1_20191127212359604.jpg2_20191127212400fb8.jpg3_20191127212402264.jpg4_2019112721240378d.jpg5_20191127212405fe1.jpg6_2019112721240660b.jpg昨年の秋口、取材でお世話になった某政治家秘書が、ねるとんパーティに行かないかと声をかけてきた。予定していた知人が急用とかで、
「金の心配はいらない。普通じゃ入れない集まりだから話のネタになるんじゃない?」
場所は成田にあるシエラトンホテルのスウィートルーム。確かに僕などお呼びじゃない。20万の費用を払って参加した男たちは、政治家や医者、弁護士など、いわゆるエグゼクティブの連中だ。対する女性陣は、全員が現役のキャンギャルである。美人でスタイル抜群なのは一目瞭然だが、驚いたのは、彼女たちが援交を前提に集まっていることだ。証拠に、少し酒が入るとあちらこちらであからさまな値段交渉が始まった。すっかり圧倒され部屋の隅でぼんやりしてると、タレントのユースケサンタマリアに似た30半ばの男が話しかけてきた。外国製らしいスーツを身にまとい、(気さくな感じで自己紹介をする。彼、西村朋彦(仮名)は、首都圏の地方都市で開業する産婦人科医とのこと。
僕がフリーライターだというと興味を持ったようで、名刺交換をしてひとしきり最近の風俗について語り合った。そのうち僕を誘った秘書が背の高い女性を連れて「じゃあな」と消え、西村も100万の札束で一番の美人をゲットし自室に連れ込んだ。女の子が満足するだけの財力がない僕は、1人わびしく部屋に戻るしかない。
その後、医療関係の記事を書くため西村医師に連絡を取り、何度か会った。共通の友人がいたことで一気にうち解彼はヒミツを打ち明けてくれた。
「絶対、記事にしてもらうと困るんだけど、実は僕、診療風景を盗し撮りして売ってるんだ」
聞けば、自ら診察台や待合室にCCDカメラを仕掛け、気の置けない仲間に金を取って見せ、さらに1本5-10万で売りさばいているのだという。確かに政治家が強制ワイセツ事件を起こし、警官がチカンで捕まる世の中ではある。が、患者が命を預けるしかない医者までが立場を悪用して金儲けをしているとは・・・
「いやぁ、僕だって最初からこんなことやろうと思って医者になったわけじゃないよ。じいさんや、オヤジを見てたから自然に自分も産婦人科医になろうと思っただけ。更衣室にカメラを仕掛け看護婦の着替えを覗くだけさ」
西村は、現在、関東近郊都市にある産婦人科病院の院長をしている。父方の祖父が開業した西村医院は信頼が厚く、町内に住むほとんどの人の生誕地だという。
彼は、小さいときから医者になって稼業を継ぐのが当たり前だと思いながら育った。
小・中堂洗校の卒業文集にも、ためらうことなく〈将来の夢は医者になること〉と書いたらしい。
勉強では常に学年のトップクラスに君臨する。だからといってガリ勉だったわけでもなく、中学・高校時代はテニス部に所属して女の子たちに騒がれた口だ。初体験を高1の夏休みに同級生と済ませたというから、早熟な方といっていいだろう。
一浪して私立の有名医学に進学し6年で卒業。母校の大学病院でインターンとして働き、難なく国家試験にパスする。実家の病院に入って〃若先生〃と呼ばれながら実戦を積み、3年前、父親が引退したのを機に院長に就任。と、人当たりの良さで患者に好かれ、少子化が問題になる中、入院施設を増築するほど経営は上向きという。
まったく絵に描いたようなサクセスストーリーである。何が不満で悪の道を歩み始めたのだろう。
「最初は、ほんの出来心。盗し撮りビデオって流行ってるじゃない。でさ、看護婦たちの着替えぐらいならオレにも撮れるんじゃないかって軽い気持ちでCCDカメラを仕掛けてみたんだ」
秋葉原に出かけ、時計に偽装した超小型カメラを購入し、更衣室の壁に取り付けた。
都合のいいことに、更衣室の隣は院長室である。彼は8人いる看護婦が着替える様子を小型モニターで受信しては楽しんだ。
職業柄、様々な女性の局部を飽きるほど見たり触ったりしているせいか、裸そのものより着替える姿に異様なほど興奮を覚えたのだという。
「例えばさ、性格も控え目だし、私服も地味な25才のコがいるんだけど、彼女、下着が派手なんだ。想像じゃ白とかベージュを付けてそうなのに黒や紫のパンティを履いてて、豹柄なんてときもある。そういうの見るとゾクゾクきちゃうんだよな」
味をしめた彼は、ビデオに撮り始めると同時に、更衣室にマジックミラーを取り付ける。不審がられると思いきや、年頃の看護婦たちは全身を映せる鏡に大喜び。
「診察ビデオを撮ったら全部オレが買ってやる」
自分で楽しんでいるだけならまだよかったが、西村は大学の悪友たちと飲んだとき、着替えビデオのことをポロつと話してしまう。
「白衣の下にレースのパンティはいてたりするんだから、すつげぇ興奮する」
医者という職業は、毎日、極度の緊張にさらされるせいか、変態が多いというのが彼の見解。お説どおり、その場で彼を羨む声はあがっても、医者の倫理を説くような人間はいない。
「お前、産婦人科だろ。着替えなんか面白くないから、診察風景を撮れよ。そういうビデオだったら
オレが買ってやるよ」
大学病院に勤務する外科医の坂下(仮名)が言った。なんでも、世の中には妊婦マニアなるジャンル
が存在し、彼もその1人とか。もし生の診察風景が盗し撮りできれば、1本5万円でも買うという。
西村にとっては日常だが、他人にとって妊婦は金を出しても見たい対象らしい。初めてそのコトを知った彼は、悪友の言葉にそそのかされ、やってみようかなと思ってしまう。
「お恥すかしい話ですが、うちの看護婦がクスリを横流ししてるらしいのです。憶測じゃ話になりま
せんので、ビデオに撮って証拠を押さえたいんです」
西村の言葉を疑う様子のない店員は、夜間撮影なら赤外線CCDカメラが安くて確実だと薦めてきた。確かに証拠撮影なら、それで十分だが、赤外線では色が出ない。夜も常夜灯は付いているのでと苦しい言い訳をしカラーCCDを購入した。
その足で病院に戻り取り付ける。場所は考えてあった。診察室のスピーカだ。胎教のため、BGMとしてクラシック音楽を流しているので、診察室の天井にはBOSEのスピーカが2台セットしてある。その中に隠せばいい。
翌日、午前中の診察を終えた西村は、カギを閉めた院長室で受信した映像を見た。と、そこには、患者の顔や突き出た腹、触診する局部までが丸映しになっていたのである。
「夜、僕の部屋に来てもらって見せたんだけど、坂下のヤシ、目の色変えちゃってさ。撮ったビデオ、全部売ってくれって言うんだ」
坂下はルイヴィトンのサイフから10枚の万札を取り出してよこした。
ビデオの存在がヨソに漏れれば、撮った西村だけでなく、買った側の身も破滅だということは重々承
知している。その上で、誰にも見せない、話さないことを条件に引
き続き盗し撮りする約束を交わす。
「そりゃ悪いことしてるって自覚はあったけど、盗し撮りするって行為自体が刺激的だったんだ」
西村医院の営業時間は朝9時から午後の6時まで。昼休みを除いても8時間に及ぶ。もし1日中録画しようと思えば、3時間テープに3倍で撮るしかない。いくら評判の病院だといっても、妊婦や婦人科の客がひっきりなしに押しかけるわけでもなく、午後ともなれば外来より入院患者を見回ることの方が多い。患者より、無人の診察室が映る時間の方が長いのである。
そこで西村は、編集機材を買い込み、ビデオの編集を始める。撮り溜めたビデオを、坂下がカットして、まとめていくのだ。
「西村、これって絶対、凄いよ。こんなのオレだけで見ちゃもったいなくて。実は同僚に同じ趣味のヤシがいるんだけど見せちゃダメかな。もちろん、そいつだって医者だし立場はわきまえてる。その辺はオレが責任持つからさ」
セルビデオショップには、産婦人科病院の盗し撮りと称して診察台で股を広げる女性の姿を撮ったビデオが何タイトルも出ている。が、それらはヤラセだ。婦人科の診察台でそれらしく撮ったものもあるし、中には現役の医者が診察の真似ごとをしている作品だってあるかもしれない。だが、モデルだけは仕込みなのだ。確かに盗し撮り流行りで、地方局の女子アナや、デビュー前のタレントが映っているビデオまで出回っているという。だが、世の中には絶対に表に出ないものが歴然と存在する。
「ビデオが表に出るんじゃないかって心配はしなかった。だって、運命共同体の坂下が怪しい人間を
仲間に引き入れるはずないからね。倣慢に聞こえるかもしれないけど、僕たちのように地位とか名誉を気にする人種は、やっていいことと悪いことをわきまえてるんだ」
一般人の常識からみれば、婦人科医という職権を乱用して盗し撮りするなどもっての他だが、彼らにとって、ビデオを撮るのはやっていいこと。悪いのは、それを他に漏らして自分たちの地位を脅かすことと言う。
ここでその是非を間うても仕方ない。ともかく、西村が月に1度、2本のビデオを坂下に送ると、翌日に5万が振り込まれるというシステムが確立したのである。最初に他の悪友どもがかぎつけ、さらには医師仲間や知り合いの弁護士、町内会の会長に取引先の社長などが加わったのである。
全員が金に余裕のある、ときには西村と同等か、またはそれ以上にダメージを被りそうな社会的地位のある人物ばかりだ。
「医者もそうだけど、弁護士とか社長も言っちゃいけないことが多い仕事だから口は堅い。僕にして
みれば2本だろうと10本だろうとダビングするのはさして苦労じゃないから、それで小遣いが稼げればそれもいいかなと」
そうは言っても限度がある。さすがに20人になったとき、このまま広がっていくのはマズイと、みんなで話し合いの場を持った。結果、今後は誰かが抜け、欠員が生じたとき以外は人を入れない会員制にすること。また、出回るビデオの本数を押さえるため、月に1度、ホテルのスウィートルームを借り切って鑑賞会を開く形に改めた。
「1人でビデオ見ながらオナニーするのもいいけど、味気ないんだってさ。だから、同じ趣味の人間
が酒を飲みながら、あれこれ言い合って観賞しようじゃないかつてことになったんだ」
西村が1カ月間撮り溜めたビデオを持参し、会員は5万円の参加費を払って観賞する。それぞれ忙しい人間ばかりだから、そうそう全員が揃うことはないが、共通の時間を持つことで互いの結束が固
まるというメリットもあった。最初の鑑賞会は去年の春に開かれた。集合したのは担人。まず、最初に乾杯して簡単な自己紹介をすると、いよいよ西村のビデオが再生された。
西村は、妊婦好きな彼らが本当は何を見たいのか、そこで初めて知る。いままで診察台で開脚する
局部ばかりに重点を置いて編集してきたが、そんな単純なことではなかったのだ。