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ID&パスワードが1件5千円。それほどの大金を出しても、ヤフオク詐欺には十分に旨味があるようだ。しかも、その手口は以前に比べてはるかに巧妙である。自宅のPCを使ってネット詐欺を働けば、すぐ警察に突き止められるのは今も昔と同じ。そこでかつては、ネットカフエや漫画喫茶のPCからアクセスするのが基本だった。
「けど、それだと近くに店がなければアウトですからね。最近は、防犯カメラも増えておりますし。そこで、僕はトバシのエッジを使うことにしているんです」
エッジとは、ノートパソコン用のネット端末である。自宅でも喫茶店でも、電波が届く範囲なら、いつでも利用可能。この《トバシ版》がアングラ掲示板などで売られているのだ。回線の名義が架空なら、バレようがない。
「他にも、ウイークリーマンションを借りる連中もいますね。近所から出る無線LANの電波を拾って、勝手にアクセスしちゃうんです」無線LANとは、インターネットのデータのヤリトリを、電波で行うシステムのことだ。使用されるモデムの種類によっては、範囲をカバー。マンションの隣室や、住宅街の隣家に届いてしまうため、以前からセキュリティが問題視されてきた。それが現実に詐欺師たちに悪用されているのだ。こうした細心の注意を払う一方、連中はド派手なインチキ出品を企ている。デジカメにパソコン、プラズマテレビ。B氏の場合で言えば、一度に1週間で50件ほどの偽商品を出品しているという。見本に使う写真は、実際に自分で購入した商品を、畳の上で撮影するという手の込みようだ。「ネットで拾った写真を使うと、いまいち真実味にかけるじゃないですか。やっぱり、汚い床の上とかで撮影するのが、一番リアル感を生むんですよ。買った商品?写真を撮ったら買取屋行きです。70〜80%で引取ってくれますよ」ところで、ヤフオクには、出品物に対する公開質問コーナーがあるのをご存知だろうか。商品はどこで購入したものか。個別の識別番号は控えられているか。保証書は同封されているか。疑問を感じたら、誰でもメールを送れるシステムだ。が、詐欺師たちは、こうした質問を逆手に取り、偽装工作に箔をつけるのだから始末が悪い。B氏は言う。「質問に対しては、丁寧に返事を書きつつ、さりげなく自分の職業を役人とか銀行員、行政書士なんてフカしとくんですね。「公務員なので5時までメールは送れません」みたいな。人は肩書きに弱い。ネット上のヤリトリならなおさらだ。ただ、こんな細工を施していたら、真のID取得者が異変に気付きそうなものだが。「ログインしたら、ワヶのわからない出品物がゴッソリ。そいうときは仕方ないので捨てます。けど、ヤフオクは出品期間も自由に設定できるので、それほど心配してません」もはやユーザーに手だてはないか。いや、この時点ではまだ、詐欺師を見抜く可能性が残されている。金銭の支払方法だ。十数万もする高額商品で、先払いの銀行振込しか認めないような相手はどう考えても怪しい。宅配便の代引きなら安全なように思えるが。「僕は佐川急便のE-コレクト)を使ってますよ。もちろん、本物のパソコンは送りませんけど。箱の中には、古本屋で購入した映画のパンフレットを入れておくんです」むろん、映画のパンフには意味がある。通常ヤフオクは、一つのIDで複数の商品を出品すると、そのすべてを閲覧できる仕組みになっている。B氏のラインナップはこうだ。一眼レフデジカメ10万円ノートパソコン15万円ワイドテレビ20万円パンフレット2千円映画前売りペア券3千円出品状況は、パソコンの落札者も同時に把握しているのが常。つまり、
相手に「もしかして、配送先を間違えてないか」と思わせるのだ。
「といっても、そのまま放置しておいたら警察へ駆け込まれかねないので、コチラから謝罪のメールを送るんです」パソコンは誤って別の人に送ってしまいました。すぐに取り返してソチラヘお送りしますから、あと数日だけ待ってください。今回は私の不手際で大変ご迷惑をおかけました。勝手ながら料金を1万円割り引きさせていただきますので、銀行の振込先を教えてください。佐川に依頼した代引料金がB氏指定の架空口座に振り込まれるまで1週間。その間、相手をなだめすかし、警察に訴え出るのを防ぐそうだ。
「毎日、きちんと連絡さえしておけば、いくら腹を立てても、警察にはなかなか駆け込めないものですよ。『財布をなくした』程度ならともかく、詐欺に遭ったと訴え出るのは、かなり勇気が必要ですからね」かくして架空口座に振り込まれた大金は、パチンコ屋の主婦に声をかけ、1回につき、3万の謝礼で下ろさせているそうだ。
「ネットにどんな警鐘が鳴らされようと、《欲しいもの》《安いもの》につられて、人の頭は回らなくなるんですよね」詐欺師集団から完全に身を守る術は、今のところなさそうだ。