこくりとうなずき、満足そうな表情でガラケーをバッグにしまった。今度は、俺のバッグをじっと見つめている。また嫌な予感がするぞ。
「そのバッグなあに?」
「はい?」
「普通にボクの荷物ですけど」
「…やらしい」
「いや、さすがにバッグはやらしくないですって」
次の瞬間、おっさんはしゃがんで俺のバッグの中をガサゴソと探り始めた。おいおい!
「見せて見せて。クスリ入ってんでしょ? ほら見せなさい!」
それはあんただろ!
「すみません、ちょっとそれは勘弁してもらえませんかね」
制止してバッグを奪い返す。おっさんはこちらを振り向きギロリと睨んできた。そして、今度はオレが持っていたスマホを指さす。
「おい! 電話もかけねぇのに手に持ってんじゃねえよ!」
いま俺の目の前にいるのは、ホンモノの二重人格者のようだ。背中がゾクゾクしてきた。
「中断したんだ罰金5千円な? さっさとプレイを終わらせたいが、とにかく部屋が暖まらない。早くシャワーでも浴びないと風邪をひきそうだ。風呂のドアを開ける、覗き込んだ浴槽には2匹の大きなクモが動いていた。不気味すぎる。この状況、ホラー映画か。シャワーのノズルをひねって水が出始めたところで、またおっさんが後ろに現れた。
「あ、あの今シャワーを…」
「おい! シャワーなんて浴びなくていいだろ?」
「いや…」
「浴びなくていいだろ?」
「いや…」
「こっち待たせんのか?」
「あ、とりあえず戻ります」
何をされるかわからない以上、とりあえずベッドに戻るしかない。今度は何にいちゃもんをつけてくるんだ、この人。
「これからやらしいことするんでしょ? なんでシャワー浴びるの?」
「いや、普通は…」
「シャワーなしで2発ヤんだよ!おい!」
 再び激しい口調へと変化する。このおっさん、多重人格か?「いや、そんなにはできないですね」
「今日はいっぱい生で中出ししてもらうからね」
「いや、ゴムだけつけさせてくださいよ」
「ゴム? つけるわけねーだろ、おい!」
 敷かれていた掛け布団をバサっと床に置き、おっさんはオレに布団の真ん中で大の字に寝るように指示をした。セックスってこんなにツライものだったっけ?AVにチャンネルを合わせ、太ももの間におっさんが入ってきた。チンコを雑にむぎゅりと握られ、ひんやりと冷たい感触が伝わってくる。ああ、本当に今回はなにをされるかわからない。恐怖におののきながら、シミのついた天井を見つめてひたすら耐える。よく見れば、だらしない中年おっさんの裸体は腕も太ももも背中も、全身アザとシミだらけだ。
「なにしんてんのよ! おっぱい揉むのよ! ほら!」
おっさんはオレの手を取り、自らの乳を握らせた。
「手が冷たいんですけど、大丈夫ですか」
「そんなの関係ないからさっさと揉みなさいって言ってんの」
愛撫を強要というより、これは暴行だ。今日はマジで命を握られているような気がする。いまは黙っておっさんの乳をひたすらこねるしかない。おっさんはチンコを見つめながらスコスコと手コキを再開し始めた。
「…やらしい」
「…」
「あ〜やらしい!」
完全に彼女のペースでことが進んでいく。しかし、このままシャワーを浴びずに生セックスだけは避けねばならないぞ。
「すみません、やっぱりシャワー浴びてもいいですか?」
立ち上がり、急いで先ほどのクモが蠢くシャワー室に入る。水を出したところで背後に再び気配を感じた。
「浴びるなって言っただろ?」
「いや、でも…」
「中断したんだから罰金5千円な?」
 こいつ、やはり黙って従わないと本当に何を言い出すかわからない。
「すみません。やっぱり大丈夫です」
「終わるわけねーだろ?」
 ベッドに戻り吸引力高めのフ
ェラに移行した。亀頭が生暖か
い感覚に包まれる。
「インド人とイラン人のセック
スって知ってる?」
「え?」
「だから、インド人とイラン人」
「わからないですね」
「あの人たちと昔よくセックスしてたんだけど」
「…はあ」
「インド人もイラン人もゴムはつけないのよ」
「なんでですか」
「バカ! そんなこともわかんないのかよ! オイ!」
マズイ、また始まったよ。
「どっちもアソコが大きすぎてコンドーム入らないからに決まってんだろ」
「…はい」
「じゃあ、ゴムなしでセックスね。ゴムなしで今日は2発!」
 おいおい、ちょっと話が飛躍しすぎだって!
「いや、それは…」
「ダメ! ゴムつけない!」
オッサンの勢いに圧倒され、いくらフェラされてもチンコは立たない。さっさと切りあげることにしよう。
「あの、もう大丈夫です。終わりません?」
「おい!まだこっちはなんにもしてもらってないのに終わるわけねーだろ?」
逃げることもままならず、AVの喘ぎ声を頼りになんとか7割ほど勃起したチンポをあてがい、腰を必死に動かす。が、その努力もむなしく、わずか3分ほどで挿入は断念することとなった。
「…バイトだけど、だからどうした?」
こちらが断念したことがわかると、あれだけ「2発」を連呼していたおっさんも、あっという間に服を着終えてしまった。一緒にホテルを出ようとするも、古すぎて料金の支払方法がわからない。
「この部屋ってどうやって払うんですか」
「わかんないよ」
「…はあ」
「そうだ、さっきの駐車場で見つけたクソババアに聞いてみるか」
おっさんがフロントに電話をかける。無事部屋を出て料金を支払い、ようやく車に乗り込む。どうかこのまま帰らせてくれ。そういえば、急にキレ出す性格のせいで、おっさんのことを何も聞いていなかった。
「ご結婚されてましたっけ?」
「ううん。ずっと前に離婚して独身。そっちは?」
「いないですね、ずっと」
「…やらしい」
この人の「やらしい」が出てくるタイミングは本当によくわからない。
「そういえば、仕事はなにしてるんでしたっけ」
「……」