0186_20190425162718cfc.jpg 0187_201904251627196f0.jpg 0188_201904251627216ef.jpg 0189_2019042516272255b.jpg 0190_20190425162725e79.jpg 0191_201904251627288a3.jpg 0192_20190425162730b11.jpg 0193_2019042516273368e.jpg当時しがない学生だったオレは、新宿歌舞伎町で受晶った1枚のビラに興味を持った。
「ダダで旅行をしながら、アルバイトしてみませんか」
当時はバブル景気で、旅行はまだ金持ちの道楽でしかなかった。じゃあ、このビラはいったいどういうことなのか。問い合わせてみると…
「フィリピンのマニラでルイヴィトンのバッグを買い物して欲しいんだよ。買ったら、現地にいるウチらの仲間に渡すだけでいいから」
ルイヴィトン?なんだソリャ。
オレがわからなかったのも無理もない.日本ではまだブランド品ばかりかDCブランドブームすら来ていなかったのだ。しかし、業者によれば、このカバンが金持ち連中の間でバカ売れしているらしい。売れば結構な儲けが見込めるという。
まったく知らない世界の話でピンと来なかったがオイシ過ぎるバイトではある。航空券と3泊分のホテル代がダダになって肝心のバイト料が3万円。日給1万円はかなりデカイ。なんてつたって、買い物するだけでいいんだからやらない手はないだろう。さっそく、先方に言われるままにパスポートを取って事務所へ航空券を取りに行くと、待っていたのはヤケに派手な格好をした中年のオッサンだった。
「ルイヴィトンってのはね、これ」
目の前に差し出された一個の茶色いハンドバッグ。
「このバッグ、いくらすると思っ?」
「2万…ぐらいですか」
オッサンは笑っていた。聞いて信じられない表情を浮かべるオレを見ながら、「オマエにはわからんだろうけどな」と言いたげな顔で
実際のバイトは、こんなに簡単でいいのかというほど、楽勝だった。日本語の達者な現地のフィリピン人担当者から金を受け取り、マニラ市内に3軒あるルイヴィトンのショップへ直行。あとは観光客を装いながら指定された商品をガンガン買って、ホテルで待機している担当者にまとめて渡す。全部で約300万円分ほど買っただろうか。
聞けば、どうやらオレ以外にも、買い取り役の日本人バイトを雇っていたらしい。相当、実入りのイイ商売なんだろう。だったら、自分でできないものか。とは思ったものの、そこはフツウの大学生。ノウハウなどあるはずもなく、ダダで行けたことを無邪気に喜ぶのがせいぜいだった。
バブル経済が円高によるブランドブームを連れて到来したのはそれから3年後のこと。ようやく世間がやれグッチだ、シャネルだと騒ぎ始める。ほんのちょっと前までは金持ちにしか許されなかったルイヴィトンは市民権を獲得しつつあった。史上空前のブランドブーム。新卒で入った旅行会社を3年勤めて辞めたオレの目に映ったのは、ルイヴィトンやシャネルを競って買い求める女であり、それを彼女らに買い与える男たちだった。ふと、そんなとき、ある考えが浮かぶ。
ブランドでひと儲けできないか。もちろん、捕まりたくはないから、サギではなく、マトモなやり方で。
旅行業で培った知識と過去のバイト体験からふと思い付いたのは次のような方法である。
まず、広告を打って客を募る。
それから、テキトーな旅行代理店でフリーのパックッアーを申し込んでもらい、目的地へ。現地では
それぞれの空いた時間でショップを回らせ、こっちが指示したブランド商品をクレジットカードで購
入、日本へ宅配便で発送(あるいは手荷物で帰国)させる。
あとは客から商品を受取り、問屋に売って得た金から、こっちのマージンをさっ引いた額を報酬として客へバックする。商品はニセモノじゃないので、法律に抵触しないどころか、皆が儲かる。問題は、どこで何を買わせ、買った商品をどうさばくかだ。さっそく都内にあるブランド品専門の問屋を当たり、あれこれ尋ねてみる。シャネルやプラグ、グッチ、エルメスなども人気はあるが、問屋にしてみれば確実に売れてくれるヴィトンをいちばん欲しがっているという。
ま、素人目からすれば、問屋が見も知らない人間から買い取るのかと思うかもしれないが、心配無
用。三越や伊勢丹などの有名百貨店は直営店を持っているので参入はできないとしても、丸井や似たような洋服屋に卸している問屋なら、個人でもたいてい買い取ってくれるのだ。
およその事情を掴んだオレは、一路フランスへ飛んだ。オレが3年前にマニラで買った価格とほぼ同じ、日本価格の6割ほどで売られていたのだ。すなわち、現地で大量に買い付けて、問屋にさばくだけでも、十分差額が出るのがわかったのである。
店に入ってからいかに怪しまれずに、大量の商品を買い込むか。こればっかりはもう客個人の力量に任せるしかない。一応、こちらの大まかな希望商品はあらかじめ伝えてあるのだが、さすがにリストを見ながら「アレとコレと…」などと言っているようじゃもっての他。本当にみやげを物色して買っているみたいに、1時間も2時間もかけて買ってもらわなきゃダメだ。
どの客にとっても、目標はカードの限度額ギリギリの150〜200万円。だいたい100万以上買えば、旅行がダダになると言ってあるから、皆必死だ。しかし、人間ってもんはやはり平等にはで
きてないらしく、上手い人間なら、本店で買えるところを、下手なヤシは満たないうちにストップを食らっていた。
また、問題は店側の事情ばかりではない。敵は自分の中にあったりするのだ。近しい記憶では、サチコという主婦。この人には何度となく買い付けに行ってもらったのだが、行く度に自分が欲しいモノばかり買ってしまい、結局カードを使えなくなってしまった。