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夢精。妖精にも似たこの響きを耳にするたび、いつも私は、まだ見ぬ幻想の世界へと思いを馳せる。
夢精。淫らな夢の中でのセックスは、古来よりこの世のものと思えぬ快感を生むといわれる。
松本さとし、夢精経験なし。ただ遠くから憧を抱くだけ。この事実は正直、私のコンプレックスともなっていた。男として生まれておきながら、夢精も知らずに死ぬなんて。
むろんエロい夢を見た経験ぐらいならある。が、行為を完遂した覚えはなく、無事に挿入できたかどうかすら暖味だ。寸でのところで目を覚ました記憶は、直後に友人に吹聴した経験からかすかに思い出せるだけで、具体的な内容までは今となっては闇の中だ。
夢精をしてみたい。何よりも勝ると言われる快感を、一度でいいから味わいたい。私にとってそれは、悲願とも言える人生の一大事である。
読者の皆様の中には、日常的に夢精をたしなんでいらっしゃる方もおられるやもしれぬ。何をバカなことを松本そうあきれられる向きもあろう。
でもわかっていただきたい。各温泉地で女体を味わい、その模様を得意気に報告しながらも、私の心は乾いていたのだ。欲望追究マガジンの一ライターとしては、今ここで一人前の男になっておきたいのである。
ではなぜ私には夢精経験がないのか。それは夢精のメカニズムを想像することで説明がつく。
夢精とは、溜まりに溜まった精子が畢丸の備蓄能力を越え、エロい夢の力を借りて外界に放出される現象だと思われる。よく思春期を迎えた男子が夢精によって精通を迎えるというのも、精子を放出する術、すなわちオナニーを知らないからであろう。ひるがえってこの私、風呂場でチンチンを叩くうちに先端から白い液体が出てくるのを見たのが齢10才。以来20年、生身の女体の味を知ってからも、エロ本、AV、あるいは妄想を駆使することで、ほぼ毎日のように大量の精子を無駄死にさせてきた。これでは夢精などするはずがない。
したがって今回のトライアルは、とにもかくにも《溜めること》が基本的な戦術となる。オナニーもセックスも風俗も一切禁止だ。
幸い私は、妻帯者でもなければステディーな恋人がいるわけでもなく、自らの意志で自在に射精を操れる立場にいる。とりたてて問題はない。
溜めて、溜めて、さらに溜める。オナニー慣れした体にはキッイかもしれないが、ただそれだけで成就するならば、平坦な道のりと言えるだろう。
決意初日、眠りにつく直前、自然と股間に手が伸びるのを軽く制し、私は目を閉じた。淫らな夢は現れなかった。
2日目3日目と、夢精計画は順調な滑り出しを見せた。就寝前の運動を自粛すると寝つけないのではとも危倶されたが、それも杷憂に終わり一安心といったところである。ただこの3日間、夢精どころか、夢そのものすら見ないのが心配だ。
そんな折、4日目の夕方、近所に住む友人のTから携帯にメールが入った。
みだおん新作入ってまっせ!
このお知らせ、最後のビックリマークは何も大げさな表現ではない。
みだおんとは、Tと私が好んで借りるAVシリーズ『淫らな女」の略で、その素人投稿形式の作風に入れ込んだ2人は続けざまに何本もレンタルしては、よく居酒屋でヌキどころなどを語り合っていた。その新作が馴染みのビデオ屋に入荷したのだ。
(みだおん新作か…)
数日前なら、すぐに自転車を飛ばしたことだろう。しかし今は苦行の真っ最中、軽率な行動は取れない。
(夢精は明日から頑張れよ)
甘い職きが聞こえてくる。別にいつ挑戦しようが構わないのである。恩いつきりヌイた後でも遅くはないわけだし…。私は自転車にまたがった。借りる。借ります。でもヌカない。
そう、これは新たな挑戦なのだ。この4日間の私は、何の努力もせずただ精子を溜めるだけの無策な状態にあった。いわば受け身の姿勢で来るべき時を待つだけの、極めて守備的な布陣である。そこで「みだおん」入荷をきっかけにこのあたりでひとつ、攻撃を仕掛けようと考えたのである。お気に入りのAVを見てギンギンの状態にしたまま眠りにつけば、脳は確実に興奮状態に陥り、淫らな夢を見やすくなるのでは、というわけだ。
4日という期間は、皐丸にかなりの負担をかけているようだった。ビデオデッキにテープを入れたあたりから、すでに股間はムクムクと膨らみ始め、タイトルロールの時点で完全勃起を迎える。
画面内では、薄いモザイクの向こうで、男女の営みが始まった。ペニスを右手で軽く握りしめた私は、ゆっくりとシゴく。亀頭がガマン汁でテラテラと輝くころ、ビデオをいったんストップし、ヌメリが乾くころにまた再生ボタンを押す。連続の生殺し状態を作り出すことで、脳内の欲望値を高めるのだ。すわ暴発、とも思われた瞬間を幾度とかわし、冴え渡った頭のまま床に。
その夜、計画開始以来初めての夢を見た。以下に、寝起きに即書き付けたメモをそのまま記す。皆さんもご存知のように、夢の中にはその日にぼんやり見聞きした人物などが現れることが多い。その意味で、友人Tの登場はいたしかたないだろう。むしろここでは、お湯をかけてもらい気持ち良くなった点に着目したい。射精の快感とは異なるものの、夢の中で気持ち良さを感じるとは極めて珍しい出来事だ。これは脳が抑圧の解放を求めていることを示すのではないか。
5日目、6日目。寝る前には必ずAVを見ながら陰茎を軽くシゴくことにしたが、以来、夢そのものすら見られない毎日が続く。敵もさるもの、一筋縄ではいかないようだ。
そこで私はこの間を利用し、今まで気づかなかった大問題、誰を相手に夢精するかという点について対策を施すことにした。今のままでは、仮にうまくいってもAV嬢とセックスするハメになってしまうだろう。せっかくの快楽がそんな安っぽい女相手ではあまりにもったいない。どうせなら最高級のパートナーにお手合わせ願いたいところだ。すぐさま本屋に足を運び、1冊の書を手にレジへ。
「井川遥写真集」
以前から気になっていたのである。ほどよい胸の膨らみ、スラリと伸びる肢体、あどけない笑顔。彼女の熟れたヴァギナに大量の精液をぶち込んでやれるならば、たとえ夢とはいえ本望である。就寝前の順序としては、AV鑑賞←シコシコ←遥写真←シコシコ←AV、という具合に、裸体と遥を交互に挟み込むことで、脳に錯覚を引き起こす戦術をとることにした。
その夜。かなりエキサイティングな内容ではあるが、遥とのつながりはまったくなく、性的な匂いも
絶無だ。わけがわからん。
7日目8日目と同じ手順を繰り返すも、やはり効果は現れず。ならば安達裕実の写真集を買い足そうかとも考えたが、意味がなさそうなのでやめておいた。
徐々に焦りを感じ始めた9日目、とある反省から1つのアイディアが生まれた。反省とは、シコシコの度合いに関するものである。今のように陰茎を軽くシゴく程度の刺激に疑念が生じたのだ。
たとえガマン汁がヌラヌラ溢れ出ようとも、やはりそこは自分の右手、知らず知らず力を緩めてしまっている可能性がある。仮にコスリが射精回数とするならば、今は羽回ギリギリまで追いつめねばならぬときだ。それを私は無意識のうちに別回程度に抑えているのではないか。イッてはいけないとの思いが、甘えを生んでいるのではないか。そこで考えた。
(ヘルスで抜かずに帰ってくるのはどうだろう)
ファッションヘルス。言わずと知れた、射精のみを目的とした性風俗である。フェラチオ、素股、ローションでの手コキ。絶頂に導くための術をへルス嬢らは知り尽くしている。彼女らの力でギリギリの地点まで導いてもらい、そこでストップをかければどうか。妥協がないぶん、自らの手でシゴクよりは効果がありそうだ。夜のn時、最寄りのへルス店に出陣。フロントは、現在指名できるのはこれだけだとポラロイド写真を3枚取り出す。ヌケないとわかっていても一番可愛いコを指名してしまうのは人間の業か。
「こんばんは-」
笑顔のヘルス嬢に迎え入れられた時点で、ペニスは8割方膨張を終えた。写真より断然カワイイ・・・・
彼女は技術的にも優れたものを持っていた。チロチロと弧め上げながらイヤラシイ表情でこちらを見る仕草、これは一朝一夕にできるもんじゃない。
「ちょっとストップ!」
「ん、ど-して?」
「いや、夢精したいから・・・」
「え?キャハハハ」
意図を理解した彼女は、楽しむようにして何度も絶頂寸前で私をジラし、終了のタイマーが鳴り終わっても、さらにはドアを開けて「また来てくださいね」と挨拶する間すらも、カチコチのペニスを丁寧に祇め回してくれた。急いで家に帰り、布団に潜る。すでに加日が経った。物心ついてから、Ⅲ日間も射精しなかったことなどかつて一度たりともない。少年時代の長期キャンプでも、学生時代の合宿でも、私はほぼ毎日トイレに忍び込み体内から毒素を抜いていた。
悪影響のないはずがない。まず、道行く女性がすべて魅力的に見えてきた。どんなにブサイクであろうと思わず声をかけそうになるのだ。重症である。集中力もなくなった。日々のアクセントだったオナニーがなくなったことで、1日1日の区切りが確認できなくなり、のんべんだらりと時が過ぎ行く感じとでも言おうか。おかげで食欲までへった。早くしなければ取り返しのつかないことになる。その焦りが次の行動につながった。インターネット上で「下半身を暖めると夢精しやすい」という真や
かな情報を入手し、すぐさま電気毛布を購入したのである。
夜、下半身に巻き付けてスイッチを「最強」に。もう秋、暑くて寝苦しいなんてこともないだろう。寝苦しかった。Tシャツはすぐに汗ばみ、着替えても着替えてもジットリする。ほぼ鈍分ごとに目が覚める気持ちの悪い夜は、いつまでも明けなかった。
翌日、寝汗をかきすぎたせいか調子が悪く、熱を計ると釘度の微熱が。私は大事を取り、昼過ぎにライター事務所から帰宅し、布団に潜りながらテレビ番組をぼんやり眺め続けた。
ハリーポッターという映画が作られ、モーニング娘が何かをやらかし、タリバンが争って、ヤンキースが頑張って。何度も聞いたような話題が、新鮮味なく目の前を通り過ぎてゆく……。
飲んだばかりのパブロンが、徐々に効いてきた・・・
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