0036_201808051015162a4_201908251951503f7.jpg0037_20180805101517061_201908251951522fb.jpg0038_20180805101518592_20190825195153656.jpg0039_20180805101520888_20190825195155794.jpg0040_2018080510152178d_20190825195156171.jpg0041_201808051015234f2_2019082519515819a.jpg0042_20180805101524ee1_201908251951593cb.jpg0043_20180805101526527_201908251952010d2.jpg0044_201808051015276fd_201908251952025c0.jpg0045_20180805101529b19_20190825195204200.jpg夕方6時半。新宿にやってきた。
駅の東口から歌舞伎町にかけては、いつもどおりそこかしこに居酒屋の客引きが立っている。
同行者の友達と、飲み屋を探しているテイで歩く。歌舞伎町の『一番街』で、迷彩ジャケットの男が近寄ってきた。「居酒屋とか案内しますよ」
キタキタ!
「どういう感じなの?」
「飲み放題で1500円って店があるんですけど…」
いったん言葉を切り、少し間を空けてから続ける迷彩服。
「でも1200円くらいには下げれるんで。個室の店ですし、どうですか?」
こちらが承諾すると、迷彩服は店に電話をかけ、
『一番街』を歩き出した。
「ここの4階です」
足を止めたのは、箱ヘルやオンラインカジノや中国エステが入った雑居ビルだ。入り口に『4階・全室個室・山久農場』という看板が出ている。とてもマトモな飲食店が入っているとは思えない建物だし、店名が大手居酒屋チェーン『塚田農場』のマネっぽいのも気になる。エレベータを4階で下りたところで迷彩服がボソリとつぶやいた。
「そうそう、一人一品ずつ料理を頼んでもらうのがキマリになってまして」
店の前まで連れて来てから、そうくるか。何が「そうそう」だっつーの。入り口の戸をガラリと開けると、女のスタッフが顔を出した。
「いらっしゃいませ」客引きからすでに話が通っているのだろう、人数を聞かれもせず、奥へ通された。通路に面したトビラを開け、個室へ……。は〜!これのどこが個室なんだよ!
隣のテーブルとの仕切りは、暖簾をたらしているだけ。横のニイちゃんの顔、普通に見えてるし!
会話、めっちゃ鮮明に聞こえてるし!のっけから辟易していると、スタッフが箸とおしぼり、そして小鉢を持ってきた。
「お通しです」
ほんのちょっとの量のキムチだ。
「…ちなみにいくらですか?」
「480円です」
高っ!ひとまず、飲み放題メニューから酒を選び、料理も5点ほど注文して飲み始めた。
意外と味は悪くない。生ビールはちゃんとキレがあるし、料理は値段が少し高いが、そこそこ美味かった。が、やはり、やかましいのが如何ともしがたい。だんだんイライラしてくるが、隣の連中だって『個室です』と言われて来たんだろうと思うと、恨めしいのは客引きだ。くそっ!
1時間で店を出て、会計は6240円。飲み放題2人分と、しょぼい料理5品でこの値段。ビミョーにボッてる感じだな。ま、とにかくこの店は、あれを個室と呼んでるとこがまったくダメ!釈然としないまま店を出たところで、ひと息つく間もなく、新たな客引きが声をかけてきた。
「居酒屋どうですか?」
「…いま行ってきたとこなんで」
「もう帰られます?ワンチャンもらえません?」
慣れ慣れしいやつだ。
「ドリンクのほうは全品20%引きにできますんで。でも、お酒けっこう飲みます?」
「まあ普通には」
「だったら、飲み放題90分、キュッキュッパでどうですか?」
998円か。こなれた言い方が怪しいっつーの。
「ビール、サワー、カクテル、ウイスキー、だいたいありますんで。ただ、お通し代500円と、一人一品の注文はお願いしたいんですが」
やっぱそういうシステムか。でもまだ隠していそうな気がするんだけど…。
「じゃあ、まあ、行ってみるけど。店はどこなの?」
「ここです」
見せてくれたビラには、パラソルが並ぶ店内写真が。ビーチリゾートのようだ。店名は『屋内ビアガーデン HANA』。ニイちゃんはビラの裏側に『998 2名』と書き込み、こちらに寄こしてきた。「店には連絡しとくんで。これ持って、そのビルの7階に行ってください」
外壁の荒れ果てたビルのエレベータに乗り7階へ。待ちかまえていたスタッフに、席へ通される。店内は一応写真の通りだが、キラキラした雰囲気は皆無だ。スタッフがお通しの揚げパスタを持ってやってきた。これが1人500円。ショボイもいいとこだ。
「じゃあ、生ビールを2つお願いします」
「生は、飲み放題に含まれていません」えっ!?
「飲み放題のビールは、金麦になります」
第3のビールかよ!たしかに客引きはビールとしか言ってなかったが…。仮にも『ビアガーデン』なんて謳ってる店なのに、生が別料金ってギャグじゃん。バカらしくなってウーロンハイとハイボールを注文したところ、味がやけに薄かった。オレの感覚的には、ほぼジュースだ。
ウマくもない酒を無理して飲み続けてもしょうがない。客引きとの約束の一人1品ずつの料理を頼み、1杯目の酒を飲み終わったところで、店を出ることにした。
「いくらですか?」 伝票が出てきた。ん?
『奉仕料406円』って何なんだ?
「奉仕料ってのは何ですか?」
「サービス料の10%ですが」
納得できないな。高いお通し代を取ってるくせに、さらによーわからん料金を加算するなんて…。  ごねていると、スタッフがおもむろにオレたちが座っていた席へ向かい、メニューを取って戻ってきた。そして一番最後のページを開いて見せてくる。
「ほら、ここに書いてあるでしょ?」
かなり小さい文字で、「サービス料10%を頂きます」と記されている。…これがヤリ口かよ。「こういうシステムなら、最初にちゃんと言うべきだと思うんですけど」
「でも、書いてますんで」
「書いてるって言っても、こんなに小さい文字じゃ、不親切じゃないですか」
「うちはこういうシステムでやってますんで」
「…システムねぇ」
たかが数百円くらい払ってやるか。…ってのがまさにこいつらの狙いなんだろうな。今度はフラフラと駅東南口を歩いていると、声をかけられた。
「居酒屋とかどうですか?」
「…安いの?」
「普通に入るよりも15%引きくらいにはできるんで。だいたい、みなさん、2〜3千円くらい使う感じですかね」
「安そうね」
「もしかして、お腹とかはあんまり空いてない感じですか?」「そうねぇ」
「お酒を飲まれるなら、飲み放題で1300円でやりますんで。お通しとは別に、一人1品の注文をお願いしたいんですけど」
また例のシステムか。これが一番儲かる勧め方なんだろうか。  こちらが応じると、スタッフはどこかに電話をかけてから、こう言ってきた。
「席は広いほうがいいと思いまして。ちょっと遠いんですけど、4名席が空いてるお店があったんで、そちらを取りました」
「そうなんだ」
「もうお席は取ったんで、ここで予約金として1000円を預からせてもらいたいんですが。お店に着いた時点で、この紙を渡してもらったら、お金はお返ししますんで」客引きから教えられた店『天空の囲』は、歩いて5分ほど、1階にサラ金が入った薄暗い雰囲気のビルの9階だった。入り口でキョロキョロしていると、坊主頭の男性スタッフが近付いてきた。客引きから渡された紙を見せる。
「すみません。これなんですけど」
「はいはい。どうぞ」
約束どおり千円は返ってきた。よろしい。店内をキョロキョロ見渡す。割とゆったりした間隔でテーブルが並べられており、ぱっと見落ち着いた雰囲気だが、内装はどこか安っぽい。若い女の子のスタッフがやってきた。テーブルにおつまみのマカロニサラダを出す。たぶん500円くらいするんだろう。「じゃあ、とりあえずビールを2つと、料理を一品ずつ頼まなくちゃいけないんだよね」
「あ、お願いします」
メニューを見る。ん?どれもこれも明らかに高いんだけど。焼き鳥が4本1080円、お茶漬け680円、もつの味噌鍋1人前1450円。
「…じゃあ、たこわさと、だし巻き卵で」
「15%引き」なんて言ってたが、一般的な居酒屋値段よりも30%くらいは高いんだけど。運ばれてきたたこわさを見て、さらに驚いた。小鉢の底にシソの葉を敷き詰め、これでもかってほど上げ底にしてやがる。 料理は一人1品ずつしか頼まず、2杯ずつ飲んだところで、会計をすることにした。
「すみません。チェックを」 
坊主頭スタッフが伝票が寄こしてきた。おそるおそる見て、目を疑った。飲み放題なのに、2杯目のドリンクが単品料金になってるではないか。しかもまた『サービス料』が10%付いてる。合計6732円だ。「これ、どういうことですか?なんで、飲み放題なのに?」「あ、そうですね」
坊主頭が伝票を引っ込め、特に詫びることなく訂正した伝票を出してきた。
「こちらでお願いします」
お願いしますじゃないだろ! 
「こんなミスってありえますか?」
「すみません。バイトの子が注文を受けるときにうっかりしちゃったんだと思うんで」
軽く言ってくれるなぁ。
「納得できないなぁ。このサービス料ってのはなんですか?」
「サービス料です」
「こういうの取るなら、客引きさんにも言っておいてほしいんですけど」
「それはすみません。でもあの人たちは、うちの人間ではないんで」
「関係ないってこと?」
「関係ないとは言い切りませんけど、うちはこういうシステムでやってるんで。そのへんは理解してもらえませんかね?」
そう言って、睨むように見据えてくる。くそ〜!
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