0216_20190414121116576.jpg 0217_20190414121117e4d.jpg 0218_20190414121118907.jpg 0219_20190414121120269.jpg 0220_20190414121121334.jpg 0221_20190414121123b2b.jpg 0222_20190414121125c2d.jpg 0223_20190414121559c51.jpg〝東京で頑張っている高知県人〞というテーマのもので、別にたいしたことは語っていないのだが、
その写真入り記事が掲載されたとき、地元の仲間から男女問わず電話が鳴りまくった。
「新聞見たでえ。頑張っちゅうがやねえ」
「高知帰ってきたら連絡ちょうだいやあ」
まるで甲子園で優勝した明徳野球部員のような扱いを受け、オレはずいぶん舞い上がったものだった。これは使えるのではないか。東京で活躍する男が地元に帰ってきたら、女どもは放っておかないのではないか。
吉幾三が青森に帰れば、やはり地元の女が寄ってくるだろうし、イチローが来日すれば日本の女はキャーキャー騒ぐ。地元が生んだスターとはそういうものだ。
そこで、東京でブイブイ言わせているマスコミ人、マー君の登場だ。たぶん誰も知らないだろうけど、ちゃんと自己申告して教えてあげれば、土佐の女は目の色を変えるに違いあるまい。サングラスと黒シャツで都会風にキメ、いざ地元に舞い戻った。帰省するたび思うが、さびれてんなあ高知は。よくこんな町で青春時代を送ったもんだよ。オレが凱旋中なことなど誰も気づかないようなので、いつものごとくお見合いパーティに潜入することにした。『東京で一旗あげたので、これからは高知で恋人を見つけてのんびり暮らす』設定だ。が、会場に集まった女性陣のメンツを見渡し、テンションがいきなり落ちた。この低レベルはどうだろう。ジャカイモやピーマンみたいなのばっかが計8名。土佐の女ってこんなだったっけ?
回転寿司タイムでは、その野菜連中がプロフカードにがっつり食い付いてきた。
「仙頭さんって、東京からのUターン?」
「仕事はマスコミなんですね」
「なんかオシャれですよね」
などなど。野菜相手とはいえ読みどおりの展開に笑みがこぼれてしまう。一通り全員と挨拶を終え、スタッフからインプレッションカードを手渡された。なんと7人もが好印象だと告げている。東京ではありえないモテ方だ。
だが実は、オレがいちばんマシだと思っているのは、カードをくれなかった残り1人である。妥協はしたくない。フリータイムではその彼女、メガネちゃんに接近した。
「どうも。そのメガネかわいいね」
「あ、ありがとうございます…」
「オレ、最近の高知のこと知らないから、いろいろ教えてほしいな」
「あ、東京なんですよね」
「そうそう。でもやっぱ高知は落ち着くよ」
「何もないですけどね」
「いや、そこがいいんだよ。もう六本木や青山は疲れたよ」
「へえ」
さして盛り上がらぬまま会話は終了し、それでもメガネちゃん一本に絞ったオレは、カップル不成立で会場を去るしかなかった。
夜を待ち、キャバクラへ向かった。8人中7人から好印象を持たれたオレである、キャバでも十分戦えるだろう。
「いらっしゃいませー」
入り口のとこで待機していたキャバ嬢たちが一斉にお辞儀してきた。いいねいいね、かわいい子がいっぱいいるぞ。席についたのは美形の巨乳ちゃんだ。
「おっぱい大きいねえ」
「そうなんですよぉ。って言わせんといてやあ」
ふむ、これが高知のノリか。悪くないぞ。
「オレ、今日は東京からこっちに戻ってきたばかりなんだよ」
「おにーさん、東京の人なが?」「地元はこっちだけどね。東京でマスコミ関係の仕事をしてるんだ
よ」
「芸能人とか会ったりするが?」
「もちろん」
佐藤浩市やきゃりーぱみゅぱみゅの名前を挙げ、なんてことないけどね的な顔を見せてやる。
「すごーい。私もお酒もらっていいですか?」
どこかつながりがオカシイ気がしたが、成功者たる者、気前よく飲ませてやらんとね。
「どうぞどうぞ。でも、久しぶりに地元に帰ってきたら、やっぱり高知はいいなあと思うね」
「そうながや」
「君みたいな子もいるしさ」
「上手いですねぇ」
「これからは高知に住もうと思ってんだよね」
「もう1杯もらっていいですか」
えっ、早いなあ。それから君、会話に脈絡なさすぎだから。ま、飲め飲め。
二杯目を飲み干したころ、彼女がさみしそうな目をした。
「呼ばれちゃったがやけど、ここにいていいですか?」
このままだと引っ込められるから、指名してほしいという意味である。わかったよ、指名してやるって。泣くんじゃないよ。予定の1時間が過ぎた。
「よかったらさ、今日アフターとかしない?」
「いいよ。メアド教えてくれたら、すぐメール打っちょくき」
 やっぱ水商売系は成功者に弱いもんだね。メールは2時間待っても来なかった。そうですか。あの子、オレの話ちゃんと聞いてなさそうだったもんな。キャバ嬢からのメールを待ちながら、出会い系にも手を出しておいたのが、オレの用意周到なところだ。
『帯屋町にいます。これから会えませんか?』
そんなことを書いてる自称21才かわいい系にメールを送ると、すぐに返事が戻ってきた。
〈条件はイチゴーでお願いします〉
エンコーかよ。田舎のくせに1万5千円とはいっちょまえだな。こういう女にも、地元凱旋の効果を試しておいていいかもしれない。おらが町出身のヒーローからさすがに金は取れんだろう。待ち合わせ場所に着くと、むかし何かの映画で見た、悪さをする小人みたいな女が現れた。
「…サイトの子?」
「はい」
これでイチゴーとは、高知の男たちもナメられたもんだ。
「いやー実はオレ、東京でマスコミやっててさ。今日は10年ぶりに東京から戻ってきたんだけどね」
「そうなんですか」
「だからまあ今日は楽しくやろうよ」
「そうですね」
「だから今日はタダでいいでしょ」
「はい?」
「タダマンでいいよね」
「えっ? 援助じゃないとできんがですけど」
 できんがですって、そんな下品なこと言わないでほしいなぁ。
「まだ援助とか言ってるの? 東京ではもうそんなの古くさくて誰もやってないよ」
「そんな…」
「せっかく故郷に戻ったのに、地元の子が援助とか言ってたらショックだな。ここはオレの東京流で遊ぼうよ。ね、いいでしょ」
機関銃トークで洗脳しようとしたが、彼女は折れなかった。
「東京のことは知らんけど、高知は高知やき。タダとかムリでぇ」
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