0020_20190903060615eea.jpg0021_201909030606178d5.jpg0022_20190903060619c94.jpg0023_20190903060620de3.jpg0024_20190903060621730.jpg0025_2019090306062321d.jpg0026_20190903060624b25.jpg0027_201909030606263cf.jpg
オレももう2 6才である。この歳になると、友人の大切さを痛感する。若い日は、恋人こそが一番だと信じていた時期もあつた。信頼できるのは家族だけと感じたこともあつた。
でも違う。男にとつて最も重要なのは友だ。利害関係なく、バカ騒ぎもマジメ話もでき、ときに悩みを語り合い、ときにケンカもする、そんな親友がいる幸せ。彼らは人生の宝物だとあらためて思う。
しかし、そう強く感じるからこそ、逆に不安にもなる。あいつらはオレのことを親友だと思つてくれているのだろうか。大切で、かけがえのない男だと思つているのだろうか。
「オレつてお前の親友?」
そんな照れくさい台詞、とてもロには出せない。聞かれたほうも面食らうだけだろう。でも友情を確かめる方法はひとつだけある。オレが死んだことにするのだ。
通夜の席での彼らの態度、話すことば。そこにはオレに対する嘘偽りない本音が出てくるはずだ。聞きたい。ぜひヤツらの思いを聞いてみたい。
月2で飲む友。語れる異性。
一緒に住んだ同級生誰だってそんなもんだと思うのだが、小中学時代ならともかく、大人になっても友人と呼べる相手はそうそういるものではない。
オレの場合、友情を確認したい相手は3 人だ。以下に、その関係性を記しておく。
坂田陽一( 愛称サカタ)
小〜事校の同級生
家が近かったので、小学校の6 年間は毎日一緒に登下校をしていた。
中学1年のころ、近所の公園で2 人で殴りあいのケンカをしたことがある。きっかけは覚えていない。些細なことだったと思ぅ。坂田は腕の骨が折れ、オレの顔はパンパンに膨れあがった。それでも翌日からは元どおり、いやそれ以上に仲良くなった。高校卒業後、そば職人になる
と大阪に行ってからも、2力月に1度は会っていた。数年前に地元埼玉に戻ってきてからは月2ペースで|緒に飲んでいる。
桜井杏子(愛称. キョウコ)■高校の同級生
高校時代は特別に仲がいいわけではなかつたが、卒業後の飲み会で話がはずんだ。当時の彼氏がオレと仲がょかつたので、グチを聞いて励ましてやつたこともある。
やがてその男と別れても、オレと杏子はまるでお互いのグチをこぼしあぅためだけに集まつては朝まで飲み明かした。男女の関係はない。親しくなるとついつい体の関係を持ち、結果的に疎遠になつてしまうことの多いオレにとつて、異性で友人と呼べるこいつの存在はかなり貴重だ。
石本琢磨(愛称イシモト)
大学の同塑
大学に入った初日、可愛い女子に勧誘されてついていったサークルの部室に石本はいた。後から聞けば、石本もその先輩が目当てだったそうだ
結局二人ともそのサークルには入らなかったが、オレたちは急速に仲を深めていった。
授業にも出ず、喫茶店でコーヒーを飲みながらくだらない話ばかりをする大学生活。
2年生のころにはヤツの部屋で半年ほど一緒に暮らしたこともある。
今でもときどき当時たむろしていた喫茶店でおちあうのが恒例行事だ。一番の親友と呼べるかもしれない。この3人、オレの通夜の席で、いったい何を語ってくれるのだろうか。涙は流すのだろうか。いや、それ以前にちゃんと出席してくれるかどうかも気になるところだ。
ニセ叔父の通夜連絡に3人は…本来ならば家族の協力が不可欠な当企画なのだが、母親、ヨメ共に「縁起でもない」と、ソッポをいてしまった。たとえウソであっても大事な家族を殺したくないらしい。それはそれで立派な愛情ではある。
実家で行われず、家族も出席しない通夜。この不自然さを解消するための設定はこうだ。オレが交通事故で急逝し、家族はパニクっている。そこでニセ叔父( 編集長サトウ) が喪主となり、簡易的に自分の家で簡単な通夜を執り行う。
ありえないことではないだろう。あの3人だつて疑いやしないはずだ。
お通夜前日、ニセ叔父が3人に電話をかけた。遺品の携帯電話に残った「友人フォルダ」を見てランダムに連絡しているという設定だ。ニセ叔父の説明
もしもし、ワタクシ建部博の叔父です。ヒロシが本日の早朝、交通事故で他界しました。つきましては明日19時から私の宅で通夜を行いますので、ぜひご出席をお願いいたします
①坂田の反応
「え? 本当ですか! はぁ… 。事故ですか。…奥さんは大丈夫なんですか。赤ちゃん産まれるって聞いてましたけど。わかりました、行きます。あ、駐車場ってあるんですかね?」真っ先にヨメのことを心配してくれた点は評価したい。だがそれにしてもあっさりした印象だ。駐車場の有無なんて、気にするポィントじやないだろぅに。
杏子の反応
「はい、え…。. わかりました」
死んだと聞いて1 0秒ほど言葉を失った。非常にリアルな反応だ。気が動転したのか、その後数回、ニセ叔父の携帯に電話をして会場の場所を確認していた。
出席することは間違いない。
③石本の反応
「はい。え本当ですか?…信じられないです。それ本当なんですか?1週間前にも会ったばかりなんです。信じられない。はい…絶対に行きます。なにか手伝えることはありますか?」
お手伝いまで買って出るなんて泣かせるじやないか。やはり一番の親友と見込んだ男だけのことはある。その日の夜、オレ自身の携帯に石本から着信があった。未だに信じられないのかもしれない。もちろん出るわけにはいかないのでほっておいた。
友人が死んだのにその食欲はおかしくないか
ニセ通夜当日の夕方。葬儀業者の手によって、白黒幕や祭壇、花が設置され、いよいよ気分が高まってきた。みんなでつまむ寿司、ビールを並べ、オレの遺影を飾って準備完了だ。本日の作戦はそぅ難しくはない。会場全体をビデオで撮影し、そいつを祭壇の裏にかくれたオレがモニタリングする。これで彼らの動きはばっちり観察できる。漏らさずチェック可能だ。
参加者は、喪主のニセ叔父と、仕事関係者を装ったサクラ2名。坊主は面倒なので呼ばなくていいだろう。
夜7時、ろうそくに灯をともし、線香の臭いが部屋に充満したあたりで、チャィムが鳴った。
ピンポーン。最初にあらわれたのは杏子だった。ゆっくりと入ってきて叔父に挨拶してから香典を渡し、二度お焼香して、無言で席につく。こんなマジメくさった杏子、初めて見る。叔父がとりあえずビールをすすめるが、少しロにつけただけで、後はずっと遺影を見ながら、ハンカチを目にあてている。泣いてくれてるんだ。なんだかうれしいじやないか。
杏子に遅れること5分、玄関のチャィムが鳴った。やってきたのは坂田だ。いっちょまえに喪服なんて着ちやって。あれ、目をこすってる…オマエも泣いてるのか?
「このたびはご愁傷さまです」
神妙な面持ちで焼香する坂田。人並みのマナーを知ってるんだね。本でも読んで勉強してきたのか。
部屋では無言状態が続いた。叔父が「お寿司でも食べてくださいね」と促すが、杏子はうなずくだけだ。当然だろう。泣いている真っ最中に寿司なんかノドを通るわけがない。
と思ったら大間違いだった。なんと坂田が堰をきったかのょうに寿司をバクバク食べはじめたのだ。マグロ、いくら、ウニと高いものから手をつけている。
友人が死んだというのにその食欲はおかしくないか。
それにしても石本は遅いな。あんなに意気込んでたくせに。まさか来なかつたりして。
7時30分、チャィムが鳴つた。来た、石本だ。
やつぱりお前は親友だ。
石本は部屋に入つてきた瞬間からすでに泣いていた。喪主に挨拶し、香典を……ん?渡さないまま焼香して席についてしまつた。なんだよ、金が惜しいのか。死んだのはこのオレだぞ?
関連記事