0066_20180917120513b8a.jpg 0067_201809171205145e2.jpg 0068_20180917120515e21.jpg 0069_20180917120517af2.jpg 0070_20180917120518873.jpg 0071_20180917120520dd8.jpg
ずいぶん以前から、都内のあらゆる電信柱にナゾの貼り紙が貼られている。
どれもなぜか、柱のずいぶん下のほうに貼ってあり、それが余計に目をひく不気味な存在だ。
『パートナー紹介ありあけ会』
これ、いったい何なのか。とても機能してるようには思えないのだけど。
貼り紙の電話番号にかけてみた。
「はい、こちら出会い紹介のありあけ会です」相手はロボットみたいな電子声の男だ。いきなりぶしつけに質問してくる。
「年齢はおいくつでしょうか?」
「…32ですけど」
「申し訳ございません。現在、女性は40代しかおりません」 
ちょっ、ちょっと待て。こっちはまだ話がぜんぜん見えてないんだけど。とりあえず何かしら紹介業は営まれてるようだ。ここは話に乗ってみよう。
「ぼくは年上好きでして、40代ぜんぜんオーケーなんで」
ぜひ紹介してほしいと頼みこんだところ、男は「それでは」と説明を始めた。
「こちらの会は登録制になっておりまして」
入会金は1万2千円。登録すると、女性を4人紹介してもらうことができるらしい。で、女性と会うときはその都度4千円が必要で、つまり4人と会えば、結局2万8千円かかるようだ。
「それから、女性と会うときは一応、指定の喫茶店で会ってもらいますので」
「喫茶店ですか?」
「そうです。女性は初めて会う相手に緊張してますので。誠実な対応でお願いします。納得いただけ
るなら、こちらの事務所に一度来てください」
「事務所?」
「高円寺になります。駅北口でお電話をもらえば案内します」ま、行ってみましょう。
1時間後。高円寺駅から電話をかけると、同じ男が出た。事務所までは歩いて1〜2分だという。教えられた道を歩いていく。その途中に、自縛霊でも取りついてそうなどんよりとしたオーラをまとった中年男がキョロキョロしていた。
「仙頭さんですよね?」 
電話と声が一緒だ。この人がありあけ会かよ…。不気味な男に案内された事務所とやらは、オンボロアパートの一室だった。間取りは1Kといったところか。普通に生活感はある。
中に一人のジイさんが座っていた。案内してくれた男よりも雰囲気は明るい。
「どうぞどうぞ、かけてください」
「…は、はい」
「私、ありあけ会の小田孝彦(仮名)と申します」
そう言って、ジイさんが差し出してきた書類には免許証がコピーされていた。
「私、かれこれもう30年以上、パートナー紹介やってましてね。それこそ昔は、結婚相談所なんかもやってたんですけど」
ジイさんは、中年男のほうに目を向ける。
「今はこうしてね。息子と2人でここで生活しながらやってるんですわ」
この人たち親子なの!?2人きりで?
てことは電柱貼り紙は2人でぐるぐる回りながらペタペタやってんのか。
「ええ、まあ広告しないと人が来ませんからね」
驚いた。いわば家内制出会い系業者ってとこか。紹介される女も家族の一員だったりして。オレは入会金を払い、申し込み書に記入した。
「では、仙頭さんが女性と会いたい日時を教えて下さい。女性会員の中から会える方を探しますので。女性とは高円寺の喫茶店で会うことになりますから」
紹介日当日。高円寺に向かうと、駅前で息子が待っていた。喫茶店ルノアールに向かう途中、息子が言う。
「ではこれから紹介しますが、今回は1回目ですので、女性には連絡先などは聞かないようにお願いします」
「はっ?」
「女性は緊張されてます。連絡先交換は、2回3回とお会いしてからお願いします」
今日はお茶だけしろってことなのか。そして2回3回と会を通して会いその都度金を落とせってか。何だか本性をあらわし始めたな。いざ喫茶店へ。そこにはおかめ納豆のような、単なるブスが待っていた。年齢は三十半ばくらいか。
「こちら、ユキさんです。ではあとはお2人で」
息子が去った後、コーヒーを注文し、とりあえず会話を始める。
「ユキさんは、お仕事は?」
「派遣です」
曰く33才で、アパレル関係の派遣をしているそうだが、年齢についてはだいぶサバを読んでそうだ。
ひとしきり自己紹介が終わったあとは、紳助引退話など、たわいもない雑談をしたが、さほど盛り上がらない。というか、盛り上げようという雰囲気が相手に全く感じられなかった。
「ところで、ユキさんは、この会で何回くらい人と会ってるの?」
「うーん、ま、電話がかかってくるのはたまにだから」
「そうなんだ。登録してどれくらいなの?」
「もう7年くらい前ですね」
7年って!マトモに男を求めてる女のわけがない。たまに連絡がきて、都合がよければこうやって男と会ってお茶を飲み、バイト代をもらってるのだろう。1時間半ほどしゃべったところで、彼女が時計を気にし始めた。ま、オレもつまんないからどうでもいいんだけど。
「そろそろ行きますか?」
「そうですね」
「あ、ユキさん、メール交換とかしときます?」
息子の言いつけを無視してさりげなく聞いてみる。
「いいですよ」
へぇ、いいんだ。 その晩、彼女にメールを送ってみたが返信はなかった。ありあけ会の内情はだいたいわかった。女はたぶんバイトで、レベルもショボショボ。さもありなんってな感じだ。
しかしせっかくだから、もう一人くらい女を紹介してもらおうと高円寺駅前に向かう。
「こちら、マミさんです」 
2人目の女は、切れ長目の関取みたいなルックスだった。レベルは前回よりも下がっている。はぁ〜。
「何か飲みますか?」
「そうですね」
「ぼく、ありあけで人に会うの2回目なんですよ」「あ、そうなんですか?」
「マミさんは?」
「私は、まあ、登録したのはだいぶ前で…」
5年以上も前の登録だという。あの親子、古い女ばっか使い回してないか?
「仕事は?」「今はしてないの。たまに派遣に行くんだけど、ほら、最近って仕事ないじゃないですか」だから、今日は小金を稼ぎにきたのかな?
「マミさんは、一応出会いを求めてきてるんだよね?」
「まあ、そうだけど。会で知り合った人とはなかなか続かないのよね」あのね、5年も前に登録してまだうまくいかないなら普通、別の手段を考えるでしょ。
「ここで出会った人と飲みにとか行かないの?」
「私まったく飲めないんですよ」
…ふーん。オレが誘ってくると思って遠回しにノーサインを出してるのかな。心配すんな。間違ってもアンタを口説くつもりはねーよ。今回も会話はさして盛り上がらなかった。例のごとく紳助ネタでお茶を濁し、1時間ほどでお開きに。彼女もメアドは教えてくれたが、メールを送っても返信はなかった。