世の男性のナンパに対する熱意は並々ならぬものがある。ナンパ教室にナンパ代行業ってどれくらい儲かっているのだろうか?運営者に聞いてみた。

世の中には、ナンバを商売の道具にしている人間がいる。例えば、一時期話題になったナンバ代行業。これは「ナンパが苦手の内気な男性」に代わって、ナンバ師が町中の女の子を引っかけてくれるというものだ。段取りしてば、依頼人が指定した女性にナンバ師が声をかけ、女の子を依頼人の待つ場所まで連れてきてご対面。そこでデートの了承を取り付ける。
料金は成功報酬となり、相場大体は1〜2万円程度だった。それ以外では、実話系週刊誌などに派手な広告を打っていたナンパ教室も有名だ。最近テレビなどでも見かける自称凄腕ナンバ師の草加祐介氏が、ナンバのノウハウをレクチャーするというこの教室。1日6時間×2日で2万5040円という受講料の講義に、6,7人の受講者が参加していたというからなかなかの盛況ぶりである。これらナンバにまつわる商売は、業者の数こそ少ないが、常にどこかで存在している。
つまり、一定数の需要があるマーケットには違いないのだ。ところが、最近になって事情が少し変わってきたようだ。商売の宣伝媒体の定番、実話系週刊誌などをめくっても、あまりその手の広告を見かけない。考えてみれば、ナンパという形のないものが商売として成り立つのも金銭的な余裕のある客がいればこそ。この不景気の波に飲まれていよいよ廃れてきたか…と思ったらさにあらず。何のことはない、多くの業者がインターネットに宣伝の場を移していたにすぎなかったのだ。
例えば、ハンターKと名乗るナンパ師。彼もまたマスコミにはたびたび顔を出しているその道の第一人者だが、ホームページ上で従来のナンバ代行業からナンパ教皇マンツーマンの恋愛相談まで、女性のゲットにまつわるあらゆるジャンルの仕事を、2〜4万円で請け負っている。独自のビデオをリリースしたり、本まで書いていることから察するに、相当儲かっているのかもしれない。こうしたインターネット上で宣伝されているナンバ商売の中でも、特に私の目を引いたのが、速見保氏(仮名)が主宰する即効誘惑術なる耳慣れないナンパ法のワークショップだった。
早い話がこれ、催眠術を使ってナンバをする方法を教えましょうというもの。速見氏によれば、即効誘惑術さえ身に付ければ誰でも易々と女をナンバできるようになるのだという。うーむ、実に男心をくすぐるアイデアではないか。私自身、ナンバは人一倍好きな方だがゲット率はイマイチである。もしもそんな術があるのなら、ゼヒ学んでみたいし、多少の出費なら目をつむってもかまわない。
が、そう簡単に会得できるモノではないのか、料金があまりにも高額だった。
1日コースが5万円、2週間コース(全6レッスンが毎週末に行われる)が7万円と、従来のナンバ教室に比べると破格の値段。正直、海のものとも山のものともわからないナンパ法に、ここまでの投資は難しい。それでも、ホームページに書かれた自信満々のコメントは、最新型ナンバ商売というにふさわしい雰囲気を醸し出している。ひょっとすればこのお方、相当儲けているんではなかろうか。というわけで、速見氏に商売のノウハウを伺うべく、取材を申し入れると、こんな返事がかえってきた。
「いやあ、儲かってますよ。1力月先まで予約がいっぱいですからねえ、なぜそんなにお客がくるのかって?ま、とにかく一度、講義に来てみてください。そうすれば理由もわかるはずですから」なんとということは、本当に術が便えるからこそ、この価格でも客が寄ってくるわけか。それとも、術うんぬんではなく、客に高額な料金を払わせるノウハウでも持去基騨わせているのだろうか。
某日、ワークショップの会場である部内・渋谷区のマンションの一室。
28才という速見氏は想像していた以上に若いが、失礼ながらとりたててモテそうなルックスではない。ま、講義の目的からすれば、その方がかえって真実味が増してくる。今回の受講者は、私を除くと計4人。年齢的には、40代2人に30代1人、20代が1人。さすがに、こうした講義に興味を示すだけあり、モテなさそうな雰囲気の男性ばかりである。参加者全員が円卓を囲むように一席すると、いよいよ講義の始まりだ。
まず、速見氏は、即効誘惑術について次のように語った。「女性と会話をするときに、相手がセックスをしたくなるような言葉を散りばめておくんですよ。もちろん、それらの言葉は暗示的なものなので、喋っている内容自体は日常話と何らか変わりがありません。
つまり、相手を知らず知らずのうちにセックスがしたくなる気分にさせていくワケです」氏によれば、テキストに載せられた例文は、計算しつくされた文面で、これを女性の耳元に語りかけさえすれば、相手は催眠状態に陥り、エッチな気分になっていくのだという。本当だろうか。確かに、ソレらしい言葉が散りばめられてはいるものの、個人的には、そんな魔法のような言葉が存在するとは考えられない。
「よく即効誘惑術ば使えないといってすぐにやめてしまう人がいます。でも、そんなに簡単に身に付く技術じゃないんですよ。やっぱり本人の前向きな努力が必要ですしね。ただ、一度身に付けさえすれば必ず効果がありますから」ということは、たとえ失敗しても、誘惑術のせいにはできないことになるのだが・・・。しかし、そんな懐疑心に捕らわれているのは私だけのようで、参加者たちは実に熱心に速見氏のレクチャーに耳を傾けている。
また、速見氏が催眠をかけるのは、女性だけじゃない。彼は、参加者にある種の催眠を施すことにより、ナンバでばもっとも重要な「女性に声をかける勇気」を植え付けているという。つまり、この教室を出れば、どんな場所でも一人で戦えるダフな男になれるというワケだ。確かに、慣れない者にとって、声をかけるときの緊張さえなくなれば、ゲット率も格段に上がるに違いない。
「あなたは、腕が重いと感じていますよね。そのうちに、だんだんと験が開けられなくなります。どうですか?目を開けることができませんよね」4人の参加者たちは、速見氏の言葉に一応、催眠術にかかっているような素振りを見せている。
ま、それを知っていることからもお察しの通り、なぜか私はパッチリと目を開けることができた。これいったいどういうことなのだろう。私と参加者たちとの間には、なにか決定的な違いがあるとしか思えないのだが…。高い金を払うからこそ能動的に学ぼうとするワークショップの内容はともかく、他にもまだ気になる点が残る。なぜ、そしていかにして、この教室が成功を収めているのかということだ。
速見氏がこの仕事を始めた直接のキッカケとなったのは、弟子入りをしていた催眠術の師匠に破門を言い渡されたことらしい。食うに困った速見氏は、それまでに得た催眠術や心理学の知識を生かして、今のワークショップを始めることを思い付いた。
「精神病患者なんかを相手にする本式の催眠療法をやるとなったら、僕程度の経験ではムリですからね。でも、恋愛相談やナンバくらいだったら、応用を効かせれば何とかなるんじゃないかと」
開業する際、有利に働いたのは、速見氏が2LDKの持ちマンションに一人暮らしをしていたこと(両親は別居)だった。ワークショップの会場をダダで確保することができたのである。続いて、パソコンを購入し、宣伝媒体となるホームページを作成。YAHOOといった検索エンジンに登録した。
「すると、だんだん問い合わせのメールが増えてきましてね。メールのやりとりは、無料のカウンセリングという形を採ったんです。失恋やナンバがうまくいかなくて悩んでいる人に、私が学んだ心理学的な根拠をもって解決法を教えてあげました」
なるほど、確かに先生と患者という主従関係でメールのやりとりを続ければ、相手の信頼を得るのは時間の問題である。高い料金の講義に参加してもらうのも、十分アリだろう。ただ、メールだけで相手をその気にさせるのは、かなりシンドイ作業には違いない。いったいどんな内容のメールを書いているのだろうか。
「例えば、失恋に悩んでいる人だったら、相手がどんなにヒドイ女だったとしても、『別れた方がよかったんだよ』ではなく、『じゃあ私が取り戻す方法を教えましよ』と答えることにしてます。だって、彼らはフラレた女性に未練があるから、私に相談して来るワケでしょ。その思考の流れに逆らったら、来るものも来てくれなくなってしまう。ここで気になるのは、5〜7万という受講料だ。ここまで強気な料金設定を取るのも、相当のリスクがありそうだが。
「もちろん、人数さえ集まれば1万円だってかまわないんですよ。でもそれだと、お客のモチベーションが違ってくるじゃないですか。やっぱり、このくらいの金額にしておかないと、ありがたみがないというか、必死に学ぼうという気にならないでしょう」料金を高く設定することで、講義への信頼度をアップさせる。もしくは「お金を払ったんだから元をとらなければ」という心理状態にさせる。こうした手法は、他のセミナーと名のつく商売でもよく見られるが、素材がたとえ自己啓発だろうがナンバだろうが立派に通用するシロモノなのだ。
速見氏の商売が成功している理由を考えてみた。まずメールの段階で、「信じる者と信じない者」という排除選別が行われる。さらに、信じるとなった人間には、高額な料金というハードルを儲けておく。これを乗り越えた人間だけを相手にするのだから、必然的に講義もスムーズに運ぶ(もちろん、講義の内容や効果は人それぞれなのでここでは問わない)。本人が意識している・いないにかかわらず、ウマイ具合にそうした連鎖が働いていることは否定できないだろう。では、速見氏がどれくらい儲けているのだろうか。

まず1カ月の平均売上は約40万円。対して、支出はインターネットの有料広告が6万、電話代が2万円、コンピュータ購入時のローンなどを含めたその他の雑費が2万。純粋な手取りで約30万円が懐に入ることになる。講義は月に3回しか行わないんですよ。
要するに、僕は、ひと月に3日しか働いていないんです。しかも、趣味の延長みたいな仕事ですしね。それで30万なら悪くないでしょ。悪くないというより、もう十分過ぎるほどだと思うが、いかがなものか。それにしても、世の男性のナンパに対する熱意は並々ならぬものがある。
「素人をひっかけて一発ヤリたい」という気もちは皆同じなのだ。もちろん、ナンバを商売に転化させるにはそれなりのアイデアとスキルが必要だが、まだまだこのジャンル、開拓の余地アリと見た。我こそはというナンバ師、その腕前を一度生かしてみたらどうだろうか。