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見るなら初公判から、が傍聴のセオリー。検察官が事件のあらましを読み上げるのは最初だけ、2回目以降からでは詳細がわかりにくい。
しかし、時には初回を逃したおかげでおもしろさが増すこともある。今回は、次第に明らかになる事実が驚きの連続を呼ぶ、ディープな現場に遭遇した。
指名手配オヤジが京都で飲み歩く罪状は詐欺等。被告は還暦も近いと思われるオヤジだ。
「アナタはお酒が好きなんですよね」
公判開始直後、弁護人が第一声を放った。この質問を今までの経験に照らし合わせると、導かれる答は一つしかない。無銭飲食だ。ぼくは、すぐに興味を失い、他の事件に移ろうかと考えた。
踏みとどまったのは、オヤジが味のある長崎弁の遣い手だったからだ。
「ちょっといい気持ちになったもんじゃけん、バッグをロッカーに入れたとですね。カギも取り外さんと」
目を閉じればそこに蛭子さんがいる感じである。で、なんとなく聞いているとこのオヤジ、東京から各駅停車を乗り継いで京都まで行ったらしい。各駅は節約のためだろうが、初回を逃した悲しさ、目的がわからない。車内でビールのロング缶を3,4本飲んだとか細かいことは聞くのに、カンジンの目的について質問がないのだ。とにかく目的だけは確認したいと、なおも聞いていると、オヤジの奴、京都に着くなり駅ビルに突撃。1軒目の居酒屋でビール中生1杯と焼酎水割り4杯、すぐ向かいの店でも同じように飲んだと証言する。
「まず生ビール。これは喉をですね、こう湿らせる意味で1杯だけと決めてるんですね。あとは焼酎が好きやけ、そればかり飲みよるとです」
ここで飲み逃げしたのか。いや、そうではない。前述のようにバッグをロッカーに入れ、京都酔いどれ紀行はなお続くのである。オヤジは四条河原町を徒歩で目指した。
「それでアナタは歩き始めたんですね。遠いのになぜですか」
「もっと飲みたくなったとですよ。クルマだとすぐに吐くもんで、歩きながら行きよったとです。道ばたで何度か吐きました」
くははは、吐いてもまだ飲みたい。オヤジはアル中なんだな。弁護人が細かく尋ねているのは、次の店で飲み逃げする前に、泥酔状態だったことを証明し、情状を得たいからだろう。おもしろくなってきたぞ。四条大橋まできたオヤジは、先斗町で飲もうと決める。
「赤提灯の店を探したとです。赤提灯なら5千円以内で飲めるけん」
あれれ、金持ってたわけか。仕事してそうにないけど、どうやって調達したんだ。そんな疑問にはいっさい触れてくれないのがもどかしい。
え、1年以上も前の事件なのか。どうしてそんなに長引いてるんだ。
「前回、京都での公判で、先斗町で4軒の店に入ったと証言しましたね」
京都で公判?わざわざ.やけに大がかりじゃないか。
「長崎で指名手配されていたことは、もちろん知っていたんですね」
今度は指名手配だと。いったいどうなってるんだ。さてはオヤジ、大物詐欺師なのか。それが何らかの事情で各駅停車で京都にまで行ったと。誰かをハメたのか。そういう正統派の詐欺事件なのか。
だが、話は相変わらず飲酒である。オヤジ、中生からのマイ・スタイルをかたくなに守りつつ、ガンガン飲む。計6軒。1軒につき焼酎水割り4杯としても24杯だ。しかも出来上がったオヤジ、5軒目ではいいちこのボトルを2本空けているばかりか、合間に先斗町の路地を走り回ったりした模様だ。「酔いがまわりにまわりまして、どれだけ飲んだかわからんのですよ」
そりゃそうだろうよ。でも、オレが聞きたいのはそんなことじゃないの。アンタが何者かつてことなの。
断片的な情報から察すると、オヤジは長崎で詐欺を働き、地元にいられなくなって東京に逃げたんじゃないか。でも、酒ばかり飲んでいては金もやがてなくなる。そこで新しいカモに目星をつけ、京都に行ったのでは。
シラフのときは冷静な判断ができるから、各駅停車を乗り継ぎ、その分で飲もうと考えた。そんなところだろう。全然違った。弁護士が言う。
「最後の店を出てタクシーに乗ったのに、店に戻ろうとしたのはなぜですか。人を刺して逃げたんじゃないんですか」
なんと。オヤジときたら最後の店の支払いでモメ、従業員を刺していたのである。
「京都駅に行こうとしたとですが、上着を着てなかったので忘れたと思って引き返したとです」
せっかく盛り上がってきたんだから、少しは緊迫感だせよ!まあ、すでに前後不覚。刺した記憶すらなかったらしい。
「そげんこつがあったことも自分ではわからんのですよ」
基本的におとなしい人間だから、ボッタクリのように威嚇されたりしなければいきなりは刺さないとオヤジは主張する。現場に舞い戻る不思談な行為も、記憶がなかったことの証拠かもしれない。
なにしろオヤジ、通報で駆けつけていた警官の前に、返り血を浴びたシャシ姿で下車している。少しだけ同情の余地はある、と思ったが…。
「アナタは3人刺しましたね」
複数かよ.犯罪に麻陣した人間でもなければ、酔いも吹っ飛ぶ大立ち回りのはず。しかも凶器はポケットに入っていたナイフ。ただの酔っぱらいが持つには物騒すぎる。なるほど、これだけの事件で、余罪もたっぷりありそうだから長引いているわけだ。セコい無銭飲食かと思ったものが、意表を突く展開になった理由は事件名にある。
もう一つ
被告は長い金髪で、売れないミュージシャン風。でも気合いは満点で、手の甲なんかタトゥーだらけ。オレはカタギの仕事なんか一生しないぜって雰囲気をまき散らしての入場である。
捕まったのは昨年の秋だから、半年ほどの拘留期間。自慢の金髪も、根元のほうは黒くなっている。
すでに何回か公判が行われ、前回は被害者の証人尋問。どうやら争っており、今回は被告人への質問のようだ。どれどれ、じっくり言い分を聞いてやろうじゃないの。
「友人のマエダ(仮名)と被害者の方がアナタの家にきたんですよね」
弁護人の質問でいざ開始。家に呼んだのは、貸していた大量のマンガをマエダが返しにくるためで、被告と被害者とは親しい間柄ではなかったという。家にきたマエダは本を返却するため被告の部屋へ。被害者はリビングへ。そこには脳梗塞でリハビリ中である被告の次男がいた。
ここで被害者が「カタワですか」など差別的な発言を繰り返したため、被告はムッとしてマエダのところへ。間もなく被害者もやって来る。しかし、彼女は人の話を聞かず勝手にしゃべる。ますますイヤな女だと思ったが、怒るのも大人げない。そこで冗談めかして被害者の背後から「人の話は聞こうよ」と軽く抱きついたところ、バランスを崩して、ふたりとも尻モチをついてしまった。理解できないのは、そこで被告が欲情してしまったことだ。
「私はマエダにタバコと少年ジャンプを買いに行くように頼み、被害者の方にキスをしました。とくに抵抗されなかったので、その時点でセックスしようと思いました」
なんじやこりや。イヤな女だと思っていたのが、そんなに簡単にソノ気になるもんかね。友だちだってそばにいるのに。違和感を覚えた理由は他にもある。息子だ。被告は息子を深く愛しており、心配もし、部屋に一人にさせるとあぶないから、マエダがマンガを返却する間、被害者をリビングにいさせたと言っていたのだ。それが一転、ほったらかしでセックス突入を即決だもんなあ。息子への愛情を疑うよ。弁護人の意図ははっきりしている。合意の上でのセックスだったことを印象づけることだ。日く、服を脱がせようとしたがズボンがおろせないので、自分で降ろすように頼んだら、「バレませんか?」と返事があった。日く、被害者は言うことを聞かないと殴ると脅されたと証言したが、実際は「したいの?言うこと間いてくれるの?」と、むしろ優しく話しかけた。しっかり打ち合わせしたのか、被告との呼吸は合っている。被告にしてみれば、ここが勝負である。不利な状況をはねかえすにはカッコつけてる場合じゃない。こうなると、話がエスカレートするのが裁判の常。どんどんエロい方向に進む。
「様子がぎこちないので、初めてなのかと尋ねたら、はいと答えました。あと、胸を触ったら生理前だから張ってて痛いと言われました」
生々しいんだよ!つうか、その女何才だよ。処女ってことは10代か。それにシラフでためらいなく手を出す男。似たようなことが過去にもあったってことだろう。
ところがあまりにトントン拍子で事が運んだため、下半身がいうことを聞かない。そこで被告、ここも即決。
「フェラチオできる?と聞いたら、どういうことかは知ってるけどやりかたがわからないと言われたので説明しました」
どうしてもやりたかったとしか思えない。最愛の息子を侮辱しまくる女と。
「それで私、噛まれて出血した経験があったので、歯は立てないでくれと頼みました」
そんなこと、誰も聞いてねえって。だいたい、アンダしゃべりすぎなんだよ。そんな会話が成立するくらい雰囲気上々だったと言いたいのだろうが。案の定、裁判長から聞かれたことだけ答えるように注意が飛んだ。ペニスが立ったところで挿入。相手は痛がらなかった。が、もう少しというところでマエダが帰宅する。
「全裸で部屋を出て、マエダにリビングへ行くように言い、被害者にはトイレで着替えるよう指示しました」
そうするしかないだろう。いくらダチといっても、マエダがおもしろいはずもないのだから。それで?「マエダをごまかそうと、部屋に呼んでキスをしました」
何だと。女なのかよ、マエダ。
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