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上京して半年、どうにか都会の生活に慣れたオレに、絶対ガマンできないことがーつある。愛車のバイクがやたらイタズラされることだ。ミラーを盗まれたり、シートをカッターナイフで切られたり。挙げ旬、カギ穴までイジられた形跡を見ると、盗難に遭う日も遠くないのではないか。
ちなみに、オレが乗ってるのは、若者に人気の「TW」といっ街乗りバイクだ。土下座されても絶対許さねえ。
今年ー月上旬、深夜11時半ごろのことだ。バイト先の居酒屋で、店長が険しい顔つきで外を眺めていた。
「あれ、あそこにある単車、オマエのだよな」「え?」
慌てて振り返ると、若僧が2人、オレのバイクの前に立ちはだかっている。
「何、やってんだ、ちょっと行ってきていいっすか?」「おう、早く行けって」
近づいて驚いた。なんとヤツら、ミラーをクルクル回し、外そうとしているじゃねーか。コノヤ口ー2人はダウンジャケットの角刈り、もうー人はダッフルコート。あっという間にミラーを外し、フラフラ歩き始めやがった。てめーら、許さん。
「おい、コラ。テメーら、ちょっと待て」
背後かり角刈りの肩を掴み、大声で奴鳴った。
「オレのバイクだーミラー返せ、バカやろー」
「えっ?」「さっさと出せ、バ力」「…」
オレの怒りに少し酔いが冷めたらしい。2人ともシュンとして、地面を眺めている。
「じゃあ、オマエからまず免許と財布
「えっ、あのっ、いや、持ってません」
ウソつけ。さっきまで飲み屋にいたやつがそんなワケねーだろ。ダッフルコート、オマエは?
「あの、ボクも、持ってないんですが」
いよいよ、ナメきった小僧たちだ。と、その瞬間、横からそれを眺めていた店長が突然、角刈りの顔面に蹴りを入れた。この人はキレると、何をするかわからないのだ。
「てっ、店長は店に戻っててくださいよ」
「あん?だってコイツら、ナメてんぞ」
「まあまあ、とりあえず、2人は警察まで連れていきますから。今日はもうあがっていいっすね?」「わかった」
さあ、オマエら行くぞ。と、ティッシュで鼻血を抑える角刈りの首根っこを捕まえる。
「勘弁してください」
警察に連れてかれるとわかって、ダッフルコートが道端で土下座し始めた。今さらオセーんだよ。免許も財布もナシなら、警察へ行くしかねーだろ。
「お願いします。お願いします。お願いします・・」「ああ、うるさい、うるさい」
右手に角刈り、左手にダッフルを抱え派出所へ。
「…といつわけで、コイツら捕まえてください」
「わかりました。それでは、とりあえずパト力ーを呼びますのでN警察署まで行ってくれますか?」「はあ」聞けば、この派出所のスぺースじゃ取り調べに不十分らしい。面倒なことになったcが、このまま帰るわけにはいかない。
「ヤクザでも100万なんて言わないよ」
N署では、まずテレビやソファのある待合室へ案内された。ヤツらは言うまでもなく取り調べ室である。
「ねえ、刑事さん、プロレス見ていいっすか?」
「あ、好きなもん見て」「ほーい」刑事に促されチャンネルをピコピコ。ボーっと眺めながら考えた。盗まれたのは1700円の安物ミラー。それでも犯罪には違いない。警察沙汰になった以上はしかるべき措置か取られるのだろう。アイツら、留置所行きか。大学生だったら親が泣くだろうな。でも、同情なんかしてやんねえ。酔っ払ってたからって、人のモノ盗んでいいワケねーもんな。なんてことを考えてるうちに時刻は深夜2時
「いくらなんでも長すぎないっすか」「まあ、待てよ」
ぷはあ。アクビをしながらさらにテレビを眺めること30分、ようゃく取調べの刑事がオレの元へやってきた。
「鈴木くん、彼らも大いに反省しててねえ」「はあ」
「もう、メゲちゃってるんだよ」「へえ。で、何が言いたいんでしょうか」
「いやさあ、盗んだミラーは無事だったワケだし、これだと窃盗罪だけで、器物破損もつかない。大した罪にはならないから」「はあ」「それでさ。提案があるんだけど」
ここまでくりゃ、鈍感なオレでもピンとくる。示談にしろってことだな。弁護士やら何やら出てきて面倒クサイんだろう。オレはヤダよ。
「いやいや。そんな堅苦しいもんじゃなくてさ」「じゃあ、とんなもんなんですか」「わかった。こうしよう。鈴大君はいくら欲しいんだ?」「へっ?」
何を言い出すんだよ、この刑事
「まあまあ。そう肩肘張らずにさ。彼らから迷惑料を受け取るってことで穏便に済ませてあげなよ、ねっ?」
「オレは100万でも200万でも許しませんよ」
正直、100万、200万くれるなら許してやるが、それならまるでオレが金目当てだったみたいじゃねーか。くそ、アイツら、とことんナメてやがる。改めて怒りを覚えるオレに、刑事はいった。
「鈴木君。モノには限度というものがあってね、この場合、10万円くらいが妥当なんだ。ヤクザでも100万なんて絶対に言わないよ」「オレの面子も立ててくれないか」
有無を言わせんというわけか。…よっしゃ、わかった。ここはアンタの面子をたててやろうじゃん。取調べ室に案内され、ヤツらとこ対面。刑事はー人もいない。最終的な民事は不介入ってことだろうか。
「おいっ」「ハイッ」「ハイッ」
声かえただけで恐縮しまくるボンクラども。見た感じ、マジで反省しているようだ。
「金の前に、謝罪文だ」「わかりーました」うわっ。めっちゃ酒クサーー呂律も全然回ってねえ。さっきから2時間もたってるのに、キミたち飲みすぎョ。案の定、謝罪文は、人をおちょくっとるのか、汚い文字が書き連なっていた。
「飲んだいきおいで人様のオートバイをキズつけてしまいたいへんこうかいしています。今まだ飲んだお酒がぬけておらず、字がキタナタもうし申ありません」おまえら、ホントにバカ?
★10万円は翌日キッチリ、奴らが持参してきた。たった1700円のミラーが10万円(考えてみりゃ、相当オイシイ話だったみたい(笑)。

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