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コンビニの栄養ドリンクコーナーを思い出してほしい。『オロナミンC』(108円)『リポビタンD』(150円)『ヘパリーゼ』(390円)|。
 ラインナップは、100円から500円くらいの商品が主流なわけだが、最近、こんな高額ドリンクが並んでいるのをご存じないだろうか。
『凄十』(すごじゅう)、1000円。
 値段もさることながら、パンチの効いたこのネーミング。字面の主張が凄いし、怪しい勃起薬の名前みたいだし。
 パッケージの謳い文句も「芯からみなぎる」「先までみなぎる」「精・躰・気」「パワー液」など、超絶ハイテンションだ。
 何なんだこのドリンクは? どれほど凄いブツなのか?
 検証してみよう。さほどに効くというのなら、究極に弱っている人間に飲ませて試してみたい。完全にヤル気を失いゴロゴロ寝てばっかいるような人間だ…となると、あの人種しかいないよね! よし、ホームレスに凄十を飲んでもらおう。どうなるかな? 超絶元気になって社会復帰しちゃったりして。
「おっちゃん、この栄養ドリンクでも飲む?」
 コンビニで凄十を買い、真っ昼間の新宿駅大ガード前にやってきた。それっぽいおっちゃんをよく見かける場所だが…。
 いたいた。街路樹の縁に段ボールを敷いて座り、ぼーっとしているジイさんが。食べかけのカップ焼きそばがあるが、半分以上残しており、食欲がなさそだ。疲れているのは間違いない。行ってみよう。凄十を差し出しながら隣に座る。
「おっちゃん、この栄養ドリンクでも飲む? こうも暑いと疲れるでしょ?」
 怪しいかな? アカの他人がいきなり謎のドリンクを渡してくるなんて…。
「ぼくが疲れたときによく飲むヤツなんだけど。さっきコンビニで買ってきたモンなんで」
「…ありがとう」
 受け取った!ジイさんはグビグビ飲み始めた。苦いとか酸っぱいとかはないのだろう、特に表情は変えない。
「どうすか? 元気出てきました?」
「…んっ、まぁ」
 首をかしげてニヤけている。ヤル気がみなぎってきてるかな? そうだ、オレがそばにいると意識しちゃって自由に動きにくいかもな。ちょっと離れて様子をうかがっていると、ジイさんがカップ焼きそばに手を伸ばした。ほほー、食欲が湧いてきたのか?箸でわさっと麺を掴んだ。けっこう大量にいくんだね。…って食わずに歩道にブン投げちゃったじゃん!?
 空から集まってくるハトの群れ。その様子をニヤニヤ見つめるジイさん…。何この奇行? でもとりあえずテンションは上がってそうなんで、凄十効いてるってこと? おや、今度は寝そべって文庫本を読み始めたぞ。何となく寝る前の読書のような落ち着いた雰囲気で…。 
10分後、ジイさんは完全に寝てしまった。
 どうなんだろうこの流れ、一瞬、効果っぽいものは垣間見えたが…。いや、単純にヤキソバ食って腹が膨らんで眠くなって、残りのヤキソバをハトにあげて寝た、というのが正解か。ビミョーですな。
「うえぁべぁ、あぐがぁがぁ!」
 ジイさんの様子だけで結論付けるのは早過ぎるだろう。もう一人試してみましょう。
 新宿から秋葉原へ移動すると、駅前の電車の高架下で、イイ感じのおっちゃんを見つけた。壁に背をもたれかけて地べたに座り、行き倒れのように両手をだらーっと垂らしている。死んでないよね?
「おっちゃん、大丈夫? えらいお疲れっぽいけど」
「うえぇ? あひぁっ」
 …しゃべれてないし。どんだけ弱ってんだよ。
「これ、元気になるドリンクなんだけど、よかったら飲みます? さっきコンビにで買ってきたヤツなんですけど」
「あぅあとぉ」
 おっちゃんはドリンクを受け取ると、ブツブツうなりながらパッケージを見ている。読んでいるようだ。
「どうぞ、グイっとやっちゃってください」
「…ぁらが、あわぅ」
 蓋を開けた。よしよし、飲み始めたぞ。
「どうですか? 効いてきそうでしょ。じゃあ、ぼくは行きますんで」
 では少し離れた位置から観察するとしよう。高架下を出た先でスタンバイし、様子をうががう。今のところまだ地べたにダラーっと座ったままである。どうなんだろう、やっぱ効果なし?ところが次の瞬間、おっちゃんが体をムクっと起こした。えっ!?
「うえぁべぁ、あぐがぁがぁ!」
 何か大声でうなりだしたぞ! 
「えぅあうがっ、あばぁがぐぁ、あぐわべばぁ!」
 通行人にギョッとされているが、その反応がまた楽しいのか、ニヤニヤしながらさらにうなり続けている。
「あうぅばぁ、がばぐべぇ!」
 凄十が効いてきたのか!?そうに違いない! ていうか、ちょっとコワイんだけど…。
 あっ! おっちゃんが立ち上がった。どこへ行くんだ?食欲がみなぎりすぎたか!
 おっちゃんが向かったのはコンビニだった。もしや凄十をお代わり?ってことはさすがになく、買ったのはカップラーメンである。
 食欲が沸いてきたのだろうか、お湯を入れて高架下に戻ってくるなり、箸を一切休めぬ勢いで麺をすすっていく。この食いっぷり、やはりヤル気がみなぎっているのでは? こんなところで行き倒れなんかしないぞ、ワシは生きるんじゃ、みたいな。
 となると、このあとの行動が見モノだ。新宿のジイさんじゃないが、腹が膨れたんで寝るなんて流れだと意味ないもんな。おっと、おっちゃんがカップラーメンを食べ終わった。立ち上がってこっちに歩いてくる。
 …って待て待てズボンを下ろしだした…。こんな通行人が多い場所で立ちションかい! 大胆過ぎだろ!小便を終えると、高架下には戻らず、焼肉屋のほうへ寄っていく。看板の肉の写真をじーっと見始めた。食欲がみなぎりすぎたか!これからいったい何をするのか。大通りを歩いていくけど…。
おっと、ゴミ捨て場を漁ってるよ。ペットボトルに入ってる残りのジュースを飲んじゃってるよ。よっぽど腹が空いてきたようだ。さらに散歩はつづく。特にアテはなさそうだが、ゴミ捨て場に着くた
び、ごそごそ漁っては飲みかけペットボトルに口をつける。
 さらにおっちゃんは歩く。まだ歩く。さっきまで死体みたいだったのに、このタフさは何なんだ。
気づけば上野に到着していた。おっちゃんがドンキホーテへ入っていく。そして入り口の大型水槽に顔をくっつけた。中で泳いでいるのはウツボだ。まさか食いたいのか!おっちゃんはそのまま動かない。どうやってウツボを取り出そうか策を練っているのかもしれない。
 5分、10分。ようやくあきらめたのか、おっちゃんは水槽を離れ、通りに出るやいきなり一目散に走りだした! うわっ、もう追いかけられないよ!凄十、効く人には効くことがわかりました。