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究極の偽造犯罪、とでも言うべきニセ札作り。最近も不景気な世相を反映してか、去年1年間で約
10件のニセ札事件が起きている。もし成功すれば、金の成る木を得たかのごとき夢のような犯罪だ
が、実際はその大半が失敗。逮捕された場合は、征期または3年以上の懲役刑が待っている。殺人が3年から無期の懲役、または死刑ということを考えれば紙幣偽造の罪はあまりに重い。果たして、このリスクを背負ってまで、ニセ札を作るウマミはあるのだろうか。ニセ札を考える場合、まずは日
本の紙幣(正式には日本銀行券)が、いかに精巧に作られているか、ということを理解しておかなければならない。
現在発行されている日本の紙幣は、表色、裏5色の特色が使われ(1万円札の場合)、紙面にはマイクロ文字、特殊発光インク、超細密画、磁気情報などが盛り込まれている。用紙は門外不出の製法と材料が採用され、三種(ミツマタ)、猪(コウゾ)、雁皮(ガンビ)、アバカ(マニラ麻)などの配合比率は極秘。透明度や平滑性を高めるために、填料(テンリョウ)と呼ばれる材料も使用されている。光沢・強度・耐久性・使いやすさを突き詰めた、このお札用紙と同じ紙を製造するのはまず不可能。過去のニセ札事件においても、紙だけは素人でも触ればわかるようなお粗末なものが使われているケースがほとんどだ。
用紙と並び、技術の粋を結集して作られたのが、福沢諭吉や新渡戸稲造の肖像などを浮かび上がらせる「すかし」である。「すかし」には、便せんや障子紙より薄い白すかしと、逆に厚い黒すかしの2種類があるが、紙幣に使われているのは両方を合体した白黒すかしだ。微妙に階調のある肖像に最も適し、これを使うことにより、明るい部分から暗い部分まで立体感を持たすことが可能となっている。当然ながら、この白黒すかしも再現はほぼ不可能。「すき入紙製造取締法」により政府以外の団体、個人が使用してはならないことになっており、製法はトップシークレットだ。
紙幣がここまで精巧に造られる理由は、言うまでもなかろう。紙幣の流通こそが国の経済を根幹から支える基本的なシステムで、もしニセ札が出回ったら、それが根本から覆るからだ。紙幣偽造への対策は、我々の想像をはるかに超えているといって過言じゃないだろう。余談ながら、千円札の夏目淑石が黒いネクタイを締めているのに対し、5千円札の新渡戸稲造は白いネクタイを使用している理由を知っているだろうか。これは夏目淑石が明治天皇崩御を悼んだとき
の写真を参考に、新渡戸稲造の方は結婚式で撮ったものをモデルとしたからだ。あらゆる角度から偽造防止策が施された日本の紙幣。その完成度は世界一とも言われるが、一方でニセ札犯罪も後を絶たない。そもそもニセ札の歴史をひもとけば、古くは明治維新の混乱期までさかのぼるが、写真製版による精巧な偽造が出現。高度な印刷知識と技術を持った職人たちが、組織的に大量偽造を行っていく。使われたニセ札は、磁気を帯びたインクを使用し、光センサー付きの判別機もすり抜ける精巧な
もので、最終的には関西を中心に約500枚が見つかっている。こうした精巧なニセ札はいかなる方法で作られるのか。偽造1万円札が発見された事件では、次のような手口が使われたと見られている。まず、いちばん重要な紙だが、これは市販の上質紙の中でも薄手の洋紙を選択。印刷にはオフセット印刷機(500万円程度で一般人でも簡単に入手できるらしい)を使用し、札の表と裏を2枚に分けて印刷、次に裏面に印刷した組の反対側に「すかし」模様を刷り、最後に裏面の隅にプレス機で視覚障害者用の凹凸を付けたらしい。色調に関しては、色の分解ができるカラーフィルターを付けた製版用カメラで本物の1万円札を撮影。赤、黄、黒などに分解された色ごとにフィルムをアルミ板に焼き付けて刷版を作成し、それを印刷機で真札に近い色調になるまで重ね刷りしたようだ。
が、それほど手間ヒマかけて作ったニセ札も、実際にできあがったものは全体に赤味がかり、本物よりやや厚め、すかし部分の印刷も粗雑で、一見して偽物だとわかる代物だったという。
新聞報道などによれば、全体が赤っぽくなるのは、過去に東南アジアから持ち込まれたニセ札と特徴が共通しており、この事件も海外マフィアの仕業と見る向きも多いらしい。さて、このように大がかりなニセ札作りが行われる一方で、最近多発しているのがパソコンやカラーコピー機を使ったお手軽な紙幣偽造だ。パソコンを利用するのは、スキャナーで本物の1万円札の画像イメージを読み取り、カラープリンターで印刷するというのが手口。
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