飲酒検問に引っかかったときのゴマかし方のーつとして、こんな子供ダマシのような手段をよく耳にする。アルコール測定用のビニール袋に息を吹き込む際、こっそり腹の中の空気をすべて吐き出してから、口の中に残ったわずかな息だけを吹く。こうすればアルコールが検出されないー。
ホントにそんなことでセーフになるのか疑問に思われる方も多いだろう。口の中の空気だけではビニールが十分に膨らまないし、だいいちそんな息の出し方、怪し過ぎるってもんだ。ところが先日、これがあまりに見事に成功してしまった。
その日、スナックで焼酎をたらふく飲んだ僕は、へべれけになりながら愛車で家路を急いでいた。すると、待ってましたと言わんばかりの飲酒検問で光る指示棒を持ったお巡りさんが、いそいそと近づいてくる。
「はい、ちょっと窓開けて」「何ですか?」
トボけてはみたものの、息は酒臭く顔は真っ赤。それでも飲んでないと言い張るところが、世のドライバーのおかしなところだ。免許証見せて。えーと山田さんね。結構飲んでるでしょ。ちょっと調べさせてもらえるかな
警察官が取り出したるは、例のストロー付きビニール袋。もはや……
一か八かアノ方法キ試してみよう
「あのー、すいません」「ん?何?」
「小さいときから気管支炎を患ってるんですょ。一気に吹けないんですけどいいですか」
「はいはい、何でもいいからとにかく膨らませて」
しめしめ。気管支炎がどんな病気か知らないが、これでもたつく理由ができた。えーっと、まずは腹の中の空気を全部出し切ってと。ふうーっ。ハァハァ。ふうー。ハァハァ。ウッ、ウエーッ、ゲホッーときおり変な咳を混ぜ、ぜいぜいしながら息を吹き込むこと10数回。ようやくビニール袋が膨れ上がった。
「ゴホッ。はい、これでいいですか。ゲホッ」「はいはい、じゃあ調べるね」
「ゲポッ、はい。ゲホッ」
「山田さん。結果から言うと、飲んでるって反応は出てるね」
遠回しな言い方は自信なさの表れか。ならば強気でイカしてもらおう
「あ、そういえば昼間に少し飲んだかも。で、切符を切るのか切らないのかどっちなんですか」「……切りません」うっひょー
要は、反応はあったけれど、切符を切るほどのアルコール濃度ではないってことだ。やっぱ気管支炎ってのが効いたか。ただ彼らとしてもアルコールが検出された以上、さすがにこのまま運転させ続けるのはマズイらしく、この後は運転代行業者の世話になることに。ま、それぐらいで済むなら安いもんだ。「ウチの娘も気管支炎なんだよねえ。山田さんの辛さはよくわかるよ」
警察官の暖かい言葉に見送られて、僕は家へ向かった。
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