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ギャンブラー編集者こと平林が窓際へ異動になって半年が過ぎた。その間、多くの読者さまから競馬関連の記事をやれと要望があったのだが、いかんせん編集部員に競馬を知る者がひとりもいないため、大事なご意見はスルーされるがままとなっていた。
今、私が立ち上がる。なぜならマンションの更新をひかえ、まとまった金が必要だからだ。銀行口
座に残るのは30万円。こいつをせめて倍にしたいと、今の私は強く願っている。
競馬のことは何一つ知らない。にもかかわらず自信はある。とある必勝法を思いついたからだ。
競馬には、購入した馬が3着までに入れば配当をもらえる『複勝』という馬券があるらしい。
1着を当てるのは難しいし、2着以内もまた難しい。しかし3着以内となると、なんとかなりそうな気がしてくる。1番人気の強い馬を買っておけばいいのだ。
誰もが1着になるだろうと予想した馬ならば、仮にどこかでミスっても2着に、もうひとつミスったとしても3着には入るのではないか。
杉内、ホールトン、村田を補強し、下馬評で優勝間違いなしとされたジャイアンツも、事実、首位でシーズンを終えた。仮にどこかでつまずいていたとしてもAクラス入りは固かったろう。圧倒的なチカラを持つ者とは、さほどに圧倒的なものなのだ。
以上はあくまで私の希望的観測にすぎない。そこで念のためにJRAの過去レースをさかのぼって調べてみた。 一番人気かつ単勝オッズが2.0倍未満の、つまり圧倒的に強いと予想された馬は、実際は何着でゴールインしたのか。 
結果は表のとおりだ。4着以下で終わったのは、54レース中10レース。およそ5回に1回は複勝でもハズすことになる。
ところがこの結果を吟味してみると、あることに気づく。4着以下となった10レースのうち半分は、距離が1200メートル以下だったのである。 
窓際の平林までアドバイスを求めたところ、彼は窓を背にし、窓の光りを浴びながら言った。短距離は、力のある馬がその力を出し切りにくいのだと。 またも野球に例えるならば、長いシーズンでは1位確実なジャイアンツも、短期決戦ならDeNAにも負け越し得るようなものだ。強者はロングスパンでこそ力を発揮しきれるのである。
ここに、私の必勝法は完成した。1200メートル以下のレースをスルーし、単勝オッズ2.0倍未満の超人気馬だけを複勝で転がす(勝てば全額を次に突っ込む)というシンプルなものだ。
複勝の配当はたいてい1.1倍程度なので、持ち金を倍にするには8連勝が必要となるが、勝率およそ
9割というこの賭け方ならば、なんとか乗り越えられるのではない
か。 9月最終土曜日、なけなしの30万円を手に、後楽園のウインズに足を運んだ。 
こんなに大量の万札を手にしたのは久々だ。たった一回負けただけで全て失うと思うと手のひらがジットリしてくるが、この競馬はまず負けないギャンブルなのだと自分に言い聞かせる。
タネイチ式必勝レースは、中山の第2レースで登場した。人気があるんだから強いんだよね。ちゃんと走れよ。1着じゃなくていい。3着でもOKだからね。 
余裕の2着だ。これで持ち金は33万円なり。マンション更新料にはまだ足りない。どんどん行こう。しばらく該当レースがなさそうなので、ソバでも食べるとしよう。
3万円儲かったことなので、奮発してエビ天入りのソバをズルズル。うまい。 
周りではオッサンたちが必死の形相で競馬新聞やモニター画面を睨んでいる。彼らは欲をかいて、馬連とか3連単とか大穴狙いとかいう、掛け金が何倍にもなるようなややこしそうな予想をしてるから、あんな顔になるんだろう。
私のように確実な勝利をコツコツ積み重ねていけば、簡単かつ確実に儲けられるのに。バカだよな
あ。ちょうどソバを食べ終えたころ、阪神の第4レースで、二つ目の該当レースが登場した。手元の新聞では、7人の予想師のうち6人が二重丸を付けていた。もはや不安要素は一つもない。プッシュプッシュだ。なんだかとんでもない必勝法を知ってしまったのではないか。これが広まったら競馬界に激震が走るかも。
手元に残ったのは39万9千円。この札束の厚みのズッシリ来ることよ! 
結局、この後は2倍未満のオッズを付ける馬は出てこなかった。10万も浮いたんだし、とりあえずソープで汗を流すとするか。 
ソープを我慢した私は再び後楽園ウインズに足を運んだ。 
手持ちの軍資金は39万9千円。目標金額に到達するにはあと5連勝が必要だ。
午前中は該当レースがなく、午後になってようやくそれらしきレースが登場した。 
中山の第7レース、一番人気の単勝オッズが2.0倍ジャストを示している。判断に迷う。必勝法は単勝2.0倍未満が条件だから、本来なら買ってはいけない馬券だ。せめて1.9倍になった瞬間を一度でも見せてくれれば思い切れるのだが。 
これは神様が私を試しているのだろう。欲に走るか、欲を抑えるか。こういう場合、古今東西の例
からいっても、欲をかいてはならない。 買わないことにした。 
しかしなんと締切り時間間際、1.9倍にまで下がったではないか。ヤバイ、すぐ買わねば。
慌てて自動券売機に並んだが、すんでのところで販売終了のブザーが鳴り響いてしまった。やっちまった。買い損ねだ。こういうチョンボをすると運気が変わっちゃうんだよな。なんたるラッキー!
買えなくてよかった。
この必勝法の唯一の難点、10回に1回はハズすという不安を、偶然買いそびれるという奇跡でかわしてしまうなんて! 
もうこれでしばらく2.0倍未満の馬がコケることはないだろう。
もう怖いものは何もない。すぐにマンション更新するから、大家のオッサン待っとけや!
ツキというものは実際にあるんだとつくづく感じざるをえない。先ほどの私は、フリーで入店したのに、10日に1回しか出勤しない人気ヘルス嬢にしゃぶってもらったようなツキ方だ。
よーし、ヘルス行くぞ!  いや、違う。もっと金を増やさないとな。 
喫煙所で2本目のタバコを吸い終え、いよいよ第3レースだ。新聞の予想師たちも「安定している」とコメントを寄せている。
やっちまった…。 いったい何が起きたというのだ。 
スタート直後は後ろのほうにいたけど、いずれ追い上げるものと思っていた。なのに、なのに…。
おい、プレレフア(馬名)、どうしてくれるんだよ!
今月の家賃、まだ払ってないんだぞ!
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