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「いい話だ?ナニよそれ」
藤田は高校時代からの悪友で、当時は宝石やパチモンのブランド品を売り歩く怪しい商売をしていた。近頃では“仕事上の付き合い〃とやらで、仕方なくFというマルチに入会したと聞いたが、まさか…。
「オマエ、オレに布団だの鍋だの買えなんて言うんじゃねえだろうな」
「バカ、違うよ。その逆だよ逆。オマエにちよっくら儲けさせてやろうと思ってよ」
「マジ?何だよ、早く教えるよ」
「いや単純な話、『F会』相手にお前が車を売るだけだよ。ただし、貧乏ったれの下位会員じゃダメだ。〃金持ちに見えなきゃいけない″中位の人」
誘われ、ファミレスヘ行くことになった。
よし、ここまでは予定通り。
「石山さん、このスーツ、どこのだかご存知ですか?」
「黒スーツ?…それ、ベルサーチですか?」
「ふふ、わかります?まあ、そんなに高価なものじゃないんですが。この時計もブルガリでね。どうです、石山さん、こんな生活を可能にする仕事なんてそうありませんよ」
「はあ」
島田のべタな誘い文句に、オレは口の内側を噛みつけながら切り出した。
「ところで、島田さんは車をお持ちですか?やっぱ外車とか」
「いえいえ、国産ですけど。…それが何か?」
「実は車のブローカー業をやっておりまして。もし。もしですよ。島田さんに何か欲しい車種があるんなら、きとお力になれると思ったもので。せっかくこんな素敵な商売を紹介させてもらったんですからね」
価格は世間の相場より30万ほど安くしてやったが、それでも利益は50万。藤田くん、キミは正しい。コイツら本当にラクショーです。
島田に車を売ってからというもの、話を聞きつけた中堅クラスからたびたび問い合わせの電話を受けるようになった。元々口コミが好きな人種である。勝手に宣伝してくれてどうもすまんこってす。オレはヤシらに、ベンツ、BMWに各種アメ車と、きっちりフルローンでご購入していただいた。
まったくもって商売は順調だった。普段の売上ペースが『F会』と取引を始めたことで月10台にアップ。毎月約250万の増収である。
すっかりマルチ相手の旨味を知ったオレは、さらに利益を上げる工夫を加えた。
本来サイドビジネスであるはずのマルチだが、中には子会員や孫会員を増やすことに熱中するあまりへいつのまにか本業としてしまう輩が結構いる。
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