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通販番組というものは、自らと関係性の薄い商品に関しては、まったく内容が頭に入ってこないものである。フライパンがどうした、掃除機がこうしたと甲高い声で熱弁されたところで、さっとチャンネルを変えるだけのこと。どれだけ埃を吸いとってくれようが、今ならオマケが1台ついてこようが我関せずをつらぬくのみだ。
さてこの夏、高校野球の地方予選を見るために、普段は縁のないテレビ神奈川やテレビ埼玉をつけっぱなしにしていたのだが、さすがは地方局、しょっちゅう通販CMが始まり、そこでやけにしつこくプッシュされている商品があった。巻くだけで腹筋が鍛えられるベルトだ。
画面ではサッカーの城彰二が腹に特殊なベルトを巻きながら過ごす日常が紹介され、現役引退後ぶよぶよになった腹が、徐々に引き締まっていく様子が映し出されていた。パツンパツンだったはずのズボンも、いつしか楽に履けるようになっている。
続いて杉村太蔵。同じくベルトによって、ぶよぶよの肉体がスマートな体型に。
私の目を奪ったのはこの人選だ。杉村太蔵はさておき、城彰二という男については、信用のおける人物だろうと私は思っている。
ジョホールバルにおける同点ヘディングゴール、その直後の前転宙返り、フランスW杯帰りに空港で水をかけられたときの苦い表情。どれもこれも、真っ当に人生を歩んできた者のみが見せる姿だ。ちゃらんぽらんな男があのキワドイ場面でゴールを決められるわけがない。
男・城彰二が、通販番組にありがちなヤラセCMに、手を貸すなんてことがあるだろうか。もし仮に引退後カネに困っているだとしても、彼にはスポーツマンのプライドがあるはずだ。だからやはり、彼はベルトによって痩せたのだ。
などと考える以前に、その通販CMを食い入るように見てしまった時点で、私は痩せベルトの魔力に取りつかれていたのだろう。人は、自らのコンプレックスを刺激されると、こうも容易に陥落するものなのか。
身長174。体重76キロ。これだけならまだデブとは言われない。言わせもしない。
問題はポッコリ腹だ。ときどき思いついたように運動に精を出せば、半年ほどで凹むのだが、油断して運動をやめればまた凸状態に。こんなことをかれこれ十数年繰り返している。
おそらく私の腹は、凸が自然状態であり、凹は異常時なのだろう。このままでは死ぬまでポッコリ。これは誰にも言えぬ、というか言うまでもなくバレバレなコンプレックスであった。ある程度のリスクは覚悟すべきなのかもすぐさまそのベルト『スレンダートーン』を取り寄せた。腹に巻き、電源を入れる。
ベルトそのものが震えるのではなく、正面、脇腹二カ所の、計三カ所から電気がビリビリ刺激してきて、腹が震えてるような錯覚を起こす、というのが正解だ。肩こり用の低周波治療器と似たようなものか。
5秒ビリビリして、5秒休んで。その繰り返しが延々と続く。相当なブルブル&締め付け感である。
CMによればこのブルブルは腹筋に作用し、筋力をアップさせるということだったが、果たして影響が及ぶのは筋肉だけなのだろうかという疑問が早くも浮かぶ。
やもすれば電気ショックにより脂肪が増殖したりだとか、胃腸に悪影響を与えたりだとか、そのあたりの可能性はゼロと言い切れるのだろうか。
がしかし、ラクして痩せようという魂胆である以上、ある程度のリスクは覚悟すべきなのかもしれない。そもそもが痩せるという行為は、多少の危険を伴うものだ。食事制限はリバウンドを起こし、ランニングは膝を傷め、筋トレはゲイに好かれる。ベルトだけが無問題だなんて好都合は考えにくい。すべてを甘んじて受け入れるとしよう。
以上、付け心地を書いたことにより、あとは使用一カ月後の結果を記せばリポーターの任務は終わるわけだが、おそらく私の仲間であるポッコリ族は、結果を聞くだけでは満足しまい。
なぜなら彼らは、「自分でも続けられるのか?」をやたら気にする人種だからだ。「あんたはできた。それがどうした。オレにはできそうにない」。すべてこの理論で動くのがポッコリ族だ。そもそも、何事をも面倒くさいと感じる性格だからこそ腹が出たのであって、すぐに行動に移せるキャラならば中田英寿のような体型になっているはずである。
なので結果は後回しにするとして、この一カ月のベルト生活について、なにが面倒でなにが問題で、そしてどんな思考になるのか、といったことを以下にお伝えしておこう。
1日に4度も5度も便意をもよおす
まず私が気づいたのは、いちいちベルトを付けたりはずしたりするのは、なかなかに億劫だということだ。肌を出し、黒いベルトを巻き、マジックテープで止める。こんなことすら億劫なのかと怒られそうだが、怒られたところで億劫に変わりはないし、現実には誰にも怒られないので億劫のままベルトは放置されてしまう。
なのでまずは朝、家を出る前にベルトを装着し、夜風呂に入るまではそのままでいることを基本とした。むろん常にブルブル状態なのではなく、ときどきスイッチをオンにし、40分ほど震えさせる。回数は1日に4度ほどだ。
幸い、このベルトはさほど厚みがないので、上からシャツを着ていれば誰に気づかれる心配もない。「あのおっさん、痩せるベルト巻いてるぜ」と後ろ指を指されることはないのだ。
よくありがちなのは、せっかく痩せる努力を始めたのだからビールもやめよう、だとか、これを機に運動もしてみよう、などといった前向きな取り組みだが、これをやってしまうとベルトの効果がよくわからないことになる。
なので暴飲暴食、自堕落な日常を維持することにより、ベルト生活以前との比較に公平性をもたせることとした。
むろん朝ベルトを巻くだけとはいえ、楽しみのひとつでもなければ続けられるものではない。私にとってベルト生活の楽しみは、やたら便通が良くなったことだ。1日に4度も5度も便意をもよおし、そのつど、そこそこの量が出る。腹の上からのブルブル刺激が、大腸にまで達し、早く外に出よ、陽の光を浴びよと誘発したものと思われる。
もしかすれば、私は腹筋によってではなく大便排泄によって痩せるのではないかと期待したが、ならばポッコリの原因は大便ということになり、このスペースにンコが詰まっているわけなどないのだから、その期待は持たないことにした。とはいえ快適な便通は気持ちがいい。便座に座るたび、腹のベルトを撫でてやり、心の中で感謝の言葉をつぶやく私だった。
マイナス面もお伝えしておこう。まず食事中には不向きだ。人間、腹を震えさせながらおいしくモノを食べられるようにはできていない。
次に、集中力を必要とする場面でもブルブルは邪魔となる。強い刺激なので、一応は「いま震えてるな」という意識は消えてくれない。会議中などはスイッチオフが賢明だ。
性行為中はどうだろう。好きずきだとは思うが、決して興奮するプレイにはつながらないと思われる。腹ではなくローターでも震えさせるほうが、男女関係を維持するためにも得策だ。
使用感の報告はこれで終わる。ようやくポッコリ族もヤル気になったろうか。いや、ヤル気もなにも、結果がわからねば始まらないか。それもそうだ。
結果発表!!発表ごとにはビックリマークを付けるのが常道かと、二つも並べて打ってみたが、実のところさほど気乗りはしていない。痩せていないことをはっきり自覚しているからだ。左の写真を最初の写真と見比べる必要はない。こんなものは印象が大事なのであって、たとえミリ単位で痩せていようが、見た目がポッコリならば何の意味もないのである。
どうやら次に城彰二に水をぶっかけるのは、私の役になりそうだ。
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