0024_20190323135135fc3.jpg 0025_2019032313513689e.jpg 0026_201903231351384f7.jpg 0027_201903231351395a5.jpg 0028_2019032313514161e.jpg 0029_20190323135142367.jpg 0030_20190323135144900.jpg 0031_20190323135145e64.jpg 0032_20190323135147053.jpg 0033_20190323135148cc4.jpg男を見かけたのは、山手線某駅前のゲームセンターだ。1階のクレーンゲームコーナーでは、カップルや学生の集団など、さまざまな人が、景品獲得を目指していたが、全員が失敗していた。
それもそのはず、ディスプレイされているのは、かなり精巧なフィギュアや、大きなぬいぐるみなど、高そうなものばかり。そう簡単に取られてはゲーセンも商売にならないだろう。が、その中年男性だけは違った。うつむき加減で淡々とプレイを続ける彼は、足元に大きな袋を置き、取った景品をつぎつぎと中へ詰めていく。大きな箱のフィギュアやぬいぐるみは500円ほどの投資で、小さなストラップやキーホルダーは200円ほどでゲットしていく彼の表情は、なぜか能面のように動かない。ゲーセンの外に出たのを見計らい声をかけたところ、なんと彼はコレで食っているのだという。そう、なんとクレーンゲームで家族を養っているというのだ。いったいそんなことが可能なのか。本人に語ってもらった。
もともとはサラリーマンをやってたんです。でも3年前の春、35才のときに仕事で大失敗をして、地方の営業所に左遷が決まりまして。もともと居心地の悪い会社だったし、このまま定年まで田舎で冷や飯を食わされるくらいなら辞めてやろうと思って。
そこからはクレーンゲームだけで、妻と2人の娘を養っています。信じられないかもしれないですが、十分食べていけるんですよ。だいたい月収で35万円くらいですかね。ひと月10日は休むんで、
20日間で35万ってとこですね。1日あたり2万弱は稼いでる計算になります。仕組みはカンタンです。取った景品をネットオークションやアニメショップ、レンタルショーケース(店舗にあるショーケースを間借りして開く個人商店)で売りさばくだけですから。箱に入ったフィギュアは、ざっくり言うと500円で取って1500円で売って千円の儲けって感じですね。キーホルダーなんかは200円で取って500円で売れるから300円の儲けですね。1日で2万円を稼ぐには、箱フィギュア
を1日15個と、キーホルダーを20個くらい取らなきゃなんない計算になります。まあ、それくらいならなんとかできるもんですよ。なぜそんなに取れるのか? って部分は企業秘密になるんで、ちょっとボカしながら話しますね。
まず最初に、今は「掴んで、持ち上げて、落とす」みたいなやり方で景品を取れるクレーンゲームはほとんどないです。一見そういうツクリにはなってますけど、掴み切れるような握力はないんです。実際の落とし方は、アーム(UFOから伸びている腕)で景品を「押す」か「ズラす」かして、それを何度か繰り返して穴まで誘導するのが基本です。それでいざ景品を取ろうとなって、まず最初にやるのは、店がどのくらいの設定で台を設置しているか判別すること。アームの移動スピードや掴む力の強さ、爪の角度、可動域の限界などですね。
これは店員が自由に設定できるので、店のクセを読むことも重要です。今日はあの社員がいるから、掴みは悪くないけどアームの移動は速めだから、操作をシビアにやらないとな、みたいな。それらを頭に入れて、どう狙ってどう景品を動かすか、最終的にはどうやって落とすか作戦を練ります。
そのためには景品の重さや、箱の中にどういう向きで景品が入っているかを知ってないとダメです。
 たとえば、「ねんどろいど」シリーズなんかだと顕著なんですが、美少女キャラの造形って、頭が大きくて、身体の線は細いですよね? それだと、確実に箱の上部の方が重たいことになります。先ほどの「押す」「ズラす」では、箱の軽い部分を狙っていくことが基本なので、この場合は箱の下部を狙わないといけない。逆にメイドのキャラなんかはフリルのついたスカート部分、つまり真ん中が重かったりしますね。だから箱の端っこを狙うんです。つまりどっちにせよ、重い部分を軸に回転させるようにして、穴に落ちやすい形にしていくんです。作戦が決まれば、狙ったところへ正確にクレーンを動かします。1ミリのズレもなくです。少しでもズレるとまったく景品が動かないで100円損しちゃいますし、下手すると余計に取りづらくもなります。判別↓計算↓操作。この3つをどれだけ正確にやれるかです。どれか一つでも欠けていると、金にはなりません。これからいくつかパターン毎に取り方を紹介しますが「この形ならこうすれば絶対に取れる」というものはありません。あくまでアームの設定と、箱のサイズや重さによってベストな取り方は異なってくるので。参考程度ということでお願いします。
橋のように配置されたパイプのスキマから箱を落とす、一番スタンダードなタイプですね(写真1)。箱フィギュアの8割はこのタイプじゃないですかね。これだったら500円くらいで取れるかな。手前の箱を狙うわけですが、この向きじゃどうやっても落ちないので、まずは横向きにしていきます。右のアームで右奥カドを狙って、反時計回りに回転させる(写真2)。これは胸像タイプなので、重い中心部分を軸にして回転させるというイメージですね。手前の角がまだ下のパイプに引っかかっているので、そこを狙って角を落とします(写真3)。するとバランスが崩れて縦になる。取れそうな感じになってきましたね(写真4)。後は奥を何度か持ち上げると箱が垂直に近くなってくる(写真5)ので、最後はアームで上から押し込んで終わり(写真6)です。
このタイプは設定が悪いことも多いので、ダメだと察知したらあきらめる勇気も大切です。ストラップのような形をしたプラスチックが景品にくっついてるタイプです。アームでストラップを引っ搔いて落とすタイプの機械(写真7)ですね。一見カンタンそうですが、このタイプはアームの力が相当弱く、正攻法で取るのはかなり難しいんです。ですが、このタイプは個数制限がないことが多いので非常にオイシイ稼ぎ頭です。なのですみませんが、詳細は伏せさせてください。
 景品が●●で掛かっているとき、アームを●●●●するとアームが●●●●●●ってストラップにぶつかり、ストラップごと落下する。なので位置さえ正確にセットできれば、必ず100円で取れます。この写真は女性向け人気アニメ「アイドリッシュセブン」のキャラですね。これは1個1500円で売れます。確実に100円で取れるものが1500円になるんで、ちょっとしたバブルのような状況です。見つけたら店員からストップされるまで取り尽くしますね。C字フックで棒の上に景品を引っ掛けてあるタイプの機械ですね。ぬいぐるみはこのタイプが多いです。これも一見カンタンそうに見えますが、実は棒の部分にフックが落ちないための溝が掘ってあって、フック自体をいじっても
そう簡単には落ちないようになっているんですよ。ではどうするか。フックがかかっている棒の先端を狙う(写真8)んですよ。そうすると棒が持ち上がって弓のようにしなって、溝からフックが外れて、一発で落ちます(写真9)。こういう発想ができることが重要ですね。
箱についている紙ペラの穴にアームを通して、右にある穴まで引っ張るタイプですね(写真10)。これもペラを狙ってしまうとワントライにつき数ミリ〜1センチしか動かない。どれだけ操作が正確でも、取るのに2千円以上かかってしまいます。ですが箱の●●ギリギリをアームで押すと、●●●いる間は軽い箱なので●●んですよ。アームが離れて箱が●●●ときの●●で、一気に数センチ移動します。この方法なら500円で取れます。これは突っ込んだ金が規定金額にまで達しないと取れないようになっている〝確率機〞ですね。アームが3本ある機種(写真11)(写真12)はすべて確率機とみていいです。千円〜5千円まで突っ込まないと本来なら取れません。規定金額に達しないうちは、途中まではいい感じに掴めるんですが、アームが頂点に行った瞬間、急に力が抜けて落っことすんですよ。でもこれ、逆に考えると「頂点に達するまでは必ず掴める」ってことですよね。それを利用して●●●に●●る。そのあと、無理やり●を●●るように●●●●で持ち上げれば、かなり強引ですけど取れますよ。これは気付いている人がかなり少ないですね。棒を操作して穴に入れ、景品をトコロテンのように押し出すタイプの機械(写真13)ですが、これも確率機です。規定金額に達するまではどれだけ正確に操作をしても、取れない位置に棒が滑るようになってる。これは三本爪と違って、完全な出来レースなので私はやりません。今のところ、これをどうにかする方法は見つかっていない。同じ人が20分以上お金をつぎ込んでいて、
取れずに帰ったのを目撃したときだけ触ります。規定金額が近付いている可能性が高いので。いわゆるハイエナですね。以上、橋渡し型以外の手順はすべて、店側の想定していない取り方で、正攻法とは呼べない奇策です。クレーンゲームを設定する側も人間なので、必ず想定していない取り方やミスが生まれます。盲点を突いた奇策は、通常の手順よりも遥かに早く取れるので、収支を大幅にアップさせます。こういう発想ができないと、専業で食べていくのは難しいでしょうね。
 よく「遊んで金がもらえるなんて、いい身分だな」って言われますが、決して楽な仕事ではないですよ。箱フィギュアとキーホルダーを合わせて1日あたり40個近く取ってますし、移動時間含めてだいたい、1日10時間ほど働いていますから。ほとんどの景品には「1人1つまで」という制限があって、たくさん取るには何軒もゲーセンを回らなきゃいけないんです。それに同じ店に連続で行くと店側の心証が悪くなるので、毎日エリアを変えますから。秋葉原や新宿、渋谷といった繁華街は設定の甘い店が多いから、本当は毎日行きたいところですがね。ま、東京だけでもゲームセンターは400軒以上あるので、エリアを変えてもなんとかなってるってとこです。なぜこうまでして店側の機嫌を損ねないようにするかというと、乱獲して店に嫌われると、結果的に損するからです。秋葉原の〝T〞なんかは、私たちのようなクレーンのプロが景品を乱獲した結果、プロを排除しようとする方針になってしまいました。例えば、クレーン操作をミスして、取れない位置に景品を動かしてしまったとしますよね。普通のお客さんが店員さんに「景品を元に戻してくれ」と頼めばもちろんやってくれるんですが、私たちが頼んでも完全に無視。他にも、プレイ中の台の電源をいきなり落としたり。もう客と思われてないんですね。新人の店員でも同じ対応なので、おそらく事務所に人相書のようなものが貼られているんじゃないですかね。秋葉原の〝T〞はやりすぎだとしても、毎日通って乱獲していると出禁にしてきたり、酷い対応をしてくるところは他にもあります。逆に、やり過ぎない範囲で取っていれば
「このお店はちゃんと取れるんだ」と他のお客さんが認識してくれて宣伝にもなるので、好意的に見てくれます。共存関係といいますか。店員とコミュニケーションを取ることも重要です。特に、ゲーム好きが高じて店員になったようなタイプは利用価値があります。設定をキツくしたいときにどう置けばいいかアドバイスしてあげたりして協力関係を築いておけば、こちらが〝仕事〞をしに行ったとき、配置を甘くしてくれたり、1人1つまでの景品を複数取っても、コッソリ見逃してくれたりしますからね。新作の入荷情報なんかもリークしてくれるので、店員と良好な関係を築くのは必須です。
そうやって雑談なんかをしつつ、1日に8〜10軒くらいのゲーセンを回る毎日ですね。家に帰るころには車の後部座席がパンパンですよ。店舗に目を付けられる以外の苦労もありますよ。
面倒なのはゲーセンにたむろしてるガラの悪い若者。以前、練馬のゲームセンターで設定が甘い台があって、土台のアクリル板を持ち上げられたんですよ。そうすると設置してある景品から見本用の景品まで全部落ちてきて、盤面にあるものすべて100円で取れてしまった。そうしたら地元のヤンキーに後をつけられてて、駐車場で「おいオッサン、俺らのシマで何してくれてんの?」って絡まれて、「死にたくなかったら今まで稼いだ金全部出せ」って言われて。彼らはクレーンゲームに興味なんかないんでしょうけど、自分らの地元で好き勝手やられてるのが面白くなかったんでしょうね。
死ぬほど怖かったですけど、こっちもこれで家族を養ってるんで、貯金は渡せない。結局、二度と練馬ではやらないと約束して、財布の有り金を渡して許してもらいました。あれは怖かったですねえ。
逆に良かった話と言えば、大手チェーンの●●●系列。基本的に厳しい設定の台が多くて、プロ殺しと言われてるんですが、その日だけはものすごい甘くて。普通、アームはここからここまでしか動かない、っていう限界設定があるんですが、その調整がされていなかった。社員が1人もいなかったので、インフルエンザか何かに集団感染して、バイトだけで調整をしたんだと思うんですけど。
限界がないから、見本用のディスプレイにアームをぶつけると、ピラミッド状に積んであるフィギュアが一気に10個くらい落ちてきて。他の台も同じような感じで限界まで取りまくりでした。あの日は1日で10万くらい儲かったんじゃないかな。あと、田舎のゲーセンはどんなもんだろうと思って、一度東北まで遠征に行ったことがありまして。確かに設定は甘くて取れることは取れるんですが、景品がショボい上にゲーセンが少ないので、結局収支はトントン。ガソリン代と宿代だけ損する始末でした。都会の方がやりやすいですね。家に帰ってからは、景品を・オークション用・レンタルショーケース用・アニメショップ用と、さばく場所別に仕分けます。モノによって高値がつく場所が違うので、パソコンやアニメショップの買取表とにらめっこです。基本はオークションサイトです。どの景
品を出すかは私が決めるんですが、細かい設定や梱包、発送などは妻にやってもらってます。これだけでも手間がだいぶ減るんで、助かりますね。で、同じものを大量に流しすぎたり、人気のないグッズを出したりすると安くなってしまうので、それを回避するためにレンタルショーケースやアニメショップを使う感じですね。駅前にあるようなレンタルショーケースは、知名度のある作品や人気キャラのグッズなら、相場の4倍くらいのボッタクリ価格を付けて出しても売れることがあるんです。観光の外国人とかが買ってるんじゃないかと思うんですけど。具体的には「ワンピース」や「ドラゴン
ボール」「ルパン三世」などの一般向けアニメですね。特にワンピースはキャラが多くて、クレーンの景品でしかフィギュア化されないキャラなんかもいるので。アニメショップは買取額は安めなんですが、即金で買い取ってくれるので、人気が下がり始めたグッズや、ヤフオクに出しすぎると相場が下がりそうなものを処分するのに重宝します。時たまオークションより高値がつくこともありますしね。この商売をやっていて怖いのは、景品の人気が乱高下することです。最近なら萌え系が大暴落しました。安定してさばけていた萌えアニメグッズの相場が、暴落したんです。グッズ業者が市場に大量に参入してきたのと、「ラブライブ」などの人気アニメブームの終了が同時に来たのが原因でしょうね。2千円くらいで売れてた萌えアニメのフィギュアが、今だったら300円で落札されることもザラですからね。最近では「艦隊これくしょん」の人気キャラくらいしか高値がつくものはないです。今オイシイのは「アイドリッシュセブン」や「おそ松さん」などの女性向けアニメグッズですね。女のオタクは男よりも収集欲が強くて、安定して高値が付くんです。特にその作品の人気キャラは取り合いが半端じゃない。1キャラだけ他のキャラの3倍くらいの値段で落札されたりします。なのでマメに女オタクのツイッターを観察して、どのキャラが人気なのかをリサーチしてますね。女性向けアニメが流行り出したのはここ2、3年のことなので、まだまだ需要は加熱すると踏んでいます。こんな仕事でどうやって家族を養ってるかってことですけど、まあ、普通ではないにしろ、メチャクチャってことでもないですよ。基本、土日祝は休みです。休日はゲーセンの客足が増えて、お金を突っ込む人が多いので設定がキツめになるんですよ。休日は娘と遊んでます。娘は小学2年生と保育園なんで、可愛い盛りですよ。ヨソのお父さんよりイクメンなんじゃないですかね?平日の朝は7時ごろに起きて、家族揃って朝食を食べます。夜遅くまでゲーセンにいるため、夕食は一緒にいられない。だから朝食は揃って食べることにしてますね。8時ごろ、娘たちが学校に行くのを見送ったら新聞やテレビでニュースをチェックしつつ、その日の巡回ルートを決めます。昨日は赤羽〜渋谷間の駅沿いルートを回ったから、今日は郊外のゲーセンを攻めるか、みたいな。9時になったら、ツイッターやアニメ系のまとめサイトで、オタク界の動向をチェック。映画化や続編が決定したアニメグッズの価値は高くなるので、毎日チェックしてないとダメですね。逆に、アニメキャラの声優が男と付き合ってることが発覚したりすると、その声優の担当したキャラのグッズは暴落するんです。オタクの間には、声優に対する処女信仰みたいなものがあるので。
11 時ごろになったら、車に乗ってゲーセンへ向かいます。ゲーセンはどこもだいたい10時開店なんですが、開店直後に向かうと目立つので、少し時間を空けるわけです。昼過ぎにゲーセンへ着いたら、あとは22時過ぎまでひたすらクレーン。向かう場所にもよりますが家に帰るのは23時ごろです
ね。帰ったら妻にヤフオクの動向を聞いて、その日の帳簿をつけて就寝です。本来なら、クレーンゲームの収入なんてわかりっこないので、税金は払わなくてもバレないとは思います。私の仲間も誰一人確定申告なんかしてないんですが、私はクレーンに使った額、景品を売却した額、その他かかった経費を帳簿につけ、玩具の販売店ということで確定申告をしています。ただ、娘たちに自分の仕事をどう説明するかは迷いますね。そろそろ父親のしてることがわかるようになってくる時期じゃないですか。授業で「私のお父さん」みたいな作文があってもおかしくないですし。
保護者同士で「お仕事は何をされているんですか?」とか聞かれるのが嫌なので、授業参観やPTAの集まりなんかは、妻に任せっぱなしです。娘も今はまだ「お父さんはスーツ着ないの?」くらいで済んでますけどね。一応、景品を保管している部屋には鍵をかけて、ヤフオクの発送などは娘たちが学校にいっている時間にやっているんですが、ごまかすのも限界があるし、いつかはちゃんと向き合わないといけないときが来るでしょうね。そのときに娘がショックを受けないかが心配です。
関連記事
タグ