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正月早々、弟2人が交通違反で捕まり、母はフェイスブックで男に騙される。
『由佳ちゃんと赤ちゃんが遊びに来てるから、久しぶりに顔を見にくれば?』
1月末に母からこんな電話があった。由佳とは22才になる妹のことで、以前も触れたが過去に単体のAV女優をしていた。今は結婚して子供もいる立派なお母さんだ。
ずいぶん会ってないことだし、顔でも見に行くか。テメーだってこういうの出てるじゃねーか!
実家のリビングで由佳は携帯をいじっていた。6カ月になった娘は、母が抱っこしている。
「おっす、久しぶりだな」
「ああ、うん」
キャッキャと楽しそうな母と対照的に、腫れぼったい目で携帯に目を落とす由佳。なんかあったのか?
「どうかしたか?」
「うん…浩二さんとケンカして」
夫婦喧嘩か。そんなことでいちいち落ち込んでたら体がもたないよ。ところが、続けて由佳が口に出した言葉で、オレはコトの重大さを知らされることに。
「もう離婚されちゃうかも」
「は? 大げさだな」
「違うの、あの人ね」
 声が少し小さくなった。
「私が出てるビデオ観たの」
 目から涙があふれている。うむ、そうか…うーん。
オレは昨年の二人の結婚式を思い出した。あのとき二次会で、ダンナの浩二さんはオレにだけこっそり、由佳のAV出演を知っていることを打ち明け、その上で彼女を愛しますと誓ってくれたのだった。彼は当時から作品を目にしていただろうし、今になってそんな話題が出てくるのはオカシイはずだが…。由佳はとつとつと語った。昨夜、ダンナが携帯でエロ動画を観ているところを発見した。以前からたびたび注意していたのに、いつまでもやめてくれない。なので彼女は声を荒げた。
『もう、そんなモノ見ないと生きてけないの!? バッカみたい!』
 対し、浩二さんは見たこともない顔で反撃してきたという。
「テメーだってこういうの出てるじゃねーか! このクソ女!!」
状況を聞く限りにおいては、どうやら売り言葉に買い言葉で、つい口から出ちゃった言葉のようだ。結婚式のときはさっぱり割り切った風の彼だったが、やはり胸の奥にはモヤモヤしたものがずっとくすぶっていたのだろう。
さて問題は、これによって『浩二さんが由佳の過去を知っている』ことを由佳が知ってしまったことだ。今後よそよそしい夫婦生活になるだろうことが想像できるだけに、どう対処すればいいのやら。
やはりオレが間に入るしかないか。こんな妹だけどやはり幸せにはなってほしい。兄として、男として、浩二さんとしっかり話し合わないと。
「わかった、オレがちょっと話してくるわ」
あの人の名台詞を借りればいいわけで
その夜オレは、二人の住居である都内はずれのマンションを訪れた。
「あれ、お兄さん?」
「どうも、ちょっと話したいんだけど、いいすか?」
 寝巻き姿の浩二さんは突然の訪問に同様しているようで、長い髪をかきむしっている。
「あの、由佳、そちらに帰ってるんですよね?」
「うん、なんかケンカしたって聞いたんですけど…」
「……」
「浩二さん、ごめんなさい。妹の代わりに謝ります」
「そんな…」
「本当すみません。AVに出たことは水に流してもらえないでしょうか」
 しばらくの沈黙のあと、浩二さんが口を開いた。
「昨日はなんかカッときちゃって申し訳ないと思ってます。でも、どうしても許せない部分もあるんです」
「そこをなんとか…。子供もいることですし」
「その、出たことはしょうがないと思ってるんですけど、自分は隠しておいて、人のことスケベみたいに言うのが…」
「まあでも、あいつが秘密にしたがる気持ちもわかってやってくれませんか」
頭を下げながらオレは、この状況があるドラマのワンシーンに似ていることに気づいた。『北の国から』だ。恋人の宮沢りえが過去にAV出演していたことを知った純も、浩二さんみたいな立場だったわけで…。となると、オレもあの人の名台詞を借りればいいわけで…。
「あの、浩二さん」
「はい」
「人間って、長く生きてると汚れがつくもんですよ。ボクなんか汚れだらけです」
「……」
「そういう汚れは石鹸では落ちないんです」
「石鹸?」
「ええ、石鹸です。そういう石鹸で落ちない汚れはどうしたらいいんですかね」
 浩二さんは腑に落ちない顔をしている。
「どういうことですか」
「いや、だから由佳も汚れてるんですけど、石鹸じゃ落ちないなぁと思って」
「え? 汚れてる?」
 バカか、お前は。すぐ理解しろよ。
その後はなぜか二人でビール
を飲みながらプレステを楽しむ流れとなり、問題はなんら解決しないままオレはマンションを後にした。由佳と娘はまだ実家にいる。