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オレはストー力一じゃない!
最初に断っておくが、オレは自他ともに認める義理堅い人間である。仲間と見るやとことん付き合い、相手の恩には必ず報いてきた。が、そういう人間をいったん裏切るとどうなるか。たとえそれが店員と客という、取るに足らない間柄であっても、一度覚えた信頼感は激しい憎悪へと転化するのだ。
「今度いつ時間ある?」女店長から誘いの電話が
話は一昨年の6月にさかのぼる
その日、オレは電話を買い換えるべく、自宅(当時は中国地方の某都市)近くのJ-PHONEショップへと足を運んだ。応対してくれたのは、高井という女性店長である。決して若くない(歳は35才だった)ものの、女優の高島礼子を思わせる美貌。それでいて妙に人なつこい。
「お客さん、男前じゃけえ、カノジョ何人もおるんじゃないん」
「そんなモテモテじゃったら、金がいくらあっても足りんよ。今はビンボーじゃけえ、自分のカノジョにもメシおごれんわい」
「そうなん。じゃったら、本体の分だけでもマケたげるわいね」
なんと店長、5800円の新機種をタダにしてくれるといつ。いやー、いい人だ。
「高井さん、ホント助かるわ。カノジョより先にメシおごるよ」
「じゃあ子供もいっしょにおごってーや」「なんや、子供おるん」
「うん、5才になるんよ。別れたダンナとの間にできた子で。でも、最近「幸せにしてやる」って言ってくれる人がおってね」
「じゃあオレは愛人でるえわ」
「ナニ言いよるんね(笑)。アンタは…どっちか言うと弟じゃな」
一切、下心がなかったといえばウソになる。実際、たまたま買う側と売る側として出会っただけなのに、ここまで話が盛り上がり、意気投合できるなんて、そうあることじゃない。ただ、一方でオレはそのときかなり焦っていた。新しい仕事が九州で決まり、その日のうちに現地へ出向き、住む部屋を探さねばならなかったのだ。
「給料入ったら九州の名物でも送るわ。今日はありがと一」
そう言って店を後にし、車の方へ向かった、そのとき。ピピピッ、ピピピッーほんの10分ほど前に機種変更したばかりの携帯が鳴った。ディスプレイを見ると心当たりない。誰や。
「あ、島田クンJフォンXX店の高井と申します」えっマジか。
「さっきはありがとねー。なあ、島田クン、すぐに九州行くの。少しぐらい時間ないの?」
美人店長からこんな電話がかかってきて、うれしくない男はいない。くそー、なんでよりよってまたこんな日に。
「ゴメンな。もうすぐに行かなあかんのよ。またするわ」
「わかった。じゃあ気ィ付けて。あと力ノジョにもよろしく。また店にも遊びきてね」
オレはニヤーーヤしながら彼女の番号をメモリに入れ、車を走らせた。
〈迷惑になるからメールは送らないで〉
九州で働くようになって以降、2カ月に一度ぐらいの割合で高井店長からメールが届いた。
島田クン、新しい職場慣れた?カノジョは元気?
元気ですよ。高井さんもまだ職場におられたんですか?結婚が決まったら教えてください
地元に戻るときには、必ず土産を買って帰った。律儀にも度が過ぎると思うかも知れないが、最初携帯をタダにしてもらった恩がどうしても忘れられなかったのだ。土産を渡した翌日には、彼女から必ずメールが入った。
〈お土産のお菓子、ありがとうね。みんなで食べました。カノジョも大切にせんといかんよ〉
なんや、エライ恋人のことを突っ込んで来る人やな。そうは思えど、相手に悪気がないのは承知の上。オレは完全に店長のことを良き姉御として慕っていた。そんな彼女から、びっくり仰天のメールが届いたのは、九州に移ってー年が過ぎた去年5月のことである。
〈この携帯は店の端末です。迷惑になるから、私用のメールは送らないでください〉
いったいナニゴトや。確かに彼女、「携帯代を払うのがもったいないから店のを使っている」と口にはしていたが、いきなり迷惑はないだろ、アッタマくるなあ。
アンタの方からこっちの携帯に電話してきたし、メールも送ってきたんやろうが。一方的に迷惑はないやろ。だったら、最初から店のを使うんじゃねーよー
→さらに翌日、怒り冷めやらぬまま店に電話をかける。ところが・・
「どうしたん?」わざとトボけているのか、彼女は何もなかったように声を出した。
「どうしたもこうしたもないやろ。昨日のメール、オレ、ムカついとんのだけど」
「あ、なんか島田君からメールがきてたけえ、どうしたんかあって思っとったんよ。私、昨日、休んでたけえ、ようわからんのよ」
彼女日く、問題のメールは他の店員が出したものらしいが、誰が送ったのかまではわからないという。なんともふに落ちない話だが、彼女じゃないのなら、コトを荒立てる必要もない。
「いや、オレの方もちょっと感情的なメール送ってスマンかった」
「私の方も。まあ気にせんでよ。島田君からメールが来たら私以外は見んようにしとくけ」
「うん、わかった。じゃあ」
こうしてあっさり解決したかに思えたこの一件が、2カ月後に起こる決裂の前兆だったとは知る由もない。
6月下旬以前「お中元を送る」と約束していた件で、彼女に電話をかけた。いきなり店に送っても困るだろうから、事前に伝えておこうと思ったのだ。
「今度、めんたい高菜でも送ろうかなと思うて。家は教えとうないじゃろから、店に送ろうか」
「いつもゴメンね。じゃあ住所教えるけ」
いつもの調子で会話は弾んだが、まもなく、オレと彼女の間でちょっとした口論が起きる。
「いつも友達感覚で接しているけど、オレのこと、ただの金ズルみたいなもんと思っとるとちがうの?」
この冗談のつもりが、彼女を怒らせてしまったのだ。いくら「冗談じゃけえ」と弁明しても、聞く耳を持ってくれない。最終的には「中元なんかいらんわー」とガチャ切りされる始末だ。何か大人気ない人やなと思いながらも、オレは後日、店長へめんたいを送った。2、3日すれば彼女の気持ちも収まり、届いた中元を喜んでくれるだろうと思った。
しかし、送ってすぐに来るだろうと思ったお礼のメールが一向に届かない。まだ先の一件を根に持っているのだるっか。まさか・
ーカ月後、オレは彼女へ電話をかけてみた。すると、「アンタ、なに勝手に人のところに送りつけてきてんのーもうヤメてよ。迷惑じゃけん」「……」
あまりのいい草にことばも出ない。いったい、オレが何をしたというのだ。
「オイ、自分で送ってくれって言うて店の住所確認しとってからに、そんないい方はないじゃろ。自分で気にくわんことあったけんて、いらんかったら届いた時、連絡すればええじゃろ」
だが、相手は「迷惑だ」の一点張り。
結局、互いに罵倒し合った上、ガチャ切りという最悪の結果に終わってしまった。オレは頭を抱えた。確かに軽率なことばをかけたのは、こちらが悪い。が、それについては何度も謝り、詫びの意味も込め中元を贈ったのだ。
加えて、オレには、彼女をどうこうしようという明確な意志があったわけでもないり携帯を買った際によくしてもらい、その際に生まれた親交を大事にしようと思っただけである。断じて、あそこまで罵倒される筋合いはないはずだ。うーん、やっばり納得できない。一言、彼女に謝ってもらえれば、いや、誤解を解くだけでもいい。今のままだと、オレが悪者になってしまうではないか?
オマエなんぞ客じゃねえ
数日後、改めて店へ電話をかける。と、今度は彼女ではなく、森田という上司の男が出てきた。
「ウチの店のモンから聞いとるんじゃが、オマ工、ストー力ーらしいのお。オマエなんぞ客じゃねえけ。解約せえや、ワリャ」
ストーカーこのオレがストーカー?想像すらしていなかった言葉に、オレは完全にキレまくった。
「ちょつと待て、なんていった?コラ。誰がストーカーじゃボケーオマエの部下が勝手に人の携帯に電話してきたんじゃろうが。なんで解約せにゃならんのや」
「オマェ、高井にもて遊ばれたんじゃろ。ま、彼女はあんな感じやから男の誘いも多いけど」
森田に罵倒されながら、オレは思った。やはり、悪いのは高井なのだ。彼女のことはほんの少ししか知らないが、森田の言いぐさからして、他にもモーションをかけたりかけられりすることが多いのだろう。オレに気があるように見せたのも、ほんの気まぐれだったに違いない。そして、あの女、会社の携帯を私用で使っているのがバレたとたん、オレを「ストーカー」と周囲にいいふらしたのだ。その疑惑についてはすでに何度か追及したことがある。
が、いくら迫っても、彼女は「そんなことは言ってない」とあっけらかんと答えるだけ。まったく、とんでもない女と関わりあったもんだ。そんな相手、自分から払い下げにすればいいじゃないか。読者の皆さんはそう言うかもしれない。が、残念ながらオレはそこで水に流せるほど寛容な男じゃない。
面と向かって謝罪してもらうまで絶対あきらめんぞ改めて、心に誓うオレだった。
ショップとオレの言い分が食い違ってるけ
高井本人はもちろん、森田を含めたショップの人間にこれ以上話をしてもラチが空かない。そう考えたオレが次に狙った相手は、Jフォンのお客様センターだ。クレームの受付でもある、、客センにコトの経緯を聞かせ、騒ぎを大きくしてやろうと企んだのだ。
7月下旬から10月上旬までの約3カ月間で、電話をかけること約80回。我ながら、クレーマー化していることは承知の上だ。かけるたび客センの受付け担当者が異なったのは誤算だったが、それでもオレはーから事情を説明、いかに自分が正当で支店の対応が悪いかを主張した。反応は様々だった。
「同じJフォンとして恥ずかしい」と親身になって聞いてくれる人が約3割。
「申し訳ありません」と事務的に謝ってくるのが約3割。残りの4割は
「無視すれば済むことでしよう」と実に素気ない。そんなある日、「山村」という30代とおぽしき男性とつながった。聞けば、客センの責任者らしい。
「…といっわけなんですが、なんで向こうから勝手に電話かけてきたのに、ストーカー呼ばわりされて解約せにゃならんのですかね。Jフォンさんはこの接客をどうお考えなんですか」
「わかりました。お客さまかそこまでおっしゃるのなら、Jフォンショップ××店の方と事実確認を取ってみますので」
さすが責任者。オレは今までと違う対応に期待を込めつつ、ー週間後、再度、彼に電話をかけた。「もうはっきりしたでしょ、山村さん」「いやあそれが・・」
妙に歯切れが悪い山村。どうしたんだ。
「店と島田さんの言い分か食い違うんですよ」「どういうことです?」
事情をといただすオレに彼は言った。まず、頼みもしないのに高井がオレの携帯に電話やメールを入れてきた件は、日くあくまで営業上のフォ口ーで、オレに限らずすべての客に「ありがとうこざいました」と、電話かメールで連絡を入れているとのこと。けっ、「時間ないの」のどこが営業上のフォ口ーやねん。
「じゃあ、オレがストー力ー呼ばわりされたことについては、どうなんです」
「ショップの人間は、勝手にモノが送られてきて困っている、ストーカー同然のメールが来てると言ってるんですが」
聞いてて、はらわたが煮えくりかえった。よくもここまでウソがつけるもんだ。
「山村さん、全部ホントじゃろな。ちょっと自分の方でも調べさせてもらうわ。また電話するわい」
なんで、言うことがころころ変わるんだー
すべての客にフォ口ーの電話を入れる。いくら地方都市のショップとはいえ、そんなことが可能なのか。ヤツらのウソを証明するため、まずはここを探ってやる。さっそくオレは、友人で、高井が店長を務めるショップを紹介し、実際にそこで買ったことのある木下に電話を入れてみた。
「……って言うとるんだけど、おまえんとこに、そんな電話かメールが来たか」
「いいや。ー回もありゃせんで(なんや、島田のとこにはメールが来たんか。対応が違っとるな」「ふーん。やっぱりそうか」さらに決定的な証拠がーつ。
確認のため高井の店に電話した際たまたまつながった倉沢という女性に、フォロー電話の件を聞いたところ「そんなことはしていない」と明快な答が返ってきたのだ。オレは改めて古井を呼び出し、問いつめた。
「あんた、どこまでウソをつけばいいの。倉沢いう社員の人がちゃんと認めるんよ」
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