9月に入った瞬間、キッチリ
と涼しくなり、ガラッと秋にな
りました。季節の変わり目、体
調など崩してはいませんか?
町田足土です。
さて、今月も舞台は高田馬場
のルノアール。編集長と打ち合
わせ中でございます。
「夏も終わったな。町田よ。今
年の夏の援交ライフはどうやっ
たんや?」
「まぁそうですね。いろいろな
出会いがありましたよ。可愛い
コも多かったですね」
「……なんや? なんか淡々と
しとるなぁ。お気に入りの援交
娘とかできんかったのか? 『こ
の子はキープしとかな!』って
思うような美少女とは出会わん
かったのか?」
「……う〜ん、そうですね。最
近はキープしたいって思う子は
いないですね。以前はいたんで
すよ。そうそう、この連載で会
った子ですよ。去年の春(
16
年
6月号・『今年のエンコーデビ
ューガールはどんな感じなの
か?』)に会った子で」
「あれか! 前田敦子似の
18歳やろ! スクール水着を着せて一晩2万円でヤリまくってた子や!」
突然、大声で叫ぶ編集長。ここは高田馬場のルノアール。もう死にたい。
「……まぁ、そうですね……。あの子は会う度にハメ撮りもしましたし。ハメ撮りの動画フォルダも
10個はこえてましたよ……」
そう言って、窓の外に視線を送る。そう、あの子。名前はきょうこちゃん。すごく可愛くてピュアで良い子だったんだよね……。ハァ〜。
「なんや町田、遠い目をしよって。当然、その子とはもう会ってないんやろ? 忘れられない思い出なんか?」
「……ですね。まぁ、アレはボクも……恋をしていたんじゃないかって思ってますよ」
センチな気分でそうつぶやく。読者のみなさんからしたら、「エンコー女に恋? 町田もとうとう狂ったか?」と思われるかもしれません。でも、本当に年甲斐も無く〝恋〞しちゃってたんですよ、ボカァ。
すると編集長、飲んでいたアイスティーのグラスを、コトリとゆっくりテーブルに置きながら言いました。
「それ、エエやないか。エンコーのカリスマ・町田が恋したエンコー娘。その記憶を、裏モノに記録しとこうやないか! 題して『キープの恋』や! 秋は失恋の季節や。その失恋話、たっぷりと書いたらええんや!」
…え? エンコー娘と別れて、心傷ついた話を書く? 18歳の少女と42歳のオッサンのエンコー失恋物語を? 自分で?大丈夫ですか? ボク、頭おかしいと思われないですかね?滑稽すぎやしませんか?
「大丈夫や。責任は全部俺が取ったるわ!」
この場合の責任って、一体なんなんでしょう? どう考えても正気の沙汰ではございません。
……とは言え、実は白状いたしますと、ボクのメールアドレスに読者の方から「あのスク水のきょうこちゃんとはどうなりましたか?」という質問メールが数通来ていました。長くこの連載を読んでくれている読者の中には、気になっている人もいることでしょう。
アレから約1年経ちました。ここらへんで、あの子とのメモリーを再生してみるのも悪くないかもしれません。今回は、秋の特別編ということでご容赦ください。
時計は、2016年の6月まで遡ります。
さて、4月に「2016年のエンコーデビュー娘を探す」という企画で会った18歳のきょうこちゃん。新潟から東京に出てきたばかりのピュアピュアガールです。
一度会ったあと、キープすることに成功し、会う度にスクール水着を着せて、泊まり込みで複数回セックス。その度にハメ撮り動画をガンガン撮っておりました。しかも、会ってから3回目には「町田さんのこと好きになっちゃったら、もう会わない方がいいんですかね……?」というある意味〝告白〞までされ、ボクのハートは完全に奪われちゃったのでした。
黒髪おかっぱ。見た目は中学に見える合法ロリ。しかもピュアな性格で、ゴハンを奢るとものすごい笑顔で喜んでくれるのです。もう心が洗われちゃうのです。ハイ。
そうやって1カ月に1回くらいのペースでお泊まりを楽しんでおりました。もうきょうこちゃんはボクに完全に心を許していて、本名からツイッターのアカウントまで教えてくれるまでの仲になっていたのです。そんな……ある日のこと。きょうこちゃんから、ラインが届きました。
すでにただのエンコー娘とは一線を画す存在になっていたきょうこちゃんとは、毎日「今日はパスタ食べたよー」「このツイート面白いですよー」といった他愛もないやりとりをしていたのです。
しかし、この日届いたメッセージは、そういったものではありませんでした。
「すいません、町田さんにお話があります」
……ゴクリ。どうした? 何かバレたのか? きょうこちゃんとのエンコー内容を裏モノに書いていたことがバレたのか?それとも、いつもゴム付けてるフリして実際はそっと外して生ハメしていたことがバレたのか?その際、ちょっと中に出していたことがバレたのか? いや、「妊娠しました」とかじゃないだろうな!!? 「どうしたの?」と返信。
胸が高鳴る。ドキドキしながらラインの画面を見つめる。うわー、どんな返答が帰ってくるんだ!! ピロン♪
「実は、彼氏ができました」
……えええーーーー!!!!マジかよ! オイオイオイおかしいだろ! 先月、「町田さんのこと好きになってしまって……」的なこと言ってたじゃん! どうして? なんで? 裏切られた? ボク、遊ばれた??
「ごめんなさい…。なんか、町田さんのことは好きなんだけど、彼氏って感じではなくて。すごく年上だし。で、この前知り合いのパーティに呼ばれたときに、1歳年上の人に誘われて。まだエッチはしてないんですけど、付き合うことはOKしたから、たぶん、しちゃうと思います」
……マジか! ダメだ。もう終わりだ。どうしたらいい? 彼氏ができてしまったことはショックだけど……、でも彼氏に内緒でセックスすることだって可能なはず! どうしたらいい? どうしたらキープを続けられるんだ!!?
「でも、町田さんとの関係は終わりたくなくて。だから今まで通り会ってほしくて」
え? マジ? な〜んだ心配して損しちゃった! 彼氏ができてもエンコーは続けるってことね。ピュアだったきょうこちゃんが、彼氏を裏切るなんて悪いコトしちゃうのは悲しいけど(笑)。な〜んだ、安心した〜。
「エッチはできないんですけど、普通に会ってゴハン食べたり、こうやってラインでお話は続けたいです」えええーーーー!!!なにそれ!バカなことを言うなよ! きょうこちゃんって元彼と別れても仲良しになりたいタイプかよ!やだよそんなの!!!
「うーん。ごめん、それはできない」
「……」
「俺はきょうこのこと好きだけど、やっぱりそれはセックスがその先にあるからだから。セックスが無い上で、今までみたいな感じではつきあえないよ。きょうこだって『この人のこと好き! セックスしたい』って思っているのに、『いや、セックスはできないけど、話し相手にはなって』って言われたら、その人と、今までと同じように仲良く話せなくない?」
「……そうですよね」
しおらしい答えが返ってくる。そう、ボクはここで、あえて距離を取る戦法に出ました。かなりリスキーですが、「お話があります」と、正直に彼氏ができたことを告白してきたきょうこちゃんは、「彼氏に内緒でヤろうよ!」と言っても無駄な気がします。もうコレしか手はないのです!
「ウン。だから、もし彼氏と付き合ってても別れてでもいいんだけど、もし俺とセックスしたり、ご飯を食べたり、いろんな話をしたくなったら連絡してよ。そのときはお金も払うからさ」
「……わかりました」
「ウン。きょうこと一緒で楽しかったよ。じゃあね」
「……ごめんなさい。たくさんゴハンに連れて行ってくれてありがとうございました。町田さんといろんなお話できて、すごくためになったし楽しかったです。割り切れなかったです。ごめんなさい」
そう言って、きょうこちゃんからのメッセージは切れてしまいました。
はぁ〜〜〜〜! 終わった……。たぶんコレ終わっちゃったよ。一応「距離を取る」っていう戦法をチョイスしたけれども、コレ、普通に終わりだよね。……まぁ、エンコー娘に彼氏ができて終わっちゃうっていうのも、まぁ普通にある話ですよ。そんなことでイチイチ心を痛めていたら、エンコーのカリスマの名がすたるというものですよ!
……でも、きょうこちゃん。すっごく良い子だったし、最高だったんだよなぁ……。きょうこちゃんと別れ話をしてから1カ月が経ちました。
マジな話、自分がこんな状態になると思ってもいませんでした。
心はボロボロ。食欲も無いし、仕事をしていても、きょうこちゃんのことばかり考えてしまう。他のエンコー娘をアプリで探していますが、まったく身が入りません。
そんなカラッポな気分のある日、不意にきょうこちゃんからラインが来たのです。
「町田さん。お話があります」
……きた? あえて距離を取った戦法がバッチリ決まった感じ? 「またセックスしたいです」みたいなカンジ???
「久しぶり。どうしたの?」
「あの、勝手なことばかり言ってすいません。やっぱり町田さんとの関係が終わっちゃうのは寂しくて……。会いたいです。エッチもしたいです。お願いします」
きったーーーー!!戦法が決まったの?? 夢みたい!スッゲー! ボクちんスッゲー!!さすがエンコーのカリスマ!(朝日に向って両手を上げながら)
「いいよ。嬉しいよ。いつ会おうか?」
そう、ここで「彼氏はいいの?」とかそんな野暮なことは聞きません。きっと彼氏とボクを比べて、彼氏とは別れたくないけれども、ボクの方がお金も持ってるし、人として大人だし、忘れられなかったんでしょうね!ボク、42歳とは思えないほど心の中が子供だけど、さすがに19歳の男子には負けないわ!!
「ありがとうございます! すごく会いたいです。明日でも明後日でもいいです!」
どうよ!この飢えたカンジ!きっとボクのティンコをチューチュー吸いたくて仕方ないのだわ!
「じゃあ明日、新宿で会おう。スクール水着、持ってくるんだよ? スク水でセックス、メチャクチャやりまくるからね?」
「はい。たくさんしてください!」
いやー、良かった良かった!めでたしめでたし! 彼氏がいるのはちょっとアレだけど、キープの恋が続くことが何しろめでたい! 明日は久しぶりにセックスしまくるぞー!(ティンコを甘触りしながら)
目の前が真っ暗になった。胸の鼓動が、32ビートくらいに早い。背中から首にかけて、ブワっと汗が噴き出てくる。手が震える。視界がぐらつく。
時間を少し巻き戻しましょう。
きょうこちゃんから連絡があった次の日の夜。久しぶりに会って、そのままいつものようにスク水セックスを楽しみました。3回とも顔に出して、そのまま就寝。
深夜、ふと目が覚めたんです。横には、スースーっと寝息を立てるきょうこちゃん。ベッドの枕元にきょうこちゃんのスマホがありました。ぐっすり寝ている。そーっとスマホをつかむ。メインボタンを押すと……なんと、ロックがかかっていない。うわー不用心!(笑)
……待てよ。今ここで、きょうこちゃんと彼氏のイチャイチャなラインを見てしまうこともできる。でもそうしたら、どんな気持ちになってしまうのか。すごい嫉妬の炎が燃え上がってしまうに決まっています。確実にラインを見たことを後悔する。
どうしよう。どうしたらいい?あ〜〜〜!
自分が傷つくことはわかっている。彼氏がいるのにボクとエンコーを続ける選択をしたきょうこちゃんが愛おしい、という気持ちもある。「彼氏ざまぁ!!」という気持ちもあります。でも、この覗き見の行為。止められないのです! えーい!
ラインを立ち上げる。ずらっと並ぶトーク履歴。上から彼氏っぽいカンジのアイコンを探す。お、この茶髪のイケメンの男。こいつがそうか! えいっ!
目の前が真っ暗になった。胸の鼓動がありえないほどに早い。手が震える。視界がぐらつく。その男のアイコンは、彼氏のものではなかった。
「今日もお疲れさま〜。ひかりちゃん。3人で、本指名ひとり。オプションプラスで全部で3万8000円です! 来週の出勤は月・水・金で大丈夫〜?」
「はい大丈夫です〜」
「来週もよろしくお願いします〜」
……なんだこれは?
3人? 本指名? オプション?
これ、マジか……? オイ!!
震える指で、トークをさかのぼっていく。すると何日も同じように、「今日もお疲れさま〜。ひかりちゃん。◯人で、◯万円です」という文字。そして中に決定的な一言が。
「ひかりちゃん、オプションなんだけど、今やってる『ごっくん』と『顔射』だけじゃなくて、『撮影』とかもやってみない?顔の撮影はNGでいいからさ。指名増えるよ」
ごっくん、顔射、撮影。
……もう間違いありません。きょうこちゃん、フーゾクをやっています。しかもデリヘルです。この男は、店の店員にちがいありません! 源氏名は「ひかりちゃん」で、すでに顔射とごっくんはOKにしております。
ボクの脳裏に、今まででの楽しかった日々が走馬灯のように駆け巡る。出会い系アプリで知り合ったときは、まだエンコーのエの字も知らないピュア娘だったきょうこちゃん。そんな彼女が、いつの間にかフーゾク嬢になっていました。なんでだ?
そしていつからだ!!?
さらにラインのトークをさかのぼる。一番古い履歴の日にちはいつ頃だ!!!
スライドする画面が止まった。店員のセリフからラインは始まっていた。
「じゃあ、ひかりちゃんこれからよろしくおねがいします。お店の番号は、●●‐●●●●‐●●●●だよ。よろしくね。『A』っていう店は、八王子に似たような店があるから間違わないようにね」
……日付けは、3週間前!!!?
なんと、ボクときょうこちゃんが別れ話をした数日後でした!マジかよ! ナニ? ボクとの愛人契約が無くなって、お金欲しさで始めたの? なんなの?コレ?? すんごいショックなんですけど!!!
ボクは、この「フーゾク噂の真相」の連載を10年以上やってきました。ここ2年くらいはエンコーばっかりやっていますが、フーゾクとともに歩んできた10年間です。そんな10年を過ごしてきた〝答え〞。それは、フーゾク嬢なんて、ろくなもんじゃないということ。汚れた女だということ。最低な行為だということです。ボク自身、フーゾク嬢を心の奥底では軽蔑しているのです。
そんな最低な行為を、あのきょうこちゃんがやっている。あんなにピュアな笑顔で焼肉をほおばるきょうこちゃんが。ボクの性欲をすべて受け止めてくれるきょうこちゃんが!
震えが止まらない。あぁ、もうダメだ!頭の中がぐるんぐるんと回る。ガクガクする手でスマホを枕元に置き、そのままきょうこちゃんに背中を向けて横になる。
││なぜ、きょうこちゃんはフーゾクなんかやってるんだ?
コレはアレか? ボクとエンコーしまくったことにより、「身体を売るのって簡単だし、そんなにイヤじゃないや!」ということを覚えてしまったのか。
つまりボクのせいか?? ボクのティンコが、彼女の貞操の壁を打ち壊してしまったから、簡単にフーゾクの世界に入ってしまったのか?? あぁ、新潟から上京してきたピュアでなんにも知らない少女にボクはなんてことをしてしまったんだ!
その震え、怒りにも似た感情。それは間違いなく、恋する者のそれだった。ボクは、数十年ぶりに、この18歳の少女に恋していたのだ。それに、この瞬間気付かされてしまった。
ホテルの部屋にはただただ、きょうこちゃんの寝息がスースーと、静かに響いていた。それからというもの、仕事がまったく手につかなくなりました。
きょうこちゃんのラインにあった八王子の『A』というデリヘルを探してみました。在籍嬢のところに、「ひかり」という女の子、しっかりといました。しかも、ご丁寧にフーゾク店のホームページによくある、フーゾク嬢が書く「写メ日記」もせっせと書いていたのです。…
…しかも、きょうこちゃん本人のツイッターと同じ画像を載せていました。
もちろん「写メ日記」に載せている写真は、目のところにハートのスタンプなどを貼ってあり、顔がわからないようになっています。でも、知り合いが見たら完璧にバレます。なんというワキの甘いことか!!!!
マジか……。こんなことをしていたら、きょうこちゃんの一生はどうなってしまうんだ。もし学校や友達にバレたら、一体どうなってしまうんだ!
もちろん、こうしている間にも、きょうこちゃんが出勤して誰かに顔射されていると思うと、胸が張り裂けそうです。ボクが全ての枠を買い取ってしまいたい!!
あ〜〜! 苦しい! どうしたらいいんだ!!!
悶々とした日が続いていたある日の夜。千葉の友人から電話がかかってきました。この連載に何度か登場しているT君からでした。
「お〜、どうしたよ。なんか元気ねぇな」
「いや、ちょっと……胸が張り裂けそうなんだよ、オレ……。実はさ……」
ボクは、T君にすべてをさらけ出し、相談することにしました。正直、彼が何をしてくれるわけではありません。ただただ吐き出したかっただけだと思います。
しかし、話し終わるとT君は静かに言いました。
「まったくお前ってヤツは……エンコー女なんかにホレちまうなんて、しょうがねえ大バカヤローだな! 全部、オレに任せろよ! 要するに、その女をフーゾクから足を洗わせばいいんだろ?」
「……まぁ、そうだけど。でもそんなことできんのか?」
「まぁ、黙ってオレにまかせろ!」
いまだかつてないほどに自信満々なT君。まったく期待はしていませんでしたが、吐き出したことでちょっと胸がスッキリしました。その日は珍しく、ゆっくりと眠れたのでした。
││それから数日後。
また、きょうこちゃんからお誘いがありました。
正直、会ってセックスする気にはならなかったのですが……、
もし断ったら、空いたそのスケジュールを出勤に当ててしまうかもしれない。そう考えると耐えられなくなって思わずOKしてしまいました。前回会ってから一週間。いつもより早いペースです。
アルタ前で待つ。どうしよう。きょうこちゃんに対してのモヤモヤとした気持ち、顔に出ちゃってないかな。どんな顔をして会えばいいんだろう。
「町田さん、こんばんは……」
……??? え?
やってきたきょうこちゃん、あきらかに顔色が悪い。表情も暗い。目の下のクマがすごい。しかもちょっとやつれたような表情です。え? どうしたの?? ボクなんかよりも、全然深刻そうなんだけど!?
とりあえず予約していた洋食屋に入り、話を聞いてみる。
「実は……、ツイッターでスト
ーカーにあってて……」
「ストーカー? どんな?」
「なんか最初は、あの……私のアカウントをフォローしてきて、なんか、バイト先とか、自宅とかを知ってるぞ、みたいな書き込みが来て。たぶん、バイトでやってるスーパーのお客さんだと思うんですけど……」
「……え?」
「で、さらに私の友達をどんどんフォローしていって、その友達にもいろいろバラすって言って来て。そうなりたくないなら一回、ふたりっきりで会おうって言って来たんです。すぐにブロックして、自分のツイッターもアカウントに鍵をかけたんですけど……」
「それは、普通に犯罪じゃん!警察に連絡した方がいいよ」
「まぁ、そうなんですけど……」
「もしアレだったら、オレが警察に連絡してあげるよ」
「いや……大丈夫です。ちょっと、そういうことがあって疲れちゃっただけなんで。ごめんなさい。心配してくれてありがとうございます」
なんてことだ。フーゾク問題もなんとかしなくちゃいけないけど、まさかきょうこちゃんにストーカーなんて! コレ、本人はこう言ってるけど、絶対に警察に届けたほうが………。アレ?
一瞬、ボクの脳裏にある言葉が響きわたりました。
「まぁ、黙ってオレにまかせろ!」
T君だ。たぶん、アイツだ!アイツが何かしたんだ!!!
「ごめん、ちょっと仕事の電話だ。ちょっと時間かかるけど、ゴメンね」
きょうこちゃんにそう言って席を立つ。店の外に出てT君に電話する。
「お〜〜、もしもし、町田か〜」
ちょっと笑いの混ざった声のT君。
「お前、なにをしたんだ?」
「いや〜、そのきょうこちゃんのツイッターのアカウントに、捨てアカから『〝A〞のひかりちゃんだよね? こないだはありがとう! また指名するからね』って書き込んでやったのよ。いや〜、すぐにアカウントに鍵をかけてたけど、かなり動揺したと思うぜ? あの子のフォロワーも何人もフォローしてたから、その会話、しっかり見られてたと思うし。今、彼女は友人にフーゾクがバレたと思ってパニック状態だと思うぜ〜」
やっぱりだ! きょうこちゃんが言っていた「バイト先のお客さん」っていうのは、スーパーのバイトなんかじゃない、フーゾクのお客だと思ったんだ! っていうかT君! やりすぎだよ!犯罪スレスレだ!
「でもよ、そこまでショックを与えないと、フーゾクから足を洗えないぜ? 学校の友達にバレたかもっていうのはかなり効果的だぞ。今ごろあの子、『神様、ごめんなさい!』って、めっちゃ後悔してるはずだぜ?」
「ものすごくやつれてたよ。……っていうか、なんでお前、きょうこちゃんのツイッターアカウントを知ってたんだよ? 店の名前は言ったけど、ツイッターは教えてないよな?」
「あぁ、簡単だったわ。店の写メ日記に載せてる写真を画像検索してみたらすぐに見つかったわ。アホだろあの子(笑)」
うわー、そうか、その手があったか! っていうかT君のその方法を使えば、フーゾク嬢のプライベートブログやSNSを探すことができちゃうんじゃないの? ヤバい! っていうかT君、このネットスキルの高さ! ちょっと怖すぎです! 何者だよコイツ!
T君に「気持ちは嬉しかったけど、もう何もするな!」と釘を刺し、再びきょうこちゃんの元へ。食事後、そのままホテルへ。食事中、そしてホテルに入っても、思い詰めたような顔のきょうこちゃん。いやー、コレは相当まいってるなー。
まぁ、フーゾクをやってることが友達バレしたわけだから。そりゃあ落ち込みもするわ。
……でも、T君の言う通り、たしかにここまで落ち込んでいれば、フーゾクもやめそうだよね。ウン。
とりあえず、このささくれだった心をボクが慰めてあげなければ。ホテルの部屋の真ん中でボーッと立っているきょうこちゃんを後ろから抱きしめる。折れそうなほど細い身体。振り向かせて、唇を重ねる。舌を入れると、いつものように舌を絡ませてくる。小さな口を大きく開いて、チュパチュパと唾液の音が響きわたる。
そのまま、ワンピースのスカートをたくし上げ、パンツを横にズラし、中指を這わせます。あれ、まだ濡れてない。まぁ、たしかにこんなに落ち込んでるんだもん。濡れるどころの騒ぎではないですよね。
「……ん、うぅ……く…」
お、声が出始めました。きょうこちゃん、気持ちよくなってきましたよ。
「……うぅ………う〜〜、ああ、ええ〜〜」
え? なにこの声? もしかして泣いてる?? 唇を放すと、なんと大粒の涙をボロボロと落とすきょうこちゃん。どうした? そんなにショックだったの? ごめん! T君、殺しておくから泣き止んで!
「ごめん……なさ〜い!うぅ…、町田さん……私、もう……ダメ……。本当にごめんなさい……」
「大丈夫。ストーカーが怖かったんだね」
「……あのぉ、私、それで怖くて怖くて……。夜いつも……ひとりで泣いててぇ……。実家のお母さんに……電話したんですぅ…そしたら電話口でお母さんの声聞いたら、なんか泣いちゃってぇ……。そしたらお母さんが、『どうしたの、きょうこ〜? 自転車で転んだの〜?』ってぇ……ええぇぇ〜………」
さらに大声で泣くきょうこちゃん。
「なんか、そんなわけないのに…。お母さんの中では、私はぁ、自転車で転んで泣いちゃうような、お母さんにとっては、まだまだ子供なんだって思ったら…。私ぃ、東京に出てきて、お母さんに言えないことたくさんしちゃってるって思っちゃってぇ……。なにやってんだろうって思っちゃってぇ……。だから、東京に憧れて出て来た3月を思いだして、もうしっかり生きなきゃって思ったんです……」
なんだか心が締め付けられた。
「私、本当になにやってんだろ…」という言葉が心に刺さる。まさか、お母さんも東京で娘がフーゾク嬢になったり、「エンコーのカリスマ」とセックスしまくってるとは思わないだろう。そんな現状にきょうこちゃんも気がついたんだ。
「……だからぁ、本当に本当にごめんなさい。もう、町田さんにも会わないです。ごめんなさい。本当にごめんなさい。だからぁ……、今日で最後でお願いしますぅぅ…………」
声をかすらせながら、きょうこちゃんはそう言った。両目からはずっと涙がこぼれていました。
毎年、4月にこの連載で行なっているテーマ「今年のエンコーデビューガールはどんな感じなのか?」。いつも、このテーマをやるときに佐藤編集長がボクに言う一言がある。
「毎年、春のタイミングでエンコーをはじめる女はいっぱいおる。そういう女がエンコーに身を沈める瞬間に、町田特有の執拗なセックスでキモがらせて、
『もう二度とエンコーなんてしない!』と思わせるんや。毎年言うけども、コレは人助けやで!」
いつも、このセリフを言われるたびに「訴えてやる」と思っていましたが、今回は、その言葉通りになったのかもしれません。
最後のセックス。いつもは「ゴムをして下さい」と言っていたきょうこちゃんが生セックスを許してくれた。正直、いつもゴムをそっと外して、毎回、生でガンガンやっていたのだが、本人からOKがでたのは初めてのことだった。
抱きながら、数カ月のことを思いだしていた。数十年ぶりの恋。涙がじんわりと浮かんできた。ボクの顔を見たきょうこちゃんも、目に涙をいっぱい浮かべていた。抱き合ってキスをしながら腰を振った。
やってくる快楽の波。終わりがそろそろ近づいてきていた。終わりたくない。射精してしまうことが、こんなにも悲しいなんて思わなかった。そして最後の瞬間。いつものように顔射。彼女の顔には、涙と混じった精液がぶちまけられていた。