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正月になると「芸能人格付けチェック」とかいう一体誰が見てるのか分かんない特番がテレビで放送されている。人気芸能人が様々なジャンルでの常識のあるなしをチェックして1流、2流などとランク付けするらしく、終盤には高級ワインと激安ワインを飲ませてどっちがより上質なワインかをチョイス。なぜか毎回ガクトが正解を選んで優勝するのがお約束になってるというが、そんなもん正月から家族揃って見てる時点でろくな1年にならないのは火を見るよりも明らかだろう。
 しかし、確かに意識の高いリア充たちはワインにやたらとうるさいイメージがあり、実際ワインバ
ーなる店も最近急増中だ。ワインボトルのラベル部分を舐め回すようにじっくり見て「なるほど…」
とか「珍しい…」とかこっちに聞こえるように呟いている奴らをよく見かけるようになったのも最近
である。
 そんなワインブームのせいか、毎年六本木でこの時期に1週間だけ開かれている大規模なワインの試飲会イベントが盛況だという。基本的には常連客が毎年決まった銘柄のワインを購入する際にそれらを試飲してその年の味を確かめるためのイベントだったのが、今は一見の客にも世界の様々なワインをソムリエが薦めてくれるのだとか。
 早速平日の夕方にそのワイン試飲イベントが行われているという六本木某商業施設へ足を延ばしてみることにした。到着すると会場の入口両サイドには身長180センチほどの金髪外国人美女2名が金剛力士像の如くモデル立ちしており、まるで我我のような冷やかし組を寄せ付けないための門番のような強いオーラを放っている。下町の怪しい居酒屋なら平気で入れるのにこういうリア充イベント会場ではどうしても二の足を踏んでしまうのだが意を決して受付へ。
 前方に並んでるドレスアップした上品そうなマダムとバカなんだけど推薦で青山学院大学に入った
ような娘の親子が「予約した○○ですがぁ〜」と受付に伝えている。親子は左奥の既にワインボトルがズラリと並んだテーブル席に案内されていったが、俺みたいな全身プーマのスウェットを着た一見の者は受付で初めてだと伝えると客があまりいない静かなスペースのテーブルに案内されることになった。しばらくしてバイヤーと呼ばれる従業員が名刺を渡してきて1対1でのワイン試飲会がスタート。
「このピロートブルーというワイン。店でボトルで入れたら1本1万4千円ぐらいしますよ。これを
ね、こういうイベントでね、箱買いでね、少しお得に皆さん買っていかれるんですよ」といきなり高
級ワインを箱買いすることによって安値で入手できるという、上野のアメ横と同じ売り文句で話し始めたので思わず警戒してしまう。
「ちょっと一口飲んでみて」「飲みやすいでしょ」「これ数年後には人気出るやつだから」となぜか着席してものの5分でタメ口で接せられてるけど、たぶんこういうフレンドリーな世界なんだろうなと周りを覗うとさっきの親子に対してはまるで天皇陛下の園遊会に招待された芸能人のように低頭平身でバイヤーが対応していた。
 周りの他の客の様子も覗うと「今年のは深みがあるね」とか「牛(の肉)に合いそうだね」とか「南仏っぽいかな」などと絶対に昨日寝る前にネットでググって覚えたようたような台詞を恥ずかしげもなく発している。しかもよく耳を傾けたらそいつらのワインの感想の9割は苦めのワインには「深みがある」「肉に合いそう」、甘めのワインには「フルーティー」「女性にも飲みやすい」としか言ってないことが判明。おそらく今サイゼリアの299円のワインを出してもこいつらは嬉々として「牛に合いそう」とか「うーん、フルーティー」ってほざくに違いないだろう。
 そうこうしている内にどこでどう迷い込んだのか土木作業服を着たスキンヘッドのヤンキー風男性が女を連れて登場して会場内に緊張が走った。土方カップルは入口付近でワインの試飲を薦められて「日本酒派だからよ」とか「ストロングゼロじゃないと酔えない」などと挑発するような発言を連発。対応していたバイヤーがこれは危険と思ったのか、奥から黒い鳥のイラストが入ったボトルを用意してきてコップに赤ワインを注いで土方男に手渡す。それを日本酒のおちょこのようにクイッと一気に飲み干した途端、土方男の顔が見る見る紅潮。急にしおらしくなってオネエみたいな目つきになってしまったので、あれはおそらく麻酔銃的なワインだったのかもしれない。
 結果、おそらくバイヤーたちも客を見てるのだろう、自分や土方男にはワインの購入を最後まで強いることもなく「名前だけでも憶えて帰って下さいね」と新人漫才コンビみたいなことを言われてや
んわりと店を追い出されたのであった。
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