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不動産屋で物件を見て回ると、相場の家賃より安めの部屋を紹介されることがある。同じ地域・間取りなら普通8万円以上はするのに、なぜか6万円を切っていたり、敷金礼金が0だったり。いわゆる『訳アリ物件』だが、気になるのが、その《ワケ》である。いったいどんな理由で家賃が下げられているのか。『単身者用+トイレ風呂付』という条件で都内の不動産屋を調査してみた!
『物騒な感じだけどいいですか?』まず最初は新宿区某所の物件から。都心に近く、金持ちもよく住んでいる住宅街だ。家賃は相場より1万円安い。不動産屋の兄ちゃんは言う。
「ちょっとお隣が物騒な感じなんですよ。事務所と言うんでしょうか…」
それって、もしや暴力団?が、たどりついた物件は、ごく普通のアパート。お隣さんも物々しさはなく、ベンツも停まっていない。なんなの?
「私も詳しいことはわからないんですよ。特に問題があったわけじゃないんですが」
具体的なことがわからないだけ余計に怖い。ちゃんと調べといてくださいよ。『変なシミじゃないですから』池袋の目と鼻の先で風呂付き5万円は格安。なのに入居者が決まってないのは何故だ?
「老衰で死んだ人がいるの。でも1日で見つかったから」
亡くなってすぐに発見され、臭いが染み込んだりといったことはなかったそうだ。部屋はキレイなワンルーム。日当たりもいい。と、機先を制するように、おっちゃんが床を指差して言う。
「あっこれ、変なシミじゃないですから」
見れば、こぶし大の黒いシミが。言われなければ気づかなかったのに、想像しちゃいますよ。老人の床ズレの跡とか、孤独死だとか、そういうことを…。
『ワケあってあまり紹介してないんですよ』
部屋そのものはキレイで日当たりもよく、何の問題もない。これで6万ならアリだ。なんで安いんですか?
「うーん、具体的にはよくわからないんですが…。前に住んでた人がね、たまにノックの音がするんですって。コンコンって。でもドアを開けても誰も…」
ちょ、ちょ、ちょっと待った。何ですかそれ。
「よくわからないんですけど。それであまりこの部屋は紹介してないんですよね」
怖っ。こんなとこでピンポンダッシュするヤツがいるとも思えないし、逃げれば外の鉄製階段の音がする。ほら、普通に歩くだけでダンダン響くし。
「13階段なんです。《出る》可能性が高いって言われてます」
なんてこったい!
『結構うるさいです』周辺がうるさい物件は、都内では当たり前。繁華街や大通りに面した場所ぐらいで家賃は下がらないらしい。が、ここはやや安め。理由は物件に近づくにつれ明らかになった。
【カンカンカンカン!】西武池袋線の踏み切りが目の前にあり、四六時中、警報機が鳴っているのだ。「電車の音だけならまだしも、踏み切りはねぇ」
そりゃそうだわ。でも終電さえ過ぎれば音は止むのだから、睡眠には問題なさそうだが。
「隣に音楽やってる人が住んでるので。防音サッシは付けてますよ」
うーん。踏み切りと音楽の両挟みか。どれほどの騒音か、住んでみなきゃわからん。
『入るときが大変なのよね』
内見をお願いすると、不動産屋のおばちゃんが一瞬顔をこわばらせた。
「あそこは入るときが大変なのよ」
アパートは、築30年ぐらい経ってそうな古い外観だった。階段下の草むらに羽虫が大量に飛んでいる。「やだもう!これ夏になるとすごいのよ、ああ、もう!」
頭を振り、手足を振り回してもがくおばちゃん。後ろに続く俺にも虫が寄ってくる。うわっ、なんじゃこれ、クソックソッ!こんなもん草刈りしてしまえばいいだけのはずだが、大家さんの趣味でしょうか。ま、これぐらいの虫なら。ゴキブリじゃあるまいし。
「こういうとこはゴキブリと共存が当たり前よ」
…失礼しました。
『苦情が出てるんですよ』何やら住人から苦情が出て、大家も不動産屋も対処に困っているという物件だ。いざ部屋を見ても周囲を見渡しても、苦情の理由はよくわからない。小ギレイだし静かでいいとこじゃないの。
「それが、夜になるとここで歌う人がいるんですよ」
「ここって?」
「この廊下です」1階の共用通路。つまりドアの真ん前。わざわざここにやってきて大声で歌うおっさんがいるらしく、何度追い払ってもまたどこからともなく現れて歌いだすとか。怖すぎる。なんでこんなとこで歌うのか。声がよく響くの?こんな理由、住んでから知ったらショックでかいだろうな。とにかく安めの部屋。と、しつこく粘ったところ、渋々紹介された。訳アリ物件の最右翼、自殺者の出た部屋だ。家賃を下げ、敷金をひと月減らしても、入居者は未定のまま。前の住人は男性の一人暮らしで、自殺方法は大家さんしか知らないそうだ。
「遺体の発見が早かったので、臭いは酷くなかったですよ」
単身者用マンションでは、遺体が放置され、腐乱することがある。近隣住人が異臭に気づいてカギを開けたら死んでいた、というパターンだ。今回はそれとは違うので、まだマシと言え…るのか?にしても部屋はおしゃれだし、かなりキレイだ。わざわざこんなとこで…合掌。
泣く子も黙る世田谷区。下北沢のそばで5・5万は破格だ。が、アパートの階段前に立つや、案内の兄ちゃんが声を静める。
「静かに上ってください」靴音も立てず、そろりそろり。何をそんなに恐れとんのよ。
「下の階の方が神経質でして」
「神経質?」
「しっ、静かにしてください」
んなアホな! 普通にしゃべってるだけじゃん。これじゃテレビもまともに見れんやないの。帰り際、わざと階段をドンドン駆け下りてやったが、下の住人は出てこなかった。留守か。
『地元の人は気にしないんですけどねぇ』
「地元の人は気にしないんですけど、ヨソから来た人は敬遠される方もいますねぇ」
いったい何のことかと思えば、墓地のすぐ隣の物件だった。
裏寂れた感じではなく、ちゃんと管理の行き届いた都心の霊園。部屋の窓から墓は見えないから、居間でくつろぐぶんには何ら問題はない。ただ、夜、帰宅するときも墓。朝、出かけるときも墓。必ず目に飛び込むのだから意識しないわけにはいかない。気の弱い人には不向きだけど、個人的にはのどかでオススメだと思いました。
歌舞伎町でワンルーム7万円台は掘り出し物。なのに以前の住人は1カ月ぐらいで出ていったそうな。「ここなんですけどね」
案内のおっちゃんがラブホの敷地内を歩いていく。ここを通らなければ家に入れないらしい。さすが歌舞伎町。いや歌舞伎町でもこんなのは珍しい。ラブホを抜けると、想像を絶するマンションが建っていた。四方をビルに囲まれ、日当たりは絶無。まるで香港の貧民窟だ。洗濯物を干してるが、乾くのか。
「ケータイの電波が入らないんですよ」
それは厳しい。にしても都会のど真ん中に、電波空白地帯があろうとは…。1カ月住めただけでも立派なもんだ。
『荷物置き場にちょうどいいです』
驚愕の家賃1万円。おそらく都内最低価格と思われるため、例外的に風呂ナシ物件を覗いてみた。
「ここは住むというより荷物置き場にちょうどいいです」ずいぶんな言われようである。他の部屋にはがっつり住んでる人もいるだろうに。共同玄関、共同トイレ。どくだみ荘のような共有部分を通り過ぎ、目的の部屋へ。カギはない。新たな入居者がカギを付けるかどうか決める仕組みらしい(どんなシステムだ!)。ガラリと戸を開けて唖然。いまどき三畳ってあんた!さすが築50年。地震が来た
ら一発で終わりのような気もするが、見方を変えれば頑丈なアパートなわけで、荷物置き場にはもったいないですな。