0126_20190428104422dd2.jpg 0127_20190428104423036.jpg祭りや野外コンサート、花火会場などでおなじみの代物だが、こいつに抱くみなさんのイメージはおそらく同じだろう。不潔で臭い、だから、なるべく使いたくない。
 ごもっともな意見だ。
しかし、ちょっと前まで仮設トイレのレンタル業者に勤めていた俺からすると、この仕事は「不潔で臭い」だけでは済まされない、実にハードなものだったりする。
 どこがどうハードなのか。世間ではあまり知られていない仮設トイレ業者のきっつい仕事ぶりをご紹介しよう。ひとくちに仮設トイレのレンタル業といっても仕事内容はいろいろだが、俺のいた会社では、仮設トイレにまつわるすべての作業を一手に引き受けていた。たとえば花見会場を運営する自治体から依頼がくれば、トイレの運搬や設置はもちろんのこと、レンタル中に便槽がいっぱいになれば汚物をくみ取ったりするメンテナンスや、返却後の洗浄などもすべて自社スタッフで行うわけだ。
だから当然、この仕事をするうえで、悪臭と他人のクソを扱う気持ち悪さは常についてまわる。会社保有のバキュームカーで便槽にたまったクソを吸いあげ、それを処理施設まで運ぶなんて作業はまんまバキュームカー業者と同じだし、クソと小便のこびりついた便槽クリーニングはもう不快としか表現できない。同じ掃除でも、水洗式の公衆トイレを磨く方が衛生的にも精神衛生的にも100倍はマシだろう。しかし、こんなのは言ってみれば慣れであり、仕事をはじめて1カ月もすればさほどは気にならなくなる。
 問題はそういったルーティン以外で起きる不測の事態だ。ひとつは便槽のクリーニング時における病気の感染リスクだ。クリーニング時は、まずバキュームカーで便槽の汚物をくみ取ったのち、上部の個室を取り外し、高圧洗浄(高圧噴射の水)で便槽を洗う。
 が、その作業中に発生する水しぶきがマジで怖い。仮設トイレの使用者のなかに、感染性の病人が混じっていた場合、こちらも感染してしまうリスクがあるからだ。もちろん便槽にはあらかじめ殺菌剤が投入されているし、クリーニング時もスタッフは簡易マスクをつけてはいる。しかし、それでも100%安全というわけではない。
 実際、俺の職場では感染性胃腸炎や細菌性の肺炎になった人間が複数いて、俺自身は一度、ノロウイルスにかかった。一緒に作業をしていたもうひとりの同僚とともにおよそ3日間、入院先の病院で地獄の苦しみを味わったのは忘れらない記憶だ。 便槽クリーニングが怖いのは病気だけじゃない。
 不特定多数の人間が使うだけに、ときどきトンデモないものを便器の穴に捨てていく輩がいて、それがクリーニング時、あるいはくみ取り時に見つかるのだ。シャブを決めるときに使ったのであろう注射器とか大量の女もののパンティとか。
 が、なかでも血の気が引いたのは、ネコの惨殺死体だ。おそらく誰かがイタズラか何かで殺した死体を便器穴から押し込んで捨てていったのだろう。
 とはいえ、最初はそれがネコだとはまったくわからなかった。便槽の中身をくみ取ってる最中、茶色い汚水の奧に丸くて黒い物体が見え隠れしていたので、ゴムボールか何かかなと思って、何気なくすくい上げたのだ。それが、切断されたネコの頭部だったとは。さらに便槽の奥には首から下の胴体部分も沈んでいて、そちらも取り出したあとは、清掃局に死体を引き取りに来てもらったのだが、しばらくは、その光景が頭から離れなかった。動物の惨殺死体ってだけでも恐ろしいのに、それが人間のにまみれているなんてグロテスクにもほどがある。マジでトラウマものだ。
 もうひとつ、俺がこの仕事で閉口した出来事に「あたり一面まみれ事件」というのがある。仮設トイレの便槽には、なかの汚水を外へ流す排出口があり、普段、そこはキャップでフタをされているのだが、あるとき、何者かがイタズラ目的でキャップを外し、周囲をまみれにしてしまったのだ。問題の仮設トイレが置かれていたのはとある工事現場で、朝いちばんにそこの責任者から何
とかしてくれと電話が入ったのだが、これがホントに地獄だった。
 なんせ汚水は地面に広がっているため、バキュームカーのホースでくみ取ることなど不可能。となれば人力で対応するしかない。具体的にいうと、大量の雑巾を使って汚水をしみこませ、茶色い固形物は手づかみでひとつずつ拾っていくのだ。言うまでもなくゴム手袋をつけたうえでの話だが、つまみ上げたクソが、目の前で行き来しているドカタのオッチャンたちのものだと思うと、気持ち悪いやら情けないやら。これよりきつい仕事があるなら、マジで教えてもらいたいものだ。
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